第01週「女賢しくて牛売り損なう?」(水)
放送日
- 2024年4月3日
登場人物
概要
教室から聞こえた「女性は無能力者」という言葉に思わず反応してしまった寅子は、教授の穂高重親と臨時講師の裁判官・桂場等一郎と出会う。法律に強い関心を持つ寅子に「明律大学女子部法科」へ来いと言う穂高。そこは、女性も弁護士になれる時代が来ることを見越した女性のための法律の学校だった。希望を見いだした寅子は母・はるが実家に帰っている間に出願しようと企む。(NHKオンデマンドの解説より)
今日の穂高と寅子
「続けて」
「それは、女が無能だということでしょうか?」
今日の佐田(と直言)
「本当にいいんですか。その、奥様がお許しになりますかね」
感想
佐田の通っている法学校では、穂高が寅子の意見を聞こうとする。ただの遣いの女なのだが、授業の内容に耳を留め、その内容に疑問を感じたことに、見どころありと感じたか? 法律家になろうとする人間は、こうした市井の声にも耳を傾けるべきだと考えたからか?
法律用語の「無能力者」は日常語の「無能力」とは意味が違うが、それを知らない寅子を笑う学生らに桂場が「何がおかしい、彼女はわからないことを質問しているだけだ」と叱責するのもいい。桂場は終始不機嫌だが、寅子が女だから不機嫌だというわけではないのだ。
そして、穂高が寅子に明律大学に誘い、その気になった寅子が父親に相談、直言は娘は見合いより進学の方が向いていると考えて賛成する。が、佐田は、はるが賛成するとは思えず、はるが賛成しない限り、直言がなんと言おうと話は進まないと思っているところがオカシイ。
当時の民法では女性に一切の決定権がなかったとは知らなかったが、法律は法律、実態は別にあるということだ。逆に、実態はどうあれ、表向きの家長は直言。そういう矛盾があるのだ。
直言と寅子が出願のために内申書の提出を女学校の担任に求めた時も、担任は「奥様はご存知なのですか!」と訊き返し「まずは奥様と相談されては」と薦めるのは、はるがこんなことを認めるわけがないと思ったからだ。今から6年も学校に行けば、卒業するのは20代半ば、そうなったらもう嫁の貰い手はないのではないか、まして女性があまり賢くなり過ぎても……
直言はいくつになっても寅子に嫁の貰い手がないなどということはないと信じ込んでいるし、寅子自身は必ずしも結婚したいとは思っていなかったから、響かないアドバイスではあったが、これが当時の一般的な見方なのだろう。今でもこういう風潮は消えたわけではない。
もうひとつ、能天気にただ「結婚」に憧れていただけのように見えた花江が、実はしたたかな戦略で直道を仕留めたと知り、寅子が唖然とするシーンがある。女が自分の望みを叶えるのはとても大変だからこそ、したたかにならなければいけない、寅子はなんでも正直過ぎるというのだ。見合いの席でも思ったことをすぐに口に出してぶち壊しにしてきた寅子にとっては、考えさせられる一件だった。