窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

のだめ映画の謎が解ける

先日、やはりのだめ映画を観た人と映画の話題になり、いろいろと示唆を与えられたのでメモ。

 ――のだめはコンクールにこだわり過ぎだと思う。そもそも音楽大学というのがどういうところか、よくは知らないけど、定期的に試験があって、学生同士の熾烈な争いがあって、……そういう意味では毎日がコンクールみたいなものじゃない。それなのに、日々の課題を疎かにしてコンクールに出るも何もないでしょう。オクレール先生のいうことは、僕も賛成だな。

「いくら音楽大学を出たって、大半の人はピアノの先生とか幼稚園の先生とかになるんデスよ。コンセンヴァトワールで首席になったからといってプロへの道が約束されているわけじゃない。だから、本当にプロを目指している人は、なんとかチャンスをつかもうと必死なわけデスよ。コンクールでファイナルに残れば、誰かが目をつけれくれて、デビューのチャンスがあるかも知れないから」

 ――しかし、のだめの場合は、プロになることが必ずしも目標ではなくて、千秋に認められればいいんだろ。試験で常にトレビアンを取るとか、いや、部屋で課題曲を弾いて、それで千秋が「うまいな」って言ってくれればそれでいいわけじゃん。

「千秋先輩がそんなこと言うなんて、それこそあり得ないじゃないデスか! 映画の最後で連弾した時、千秋先輩がなんて言ったか覚えてます? 本当はすごく感動しているのに、『俺様が奇跡的に合わせてやったから……』って、こう言う人ですよ。だから、コンクールで優勝とか、そういう客観的な評価がほしいんでしょ、のだめは。これだったら千秋先輩と釣り合うと、自分も納得でき、先輩も認めざるを得ないような」

 ――でもさ、コンクールがどうとかいう前に、コンヴァトで2年、あれだけいろいろな課題をやって、自分で自分の成長を実感できるんじゃないか? よく人の家に行った時に、応接間にピアノが置いてあることがあって、その上に乗っている楽譜をついチラっと見ちゃうんだけど、どんな曲をやっているか見るだけで、その人の能力がわかるところがあるじゃない。のだめも、課題曲をこなしながら、ああ私もこんな曲が弾けるようになったんだって……

「のだめにとっては、世間的な難易度なんて関係ないんデス。他の人にとって難しいと言われている曲でも、自分が気に入ればパッと弾けてしまうし、簡単な曲でも、自分が理解できない曲はいつまでも弾けない。千秋先輩は、のだめの課題曲のリストを見ただけで『もうこんなレベルまできたのか』とわかったけど、そういうのはのだめはわからないんですよ」

 ――なるほど……。じゃ、オクレール先生が「なんでこれが課題曲なのかわかってる? 弾かされているだけ?」って訊く場面があるけど、あの指摘はやっぱり正しかったわけだ。のだめは課題曲の意味を全然わかっていなかったんだね。千秋も、ひとつひとつの曲だけでなく、どうしてこの曲がこういう順で課題に出されているか、それを説明してやれば良かったのにね。

 ――千秋といえば、テオが「君は若いのにはっきりものをいう人だって聞いたから」という場面があるけど、むしろ言うべきことを言わない人だという印象が強いな。モノローグでつぶやいていることを、「それを声に出して目の前の人に言ってやれ」と思ったことが何度もある。ケイタイの娘のカトリーヌちゃんに「パパはすごく練習してるよ」と言われて、「リハの演奏を聴いていれば、彼がどれだけ練習しているかわかるよ」と答えていたけど、それを本人に言ってやればモチベーションもすごく上がるだろうにね。

「はっきりものをいう、というのは欠点の指摘に関してでしょ。千秋先輩は他人を褒めることのできない人だから。そういう言葉を持っていないんデスよ。誰に対しても褒めたことがないでしょう」

 ――自分より格下の人間に対しては、いくら頑張ってもまだ俺より下、と思っているから褒めたくないんじゃないか。自分より上の人間に対しては素直になっているでしょう。

「そんなことありましたっけ。いつですか」

 ――シュトレーゼマンに対しては……あなたには長生きしてほしいから、酒も女もほどほどにしたらどうですか、って言う場面がテレビ編であった。

「それは褒めているわけじゃないと思いますけど」

映画「のだめカンタービレ最終楽章前編」ガイドブック (講談社 Mook)

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