第5週「ほんまの家族や」(月)
放送日
- 2023年10月30日
概要
実家のある香川で法事に出席していたスズ子だったが、そこでの様子のおかしさに叔母の大西タカを問い詰める。タカは、スズ子が次郎丸家の子どもで、亡くなった菊三郎と女中のキヌの娘だったとの事実を告げる。取り乱したスズ子は、実母であるキヌが住む家へと向かう。一方、大阪では、スズ子が本当のことを知ってしまうのではないかとツヤと梅吉が心配していた。(NHKオンデマンドの解説より)
次郎丸和一の家は白壁と呼ばれる大地主で、周囲の人は頭が上がらない。その息子の菊三郎が女中のキヌに手を出し、孕ませたが、ミネは(和一も)キヌのことをよく思っておらず、結果、キヌは手切れ金代わりの懐中時計をもらっただけで追い出されてしまう。ところが実家からも勘当され、行く当てをなくしたところを、里帰りしていたツヤが家へ連れて行き、一緒に産むことになる。そして、「この子は私が育てる。今のあんたには無理や。毎年一回は必ず帰省してあんたに会わせる。そして、あんたが自分で育てられるようになったら、いつでもこの子は返す」という約束をしてスズ子を連れて帰る。
その後、年に一度、スズ子に会えるだけで生きる力をもらい、なんとか生きていたキヌだったが、いつしかツヤは帰省しなくなった。また、キヌ自身も農家の西野の家に嫁に行くことになり、そこで子を二人成すと、貧しいながらも生活は落ち着き、スズ子のことはあまり気にかけないようになった。
今回、和一が突然孫に会いたいから連れて来るよう大西の家に言ってきた。無茶な話ではあるが、大西の家も、花田の家も、きっぱり断わることはできず(断われない理由はあるのだろう)、今回のスズ子の香川遠征と相成った。
匂わされていることを含め、経緯を記せば上記のようになろう。
事情を聞かされたスズ子はその場を飛び出し、一晩中さ迷い歩いた挙句、キヌに会いに行く。キヌは菊三郎からもらった懐中時計をスズ子に託す。
感想
次郎丸一家のしでかしたことは、現在の倫理観では許しがたいが、当時はそういうことがいくらでもあったのだろう。キヌが菊三郎に対していくばくかの好意を持っていたのか、無理やりだったのかはわからないが、そうであったとしても拒むことはできなかっただろう。
それに対してツヤの行動、それを許容したトシらの態度は立派なものだ。そこまではよい。
年に一度帰省するという約束が果たされなくなったのは、風呂屋を始めてからは、常連さんのため何日も家を空けられないという事情もむろんあるだろうが、スズ子が可愛くなってしまい、今さら返せと言われても厭だという気持ちもあったのではないか。特に実子を亡くしてからはそうだろう。
一方、キヌにも縁談が持ち上がり、そうなると連れ子がいるとは言い出せず、このままツヤが育ててくれればそれが一番いいと思うようになっていたのではないか。ただ、ともにそう明言したわけではないので、恐らくお互いに気まずい思いを抱えていたのではないかと思う。ツヤや梅吉が、自分らが顔を出すとアレだから、と躊躇したのは、万が一キヌから、そろそろ返してくれと言われたくなかったのではないか。
和一らが突然孫に会いたくなった理由はわからない。もしかしたら菊三郎には子ができなかった(和一、ミネには孫がいなかった)のかも知れない。
おしゃべりスズ子が今回はほとんどしゃべらず、ショックの大きさがわかる。キヌの告白を聞いても、こんなん私のお母ちゃんじゃない、と思い続け(顔をそむけ)ていたスズ子だが、子守唄を聞いた途端に「この歌、聞いたことがある……」という顔をし、涙をこぼすシーン。「ゆたか」という名らしいその家の子(スズ子の父親違いの弟だな)から「お母ちゃんをいじめたら許さん」と言われたこと(日頃からよほどそういう目に遭っているのだろう)。スズ子の手を握ったキヌの荒れた手(対照的にきれいなスズ子の手。年齢の違いだけではない)。困窮していただろうに、菊三郎からもらった時計を売らずに持ち続けていたこと。そしてそれをスズ子に託したこと。
そして、ツヤらが頑なにスズ子に秘密にしていたのは、うしろめたい気持ちがあったからなのかと想像できること。
様々なことが伝わって来た回だった。序盤の神回ではなかったか。