係長 青島俊作 THE MOBILEは良質のミステリー

「係長 青島俊作 THE MOBILE 事件は取調室で起きている!」は踊るシリーズ初の携帯配信ドラマ。僕の環境では見られなかったし、見られたとしてもあんな小さな画面でドラマを見る気は起きなかったし、7分×14回なんて追いかけようもなかったんで、DVDリリースを待っていた。

脚本

  • 金沢達也

監督

  • 長瀬国博

出演(レギュラー)

出演(ゲスト)

配信

  • 2010年6月1日より全12話。

雑感

抜群に面白い。携帯配信のため見たくても見られたなかった人が多いと思うが、これはもっと多くの人に見られるようにすべき作品だ。今調べてみたところ、TOHOシネマズ日劇(東京)とTOHOシネマズ梅田(大阪)の2館のみで2010年8月7日〜13日の1週間限定レイトショー公開されたらしい。知っていたら観に行っていたところだが、なぜこの2館だけ? なぜ一週間だけ?

まず、設定がよくできている。舞台になるのは取調室のみ。依頼者と探偵が個室で話をするだけで(捜査をしないで)犯人を見つける、というミステリーの分野があって、こうした探偵を安楽椅子探偵というが、ここでは取調室の中で被害者、被疑者をはじめとする関係者と会って話を聞くので、捜査をしていないわけではない。当初は雲をつかむような話だが、いろいろな人の証言を重ねていくと事件の真相が見えてくる仕掛けで、こうした趣向は珍しいのではないか。

第二に、犯人が意外だ。はじめからカードは出ているから、わかりそうなものだが、少なくとも僕は「えーっ、そういうこと!?」と驚いた。ミステリーとして、うまい。「踊る」でミステリー性を追求したものはほとんどなく、そうした点でも斬新だと思うが、「踊る」の世界観を知らない人が見ても楽しめると思う。いや、「踊る」の世界観を知らないと、あんなぬるい取り調べをするはずがない、とそこで見る気を失くしてしまうかな。

第三に、「係長」の悲哀をうまく表現している。OD3(「踊る大捜査線 THE MOVIE3」)では青島が係長になっているので、これも映画に向けての宣伝の一種ではあるのだが、異なるタイプの二人の部下を持つ係長の心境、その係長に使われるそれぞれの部下の気持ちがよく描かれていた。つまり、ミステリーとして設定や犯人探しだけでなく、背景の人間ドラマもよくできていたということだ。

それに、ストーリーの運びのテンポがいい。これを見ると、やっぱり「踊る」はテレビシリーズがよかったなあと思いたくなるが、テレビスペシャルや映画に場を移してからは、はじめから2時間という枠の中での話になるためか、どうでもいいエピソードがあったり中だるみのような場面があったりする。今回は一話7分、トータル80分という尺のせいか、畳みかけるようなスピード感があった。もっとも、第一話の青島の7分近い独白はもう少し短くできたと思うし、事件解決後の青島と袴田の(悟ったような)会話もなくてもよかったけど。

本店(警視庁や警察庁)の人間が一人も出てこなかったのもいい。テンポがよかったのはテーマをしぼったせいもあるだろう。もういい加減、本店と所轄、キャリアとノンキャリのうんぬんかんぬんからは脱却した方がいいのではないか。

最後に、係長になった青島や、新しいキャラクターである篠原夏美、栗山孝治、王明才が登場していて(しかもそれぞれのキャラをよく表現していて)、映画の予習としても役に立つ。まあ、復習としても良いのだが、映画を見る前に見ていたらもっと楽しかったな、と思った。

踊る大捜査線」はもともとはテレビドラマがあって、それが映画化されたもの。が、OD2から既に7年、OD1から数えれば12年が経過し、いろいろな点で状況が変わっている。脚本と監督が(本広&君塚から)変わったのも良かったのかも知れない。