今月11本目にして初めての邦画であった。
題名 | シグナル 月曜日のルカ |
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監督 | 谷口正晃 |
原作 | 関口尚 |
出演 | 三根梓(杉本ルカ、技師長)、宇津井健(杉本剛造、ルカの祖父)、西島隆弘(宮瀬恵介、アルバイト)、白石隼也(宮瀬春人、恵介の弟)、おかやまはじめ(宮瀬雄三、恵介の父)、高良健吾(ウルシダレイジ、謎のストーカー?)、井上順(支配人)、梅沢昌代(支配人の妻)、緑友利恵(さおり、アルバイト、レイジのスパイ)、趣里(神崎杏奈)、他 |
公式サイト | 映画『シグナル〜月曜日のルカ〜』公式サイト |
制作 | 日本(2012年6月9日公開) |
劇場 | 新宿ピカデリー |
粗筋
宮瀬恵介は高給につられて名画座「銀映館」でアルバイトを始める。フィルム映写機の操作が主な仕事で、上司は杉本ルカ。なんと同い年の女性だった。ルカは、映画館の中で暮らしており、3年前からなんと一歩も外に出ていないとのこと。ということは、学校にも行っていないということだ。
仕事をするに当たって、相場の倍の時給を払う条件として三箇条を守るように支配人から言われる。(1)ルカの過去を詮索しないこと、(2)月曜日は特に機嫌が悪いので話しかけないこと、(3)恋愛禁止。しかし、わかりましたと言ったそばから違反しまくりで、家族にもペラペラ喋ってしまう。
レイジという金持ちで、かつイケメンの男がおり、モテモテだった。レイジには7人の彼女がいて、ルカもその一人。月曜日のみ会えるので「月曜日のルカ」と呼ばれていた。日曜日の彼女が妊娠し、自殺してしまったことから、ルカはレイジと別れる決意をするものの、レイジは、別れるならお前を殺して自分も死ぬといい、実際に、ルカの胸にナイフで傷をつける。が、レイジと抱き合っている時に祖父が死に、死に目に会えなかったことから、映画館に閉じこもることになってしまったのだ。
しかし、いまだにルカに未練たっぷりのレイジは、月曜日になるとtwitterでメッセージを送ってきて、それを見るとルカが鬱になる、というわけ。ついにレイジが映画館にまで姿を見せるようになって……
感想
高良健吾の演ずるレイジが厭な奴で、頭のネジが何本か飛んでいるんじゃないかというくらいイッちゃっているのだが、これは褒め言葉。あそこまで厭な奴を演じたからこそ、ルカの怯えが現実性を持つわけで、憎たらしく思いつつも感心していた。
腹が立ったのは西島隆弘の方。西島が悪いわけではなくて、彼もまた宮瀬恵介を演じたに過ぎないわけだけど、僕は恵介のような人が大嫌いだ。
アルバイトでも正社員でも同じだが、就職したら仕事に専念するのは当然だ。職場は仕事をするために集まってくる場であって、友達や恋人を作るための場ではない。仕事の質問ならいいが、プライベートな話は節度が必要だし、少なくとも仕事もろくに覚えていないうちから「あの子、美人だー」などと言っているような人は、お引き取り願いたいもの。ましてここでは、高い給料には理由があるといって、わざわざ三箇条まで示されているにも関わらず、質問しまくりって、何を考えているのだ。
「悩んでいることがあるなら、話してくださいよ。一緒に仕事している仲間なんですから」などと言う人は(恵介は本当にこんな暑苦しいことを言った)、心底、悩んだり困ったりしたことがないんだろうな。ちょっとした悩みごとなら、確かに、誰かに聞いてもらうことですっきりする、ということはあるだろう。しかし、彼女が3年間も傷つき、心を閉ざしていることに対して、また親代わりの支配人夫妻が3年間、それなりに努力し、気を遣ってきても解決に到っていない問題に対して、役に立てるとでも思っているのか?
