第20週「1993-1994」(火)
放送日
- 2022年3月15日
概要
クリスマスイヴの日、るいの前に謎の振付師・サンタが現れます。そこへ帰宅したひなたは、10年ぶりの再会の余韻に浸るのもつかの間、サンタが自分の親戚だと知り驚きます。興味津々で自分の家族やルーツについて質問を重ねるひなたと桃太郎。そして、るいもまた、サンタにあの日のことを尋ねるのですが……。(NHKオンデマンドの解説より)
るいは算太に、なぜ雉真の家を出たのか、なぜ安子は算太のあとを追って慌ただしく大阪へ行ったのか、その後算太はどうしていたのかを訊くが、算太は「昔の話」「覚えていない」などと言ってごまかす。
その後、商店街の福引の手伝いをする算太に挨拶をする赤螺吉右衛門。吉右衛門の顔と「あかにし」の店を見て、算太は在りし日を思い出していた。そこへ駆け寄ってきた女の子。幼き日の安子だ。「おにいちゃん、ダンスは踊れるようになった?」そう言われた算太は、商店街でダンスを踊り出す。算太の頭の中ではそこは朝丘町の商店街だが、実際には京都の商店街であり、町の人たちは楽しそうにそのダンスを眺めている。ジョーはトイピアノをダンスに合わせて弾き始めた。ダンスを終えた算太が最後に見ていたのは「たちばな」の店だった。そして、その場に倒れ伏す。
算太は入院中の病院を抜け出していた。いつ何が起きてもおかしくない状態であり、そのことは本人も知っているという……。
雑感
自分の人生の残り時間がわずかだとわかった算太は、最後に身内に会いに行った。恐らくはここに安子がいると思っていて、死ぬ前に謝罪しておきたいと思ったのではないか。しかし安子はいなかった。事情を知らないるいに、自らの罪状を白状するほどには覚悟ができてはいなかった。
算太にとって、身内と言えるのは(今となっては)安子だけ。その安子も、復員後の大人の安子はバツが悪くて思い出すのは後ろ姿だけ。自分のことを愛し、信じてくれた、幼き日の安子こそが、今の算太の唯一の拠り所なのだろう。その安子にせがまれて、最後の、渾身のダンスを踊る。死ぬ前に妄想で家族を思い浮かべるのはこの作品の常道だ……。
算太とともにクリスマスの夕食を囲む大月家。ひなたと桃太郎は親戚がいないと思っていた自分らに大叔父さんがいたことを単純に喜び、どこ出身だとかこれまで何をしていたのかとか、矢継ぎ早に質問を浴びせる。ジョーはるいを気遣いながら、当たり障りのない話をする。ジョーはこれまで、るいが母と葛藤があったことを知っているし、岡山時代の話をしたがらないのは相応の理由があることを知っているから。本来は一番喜ぶはずのるいが、作り笑顔で複雑な顔をしている。ジョーはそれに気づいているが、ひなたと桃は気づかない。
昨日、ジョーは自分の抱える闇について、るいや子供たちに話した。るいも家族の知らないことをいろいろ抱えているが、そろそろそれらにきちんと向き合うべき時がきたのだと思う。岡山出身であること、雉真の血をひいていること、祖父は戦争で死んだが祖母は恐らくまだ生きていること……。ひなたや桃が知らなくていい話ではないはずだ。
算太のダンスを見て、福引で玩具のトランペットを当てた子が、ダンスに合わせてそれを吹いている。それを見たジョーがピアノを弾き始めるのに驚いた。もともとジョーはピアノも弾けた。もしかして、金子隆博さんがサックスが突然吹けなくなったが、キーボーディスととして音楽活動を続けているように、ジョーも音楽の道への復活の契機になるのか……? だとすると、迷惑男の算太も、最後の最後に大きな置き土産を遺してくれたことになる。