窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(95):岡山へ

第20週「1993-1994」(水)

放送日

  • 2022年3月16日

登場人物

  • 目黒祐樹(雉真勇)
  • 多岐川裕美(雉真雪衣)

概要

商店街でダンスを披露し、場を湧かせた算太ですが、実は病を患っていることが発覚。心配するるいに、算太はクリスマスプレゼントを渡します。中に入っていた物を見て、過去に思いをはせるるい。その様子を見ていた錠一郎は、ひなたと桃太郎、そして算太を連れて家族で岡山に里帰りしようと提案し……。(NHKオンデマンドの解説より)

ダンスをしている算太を見て、赤螺清子は何か気付いた風だったが、やはり算太だとわかったらしい。大月家で寝ていた算太を見舞いに来る。算太はるいに紙包みをクリスマスプレゼントだといって渡し、安子はなにも悪くない、自分が全部悪いと呟きつつ臨終。

算太の葬儀はモモケンが仕切ってくれた。

算太からのプレゼントの中身は預金通帳だった。ひとつは、算太が復員してから失踪するまでの間に積み立てられたもの、ひとつは、算太が大月に回転焼きを買いに来て姿をくらましたあとから現在まで積み立てられたもの。それを見たジョーが里帰りを提案する。

たちばなの墓が岡山にあることがわかった。納骨するなら普通は四十九日だが、結局岡山へ帰ったのは1994年8月10日。この日はこの日は甲子園大会の一回戦で 関西(岡山)対 八戸(青森)の試合があり、関西が勝ったそうである。久しぶりに会った勇は、るいとの挨拶もそこそこに、今大事なところだからとテレビに夢中。桃太郎も一緒に。二人は野球で意気投合する。

大月一家はここで泊って翌日に墓参りをするつもりのようで、るいに部屋を案内した雪衣が、算太が雉真の家を出て行ったのは自分のせいだとるいに詫びる……

雑感

算太は安子は悪くないと言って死んだが、前後の事情を説明しないからるいには何が何だかわからないまま。

通帳は、算太が戦争から復員してからお金を貯めていた(恐らくはたちばなの再興資金として)ことが示していたが、そのお金が貯まったままなのか、引き出されてなくなっていたかは言及されないまま。丸ごと残っていたと解釈した視聴者もいたようだが、それだと話の辻褄が合わない。現在の残高はゼロだが、この通帳は、かつてお金を貯めていたことと、その金額を示すため。そして、安子の係累が京都にいることを知った日から、このお金を返すべく、少しずつ貯めていた、それが新しい方の通帳という意味だろう。

このお金は、生前にるいが贈与を受けたと考えるべきか? 算太の遺産と考えるべきか? もし遺産であれば、相続するのは安子であってるいではない。安子が生きているとしたら、るいには手が出せないお金である。

葬儀をモモケンが仕切ったというのは、嬉しいサプライズだが、疑問でもある。算太が身寄りのないままだったら、モモケンが買って出たのはわかる話である。しかしいい大人の親族がいたのであれば、そこに任せるのが筋というもの。費用がキツイのではないかと案じたなら、お香典を多めに包めばいいだけのこと。とはいえ、親族といっても40年ぶりくらいに会って一晩過ごしただけの人。モモケンの申し出はるいにはありがたかっただろう。

四十九日を過ぎてもずっと納骨しなかった理由はわからないが、るいが過去と向き合う決意をするまでにそれだけの時間が必要だったということか。あるいは、ひなたが休みを取れるのが夏しかなかったからかも知れない。桃太郎が甲子園に出たら、それどころじゃなくなるはずなんだけど、その時はその時だったかな。

るいは雉真家と絶縁していたのか、連絡くらいは取っていたのか謎だったが、橘家の墓を勇と雪衣が守ってくれていたことを知っていたから、るいの連絡先は雉真の人は知っていて、たまに連絡が来ていたのだろう。

るいと二人だけになった雪衣は、算太に求婚されていたこと、それでもいいかなと思っていたこと、その後、勇の子を身ごもり、算太を傷つけてしまったこと、だから算太が出て行ったのは自分のせいであること、当時の安子はたちばなの再建に必死だったこと、ロバートのことはよく知らないこと……などを話す。

雪衣がるいに本当に詫びないといけないのは、るいに、安子は自分でるいを育てることを諦めて雉真に託すことに決めたのでは……と吹き込んだことだ。安子をライバル視していた当時の雪衣の画策で、これがなければるいがあそこまでこじらせることはなかったはずだが、(今のところ)雪衣はそのことに触れていない。算太と同様、本当に引け目を感じていることは素直に謝れないものだ。

また、算太の求婚に「それもいいかも」と思ったのは嘘だと思う。当時の雪衣は雉真の後継ぎの嫁に収まることしか考えていなくて、仕事もせず雉真の居候としてぶらぶらしている算太と一緒になるなどとんでもないと思ったはずだ。ただ、その後の結婚生活、裕福ではあっても愛がなく、自分のことを好いてくれる人と結婚した方が幸せだったかしら、ということは何度も思ったのではないか。それで、もし算太さんの申し出を受けていたら、とは考えた可能性はある。

さて、少しずつ紐がほどけてくるが、誰も、自分のことしか知らないし、都合の割ることは語らない。大月一家は少なくともこの日の夜は泊って、翌日に納骨をする予定らしいが、明日は誰と会って、何の話を聞くのだろう。そのような断片を集めて、るいが真相を知る日が来るのだろうか、それとも詳細についてはついにわからないままだろうか。

勇と雪衣を目黒祐樹、多岐川裕美が演じたことについて、濱田岳は一人で演じきったのだから、村上虹郎らもできたのでは、という声がある。自分は、これは暖かく迎えてくれても、今のるいにとって勇も雪衣も赤の他人であることを強調する意図があったのではないかと思う。算太を濱田が演じたことと対をなす。そうなると、安子の登場はあり得るのか、その時に誰が演じるのかが気になるところだ。最後まで安子は出て来ない気がするが、出てくるとするなら上白石萌音以外はあり得ないと思う。別人が演じたら、それは、るいが生涯安子を許さないことの意思表示になってしまうからだ。



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