窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「麒麟がくる」第二回「道三の罠」

第一回を見て、本木雅弘の斎藤利政は大河史上最も格好いい道三だ、と思ったが、今回を見て、これは大河史上最も恐ろしい道三だ、と思った。これに匹敵するほど怖い人物と言えば、「おんな城主直虎」に登場した織田信長市川海老蔵)しか思い浮かばない。

麒麟がくる メインテーマ

麒麟がくる メインテーマ

  • 発売日: 2020/01/20
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出演

あらすじ

十兵衛が望月東庵と駒を連れて帰ると、美濃が攻められるところだった。相手は織田信秀。加納口の戦いが始まろうとしていた。

十兵衛は光安に連れられ利政の元へ。此度の戦は織田方の二万に対し味方は四千。兵の数が足らず殿は不機嫌じゃ……と光安は言うが、利政は呑気に鼻歌を唄っている。「敵を知り己を知らば百戦危うからず。わしは信秀の閨の中まで知っている」と豪語。信秀は金はあるが人望がない。二万とはいえ金に釣られて集まっただけ。崩れれば脆いと喝破する。

十兵衛に対し、旅の成果を問う。鉄砲を入手し医師を連れてきたことを褒めるが、旅の費用は「やったわけではない。足らぬというから貸してやったのだ。ちゃんと返せよ」と言う。信じられないという顔をする十兵衛に「返す当てがないなら戦で返せ。侍大将の首二つで免じてやろう」と言い放つ。

戦は、緒戦は数で勝る織田方の圧勝となる。諦めた利政はすぐに兵を退却させ、籠城することに。門を閉じた後は城兵に酒を振る舞い戦をねぎらう。美濃城は山城だけに籠城されると簡単には攻められない。城内の様子を乱破から聞いた信秀は、美濃方に戦う気なしと判断し、体制を整えるためいったん兵を引き始めるが、その隙に美濃兵が攻め寄せてきた。酒を振る舞っていたのは中身は水で、織田方を油断させるための作戦だったのだ。織田方は大敗を喫して尾張に帰る。

戦勝の祝いに守護の土岐頼純が利政を訪ねて来る。頼純は帰蝶の夫であった。帰蝶は、織田二万に対して味方は四千、苦戦は必至なのに、なぜ土岐氏は斎藤に加勢しなかったのかとなじる。頼純は「戦勝を信じていたゆえ……」と言い訳をするが、帰蝶を下がらせた後、利政は、信秀を先導した張本人が土岐頼純だと弾劾し、毒殺する……

戦国の戦

相変わらず刀でのチャンバラが多いがそれは措く。弓をそれなりに効果的に使っている点でこれまでの戦国大河よりはマシかも。

ところで、羽柴秀吉の台頭以降「籠城=干殺し」のイメージが強く、城にこもったら悲惨な負けしかないという印象が強かったのだが、それは城を取り囲んで補給を完全に遮断できるくらいの大軍で攻めた場合の話なのか。今回程度の戦力差だと、引いて補給や休息ができ、押して攻められるなど、籠城側は自在にできるが、常に野営を強いられる攻め手は辛いかもな……と思った。寒かったり雨が降ったりすれば、それだけで戦力ダウンするだろうし。

その他雑感

十兵衛が「侍大将! 首二つ!」と叫びながら斬り込んで行くのはおかしくもあり哀れでもあり。当時としては、戦に出る時の正直な心境なのかも。

敵の侍大将の首を斬ろうとしたらそれが西村まさ彦で、十兵衛が驚愕したから、てっきり明智光安が裏切ったのかと思った。実はその侍大将の顔が叔父上に似ていたために首を斬るのを躊躇した、とあとで十兵衛が話すのを聞いてようやく事情が呑み込める。このシーンは、借金を返すための賞金首としか見ていなかった大将首が、実は相手も人間であり、家族や、自分のような甥がいるのかも知れない、ということに初めて気付いた瞬間でもあったのだろう。

好んで戦をするわけではないが、戦をする以上死にたくないから勝つしかない、しかしそれが武士の誉れかと言われれば複雑な心境だ……というのが今年の主人公の心情で、これは悪くない。

帰蝶が利政に夫のことを詫びるシーン。帰蝶が事情を知っていたとわかると
「我が夫をお許しください」(夫を殺さないでください)
「もうよい、そちは下がっておれ」(だが断わる)
ということかしらん。

毒を飲んで苦しむ頼純を見ながら歌を歌う利政だが、これって戦の前に光安と十兵衛が利政の元に参った時、練習していた歌だろうか。この時から、この戦が終わったら頼純を葬ってやろうと考えていた、ということなのだろう。なんとも恐ろしい。

追記(2月19日)

  • 陣太鼓を打ち鳴らす様子をていねいに描いてくれたのは得点高い。士気を鼓舞するというだけではなく、無線どころか有線の電話もない時代、作戦を伝える合図にもなっていたのではないか。
  • 信秀が熱田神宮宮司を連れていて驚いた。当時は「神が守ってくださっている」ことを示すために戦に宮司を連れて行くことはよくあったそうだ(大河ドラマでは初めて見た)。それで命を落とした宮司もいたとか。
  • 斎藤利政「豊かであれば無用な戦をせずに済む」


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(2020/2/9 記)