案の定、だんだん真相がわかってきても、何一つ役に立つアドバイスができるわけではないし、レイジが映画館に乗りこんできても、何一つ有効な手だてが打てるわけでもない。それでいてルカには「何があっても守ります」なんて言っちゃって、抵抗もできないままレイジにボコられてのびてしまうという情けなさ。
まあ、ここで恵介がレイジを腕づくで追い返せるような人だったら、ルカは心を閉ざしたままだったかも知れない。恵介があっさりやられたことで、レイジに「あなたとはもう付き合えない」とはっきり宣言できたし、それで自分の殻を破ることもできた。本人にはっきり言われてしまったからこそ、レイジは諦めたんだろう。結果オーライではあったけど、あれでルカが恵介を好きになるというのもよくわからない。恵介のどこに惹かれたんだか。
もし僕がこの映画を作るとしたら、退院した恵介が「無事収まって良かったですね」的なことを言ってきたら、「あなたって本当に口先ばっかりで何もできないのね。もう二度と、あなたを守りますとか言わないで」ぐらいのことはルカに言わせたい。
恵介の試験の前の日、不安がる恵介に、ルカは、恵介なら大丈夫だよと励まし、恵介のことが好きだと告白し、キスまでしてしまう。これでは恵介は、今夜は試験勉強どころか、夜もろくに眠れず、明日は夢うつつの状態で試験を受ける羽目になるだろう。当然、合格は覚束ないだろう。これはもしかして、ルカを守るために高い時給を払ってくれた支配人さんの思いをふみにじって、三箇条をあっさり無視しやがった恵介に対する、ルカなりの復讐劇か!?
その他
劇中劇で、映画館で時代劇がかかっていて、お侍さんが神輿を矢で射っておおーという場面があったが、おお! 平清盛だ! とすぐわかったよ。さすがに今年の大河は勉強になる! エンドロールに、ちゃんと「新・平家物語(1955年)」って出てたし!(誰でも知っている超有名なシーンらしいが、僕は今年の大河を見るまで知らなかった)
追記
レイジと恵介では、誰がどう見てもレイジの方が悪い奴なんだが、レイジには腹が立たなかったが恵介には腹が立ったのは何故だろう、とずっと考えていた。結局、「誰がどう見てもレイジの方が悪い」からなんだろう。だから、対抗しやすい。
もし僕が、事情を知っていてルカのために何かしようと思ったら、まずtwitterのアカウント変え、レイジをブロックするように言う(これだけで彼女の問題の半分くらいは解決する)。それから胸の傷に関してちゃんと医師の診断書を取り、レイジに対して、これ以上ルカにつきまとうなら告訴すると連絡する(3年経っても消えないほどの傷を負ったのに、当時、医者が何も問題視しなかったもの変だ。それとも病院へは行かなかったのか。だからまだ治らないのか)。もちろん、閉館後の映画館に勝手に入ってきたら、即座に警察に連絡だ。他にも考えられる方法はいくつかある。
こうした方法が有効なのは、第三者は誰でもレイジを悪いと判断するだろうという確信があるからだ。法に触れることをしているのだから、当然なのだが、レイジ自身も、天に誓って恥ずべきことはやっていない、とは思っていないんじゃないか。だから相手が自分に逆らえない時には強気に出るが、正面切って歯向かってきたら、闘えないと思う。自分の感情をコントロールできないでいるが、出るとこ出たら自分もまずい、というのはわかっているはずだ。
一方、恵介の場合は法を犯しているわけではない。だから、出るところに出るというわけにもいかない。もちろん本人は何も悪いとは思っていないだろうし、これが悪いことだとわからせるのは難しい。だから腹立たしいのだ。
リンク
- 『シグナル -月曜日のルカ-』 2012年6月16日 MOVIX亀有(気ままな映画生活、2012/06/16)
- シグナル〜月曜日のルカ〜(LOVE Cinemas 調布、2012/06/18)