窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

NHK大河第35回「襄のプロポーズ」

今日の見所

会津篇の落穂拾い。

粗筋

時尾が斎藤一(現在は改名して藤田五郎)を連れて女紅場にやってくる。結婚したのだという。しかも媒酌人は大殿が務めてくださったとのこと。

容保「ようやくひとつ報いることができた。最後まで会津に尽くした者たちに、いつか報いたいと願っていた。幸せに暮らせよ」

その日、新島ジョーと意気投合した斎藤はジョーの部屋で夜を徹して語り合う。酒の飲めないジョーはお茶で付き合う。

斎藤「俺がいた頃、都は殺伐としていた。幾度も斬り合い、血を浴びた。だが妙に懐かしい。おかしなものだな。良い時ばかりではなかったのに、京都の夢を見る。みな命がけだった。俺たちが会津と出会い、ともに戦った場所。良い所も、嫌な思いでしかない所も」

女紅場で教材準備中の八重の許に家から急ぎの使いが。自宅に戻ると、尚之助が死んだという知らせがとどいていた。肺炎をこじらせての死だそうだが、自分にはまだやることがあると入院中の病院を抜け出したのだという。これを書いていたらしい、と覚馬が差し出した原稿の束は「会津戦記」。

今夜は家族みんなで尚之助様の冥福を祈ろう、という佐久に対し、まだ仕事が残っていると、八重は女紅場に戻る。覚馬はジョーに言う。

覚馬「都に旅立つ前、俺は尚之助に家を託し、会津を託した。あの男は律儀に俺との約束を果たし、どうすれば会津を守れるか、家を、八重を守れるか、それを考え、やり続けた。戦に破れ、斗南で辛酸をなめても、まだ考えていた。なじょして会津が滅びねばならなかったのか。それを書き記したのが、これだ。何ひとつ報いてやれなかった。尚之助は病に倒れたんではねえ。あの戦で死んだんだ。ゆっくりと時をかけた戦死だ」
ジョー「何て力強い字だ。死を目前にして、どこにこんな力が。最後の一文字まで気迫がこもってます」

そしてジョーは覚馬の指をとって原稿に触れさせる。覚馬は見えない手で原稿をなぞり、尚之助の文字を感じ取ろうとする……

ジョーはゴードン家のキッチンでサンドイッチを作り、八重をピクニックに誘う。行き先は、三郎が死んだとされる地だ。京都に来てもう何年も経つのに、八重はまだその地を訪れたことがなかった。嫌がる八重にジョーは言う。

「向き合った方がいい。辛くても。三郎さんや会津の大切な人たちが亡くなったことを、あなたがしっかりと受け入れなければ、亡くなった人たちは安らかに眠れません。あなたの心の中の戦も終わりません」
「あなたに何がわかるのですか!」
「わかりません。私は三郎さんも、会津も、尚之助さんのことも知りません。あなたの代わりに悲しむことはできません。できるのはただ、悲しむあなたのそばにいることだけです。――どの辺りでしょうね、三郎さんが倒れたのは? まだどこかに気配が残ってるかも知れない」
「そっだらことあるわけねえ」
「そうでしょうか? 私はあなたが亡くなった人たちに語りかければ、きっと何か答えてくれると思うんです。その声に耳を傾けてみて下さい。亡くなった人たちはもうどこにも行きません。あなたのそばにいて、あなたを支えてくれます。あなたが幸せであるように、強くなるように」

八重はサンドイッチを頬張りながら、目を閉じ、静かに耳を傾ける。と、尚之助の「あなたは、新しい時を生きる人だ」という声が聞こえた。……気がした。

「八重さん、改めてお願いします。私の妻になって下さい」
「私は尚之助様のことを忘れることはできねえから」
「いいのです、それで。むしろ忘れないでいて欲しい。私は川崎さんに喜んでいただける夫婦になりたいのです。私の伴侶となる人は、あなた一人しかいない。あなたとなら共に歩んでいける。素晴らしいホームが築ける。どうかお願いします」
「はい」
「!!」
「新島さまは本当に面白い。私はあなたと一緒にホームを作ってみます」

雑感

  • 新旧の斎藤一の会談(オダギリジョーは「新選組!」で斎藤一役だった)。制作陣も狙った楽屋オチか?
  • 今回斎藤は、これまでの登場回でのすべてのセリフの合計をはるかに上回るほど喋った。なるほど、確かに斎藤は明治になって変わった。いや、時尾と一緒になって、というべきか。「時尾! 時尾!」って、どれだけ時尾のことが好きやねん。
  • 大殿に会えて嬉しかった。媒酌人を務めたのは知っていたが、年代的に、前回で時尾の結婚は過ぎたはずなので、もしかしてカットされたのかと心配していたのだ。しかしこれまで短いながらも印象的に斎藤と時尾の出会いのシーンを見せてきたから、まさか結婚式をカットはしないよねえ……? とドギマギ。とにかく、ちゃんと出てきてよかったです。でももしかしてこれでクランクアップか?
  • 報いてやりたかった気持ちはよくわかるし、嘘偽りのない本心でもあろうけど、だったら尚之助に報いてやれよ! と思ったのは自分だけであろうか。それとも、大殿の耳には入っていなかったのだろうか。
  • 尚之助の死の知らせと共に「会津戦記」の原稿を受け取った覚馬は、恐らくすぐに八重を呼びにやったのだと思うが、八重が戻ってくるまでのわずかの間に中を読んだのか。誰に読んでもらったのだろう。

恐らく当初の構想では、尚之助はもっと早く退場するはずだったのではないかと思うが、長く引っ張り過ぎ、その尚之助がまたいい男過ぎ、尚之助・八重はアツアツ過ぎ、そして不遇な目に遭った後の死でショックを受けている八重が(そして同時に、尚之助に思いを残している多くの視聴者が)どのようにジョーを受け入れるのかが最大の見所であった。というか、間に2、3回置いてもらわないと、尚之助が死んだと同じ回にプロポーズを受けるのは、史実だから仕方がないにしても、だからといって納得できるものではないと……見る前は思っていた。

こういう流れに持っていくとはね。

ジョーは、尚之助のことを忘れる必要はないと断言したのだ。八重は(視聴者も)これで、ああ忘れなくていいのかと。尚之助に思いを残したままジョーを受け入れていいのかと思ったのだ。だから、尚之助の死から時間が経っていないにも関わらず、違和感を持つことなく話が進んだのだ。

このジョーのプロポーズを聞いて、今から26年前、五代裕作君が音無響子さんへプロポーズした時のセリフを思い出した人も多かったのではないか。死別した夫・惣一郎さんのことが忘れられないという響子に、五代は「惣一郎さんごと、響子さんをもらいます」と(本が押入れの奥で、手元にないので記憶での引用だが)言ったのだ。

未亡人と結婚するということは、そういうことなのかも知れないが、これを言語化した高橋留美子は本当にすごいと改めて思うのだった。

ところで、尚之助が「会津戦記」を書きかけていたというのは史実なのだろうか。仮に「会津戦記」ではないにしても、何か書いていたのだとしたら、どんなことを書いていたのか知りたいと思う。が、架空なのだとしたら……、ここは創作をしてはいけない場面だとしかいえない。史実は僕にはわからない。
(2013/09/09 記)

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