窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

NHK大河第21回「敗戦の責任」

見所

見所という言い方が当たるかどうかわからないが、工藤明須加、斎藤工が今回でクランクアップだった。要するに山本三郎神保修理が死ぬのだ。刮目して見なければいけないのである。

粗筋

梶原平馬が洋装で大砲を率いて参戦し、大山弥助をひやりとさせる場面もあったが(史実らしい?)、基本的に武器の性能が違う。その上薩摩軍が遂に錦の御旗を立ててきた。これによって旧幕府軍の士気は著しく低下、官軍側に寝返る部隊も出てくる始末。

劣勢に立たされた慶喜は各藩の代表を集め、こう申し渡す。

「大坂が焦土と化し、我らが討ち死にするとも、残った者たちが志を継ぎ、戦い続けるであろう。大義は我らにある。最後の一騎となるまで、戦い抜くぞ」

自分は戦い抜く気なんぞさらさらないくせに……ということを視聴者は知っているから、皆を鼓舞する声がなんとも空虚に響く。

一方、現場を見て回った神保修理は、これ以上戦いを続けるのは無理であり、撤退すべきとの意見を固める。佐川官兵衛などは、ここで撤退したらこれまで死んでいった者はどうなる、無駄死にではないかと徹底抗戦を主張するが、修理は取り合わない。そして慶喜に戦況を訊かれると、劣勢であることを告げ、兵を率いていったん江戸へ退き、大勢を立て直した方がいいと進言する。

「恐れながらに申し上げます。我が軍勢、兵の数こそ敵に勝っておりまするが、軍略が乏しく、このまま、戦を続けては兵を失うばかりと拝察つかまつりまする」
「わかっておる。では、いかがすればよい。申してみよ」
「兵たちを率いて、いったん江戸に戻り、戦略を立て直すべきかと存じまする」
「江戸に戻る? ……なるほどのう」

修理の意見を聞いて何事かを考えた慶喜は、密かに容保を呼び、二人で江戸へ戻ると伝える。

「江戸に戻る。ついて参れ」
「兵達が引き上げている途中にござります」
「兵は置いて行く。我らが城を出る事、家臣たちにも口外無用」
「なんと?!」
「榎本の軍艦が停泊している。今宵のうちに乗り込み、江戸に向かうのだ」
「それはなりませぬ。最後の一騎まで戦い抜くと仰せになったではありませぬか」
「あれは、皆の動揺を鎮める方便だ。いったん江戸に戻り、再起を図る」
「では、なおのこと、全軍を率いて戻るべきにござりまする」
「馬鹿を申すな! それでは江戸に着くまでに、また戦となる。そなた一人で余と共に来るのじゃ」
「いいえ! それがしは藩士と共に残りまする!」
「ならぬ! そなたがここにいては会津兵がいつまで経っても戦をやめぬ。偽物とはいえ、錦旗が上がった上は、兵を引かねば徳川は朝敵となるのだぞ。会津の家訓に徳川を朝敵にせよとの一条があるのか?」
「……」
会津殿、この策は神保修理が戦況の報告に折に進言したものぞ」
「まさか?!」

あえて触れると、修理は「兵たちを率いて」江戸にもどるべきだと言ったのである。大将だけがひそかに戻れとは言っていない。

「皆を救うための策じゃ、これしかない。家臣たちが朝敵の汚名をきて死んでも良いのか?!」
「……」

慶喜と容保が突如行方をくらましたことを知った修理は、皆に知られる前に容保を連れ戻そうとあわてて追いかけるが間に合わず。大将がいち早く敵前逃亡したのかと兵たちはいきり立ち、修理が逃がしたものと思い込んで怒りを修理にぶつける。

大将がいなくては戦にならないので、全軍、江戸へ引き上げることに。修理はとらわれの身となる。また、会津が徳川と共に朝敵として認定されたことが知らされる。江戸の会津藩邸で家臣と再会した容保は、自分の愚を悟るがもはや手遅れ。そこに、(江戸城への)都城禁止の報が届く。慶喜は、大勢を立て直すのではなく、全面恭順することにしたのだ。

「そなたをこのような境遇に落とし、詫びる言葉が見つからぬ。会津は都を追われ、今また江戸を追われる。その憤りがそなたの身ひとつに向かってしまった。どうやっても、どうやっても、そなたの名誉を取り戻すことができぬ。――修理、切腹申し付ける」

その後秋月悌次郎は、「殿の指示で」見張り番を翌朝まで外し、警備も緩めることを修理に告げる。逃げてほしいからだ。しかし修理は「殿はすべてをわかってくださる。それで十分ではないか」とつぶやき、一人静かに切腹する。

「わしの代わりに、負け戦の責めを負うたか。修理、逃がしてやりたかった」

一方会津にも、会津軍が江戸へ撤退したこと、朝敵となったことが知らされる。三郎が死んだことと覚馬が捕らわれたことは、まだ伝わっていない。尚之助が、かくなる上は恭順の意を示すのみと言うと、権八は「ぬしは臆したか! ならぬことはならぬ!」と怒り心頭に。八重もそれに同調する。

「やり直すための恭順なんです。まずは会津の無実を訴える。その一方で戦に備えて軍略を立てます。私は洋式調練の具体策を持って城に上がります。あなたは密かに領内の鉄砲、火薬、鉛などを集めて下さい。今度こそ軍制改革を断行して頂く」

感想

以前読んだ本では、修理の切腹が決まってから内蔵助は雪を大急ぎで江戸に呼びつけ、一日、一緒に過ごさせ、その翌日に切腹した、とあったので、二人の別れの場面があるのかと思っていたら、本ドラマでは二人は会うことなく死別してしまうのだった。そんな事態が起きているとは知らず、夫の無事を祈り続ける雪があわれだった。この二人、ほとんど結婚生活を送っていない。切腹前、最後に「雪……」とつぶやいたのが切ない。

神回というのはまだ早いと思うけど、小泉孝太郎綾野剛、佐藤B作、津嘉山正種斎藤工らの演技は神がかっていた。

書きたいことはたくさんあるが、きりがないのでこの辺で。

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