窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

NHK大河第25話「見果てぬ夢」

平治の乱に向けて大きなフラグが立った回。今回も神回と言いたい。

粗筋

統子内親王が上西門(じょうさいもんいん)という院号を授かり、頼朝は蔵人に取り立てられる。上西門院の殿上始の儀で、頼朝は清盛と対面。酒を供するのだが、緊張して思わずこぼしてしまう。と、清盛は「最も強き武士は平氏じゃ。そなたのような弱き者を抱えた源氏とは違う」と居並ぶ面々の前で罵る。悔しさと怒りで清盛を睨むと、清盛はふっと微笑む。

頼朝に、清盛はどういう人かと問われた義朝は、かつて比べ馬をした時のことを思い出していた。あの時は義朝が勝ったのだが、「最も強き武士は源氏じゃ。そなたのような弱き者を抱えた平氏とは違う」と言い放つ義朝に、怒り狂う清盛が嬉しかったと。そして、いつの日か二人で武士の世を……と思ったことを語った。「それで、清盛のあの微笑の意味がわかりました」と頼朝は頷く。

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先週病に倒れた由良は、ついにみまかることに。清盛に頼んで宋の薬を分けてもらおうとした義朝に、由良は虫の息で「平氏に頭を下げてはいけませぬ」

義朝「なにを言うておるのだ、かような時に」
由良「いついかなる時も、源氏の御曹司として、誇りをお持ちになり生きてこられた殿を、由良は心よりお敬い申し上げておりまする。かようなことで、お志を曲げないで下さりませ」
義朝「たわけ! そなたの命に代えられるか!」
由良「あれ……殿らしゅうもない。されど……嬉しや……」
義朝「……」
頼朝「……」
政清「……」
由良「どうか私を、誇り高き源氏の妻として、死なせて下さりませ」
義朝「由良……」
由良「……と父が……」

義朝が一世一代のデレを見せたら、由良姫は最後の最後にツンをかましてくれました。ここは泣くところですか、笑うところですか。

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後白河上皇は、信西に、藤原信頼近衛大将の地位に任じるよう指示する。信西は「近衛大将は特に際立った働きもないお方にやすやすと与えられる官職にあらず」と抵抗するが、「何とかせい」とばっさり。信頼は信西を睨み据える。

信西は白楽天の「長恨歌」の絵巻を後白河上皇に届ける。信頼を寵愛するあまり、周りが見えなくなっている後白河院を諌めるためだが、「上皇は喜ぶばかりで真意にまったく気づかなかった」と公式サイトにあるけど、信西の言いたいことは十分わかっていて、敢えて無視した、のではないか。松田翔太はそういう演技をしたと思う。

信西の自分勝手なやり口に不満を持つのは信頼だけではなかった。藤原惟方藤原経宗らと語って、打倒信西の密談を。そして信頼は義朝を呼びつけ、信西を殺すよう持ちかける。義朝は一度は断わるが、今のままでは埒が明かないことを悟り、立ち上がることを決意。

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信西が木工頭(もくのかみ)・左京大夫の罷免を決めたのは、大学再建の費用をひねり出すため。大学再建を早急に進めるのは、才ある者の育成は急を要するから。さらに、何とかして遣唐使を再開し、宋の進んだ文化や政治を導入し、この国をもっとよくしたいと切望していた。そのためには一にも二にも予算。というわけで日々、算木を睨みつけ、やりくりに苦労する信西だが、ようやく遣唐使再開の目処が立った。そこで大願成就のため、清盛に熊野詣を命ずる。

感想

今回は回想シーンが多かった。過去をいったん整理し、次に向かうためだろう。それにしても、第4話の「殿上の闇討ち」は(出てくると思ったから)まだしも、第3話の比べ馬のシーンがここにリンクされているとは……。この脚本は神としかいいようがないではないか。

由良の最期も厚手のタオルが必要だった。「叔父を斬る」での為義パパの最期のシーンも目から汗が大量に出たものだったが、今回はそれを上回ると言いたいくらいの出来。あの義朝が「そなたの命に代えられるか!」と最初で最後の愛の告白。それでも「平氏に頭を下げるな」と気丈に言い張ったあと、生涯最後のセリフが「と、父が」なのだから……

田中麗奈という役者は、それほど好きではないのだが、義朝と出会った頃のわがまま娘、ここ数回の気高く、気丈な棟梁の妻、そして今回の最期と、こんなすごい役者だったっけ、と唖然とするほど。

というか、玉木宏にしても阿部サダヲにしても松雪泰子にしても山本耕史にしても井浦新にしても、この作品が代表作と言ってもいいのでは? というほど、嵌まり役になっている。これは、もちろん役者本人の努力もあるだろうけど、脚本や演出がうまいことの証左なのではないか。

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