窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「ゴジラ-1.0」

題名ゴジラ-1.0(ゴジラ・マイナスワン)
脚本山崎貴
監督山崎貴
出演神木隆之介(敷島浩一、海軍航空隊の帰還兵)、浜辺美波(大石典子)、永谷咲笑(明子、戦災孤児)、安藤サクラ(太田澄子、敷島の隣人)、青木崇高(橘宗作、元・海軍航空隊の整備員)、佐々木蔵之介(秋津淸治、機雷除去用の特設掃海艇「新生丸」の艇長)、吉岡秀隆(野田健治、「新生丸」の乗組員で通称「ハカセ」)、山田裕貴(水島四郎、「新生丸」の乗組員で通称「坊や」)、田中美央(堀田辰雄、駆逐艦雪風」の元艦長)、遠藤雄弥(齋藤忠征)、飯田基祐(板垣昭夫、東洋バルーン社の係長)、阿南健治(市役所職員)、橋爪功(通りすがりの人)、他
公式サイト映画『ゴジラ-1.0』公式サイト
制作日本(2023年11月3日公開)
時間125分
劇場イオンシネマ港北NT(スクリーン10)

感想

とてもよい出来だ。今年最高の一本だ。いやつい数日前に見た作品もよかったけれども。一瞬も目を離す隙がなく最後までのめり込んだという点では、思い当たるものは少ない。

今回も豪華俳優陣だ。なにしろ、ゴジラに襲われて右往左往する群衆の中に橋爪功がいたのだ。橋爪功がモブだなんてなんという贅沢な使い方であろうか。

良いところはいろいろあげられる。怪獣が暴れまわるスペクタクルなシーンが迫力があった。監督インタビューによれば、せっかくCGで作るのだから寄ろうと思った、とのことだが、ゴジラがものすごく近い。だから迫力があるし、怖い。

人間ドラマもよく描けていた。敷島は特攻隊員だったが、機体が故障と嘘をついて大戸島の守備隊基地に不時着陸。そこへゴジラが出現。武器は零戦に搭載されている20ミリ砲しかなく、それを撃つよう橘から懇願されるが、恐怖で撃つことが出来ず、敷島と橘意外は全員死亡。帰還したら帰還したで、近所の澄子からは「あんたらがしっかりしていないから戦争に負けた、うちの子も死んだとののしられ……。その敷島が、典子を失って、自分の死と引き換えにゴジラを倒すことを決意する。その戦闘機「震電」を整備した橘は、出撃する敷島に向かって「生きろ」と言う……

ゴジラ迎撃の作戦立案をした野田健治が、この戦争は人間の命を軽視し過ぎた。だから今回の作戦では、一人も死なずに全員が生きて戻ることを目標にします、と言ったのはよかった。

その作戦に、やる気満々の水島を秋津は連れて行かない。ここは野田とも息がぴったりで、秋津が「駄目だ」と言うとすかさず野田が「その(ケガをした)腕では役に立たない」と言い放つ。これは「どうする家康」の秀忠に対する家康の態度を思い起こさせる。彼は戦争を知らないからダメなのではなく、知らないままでいいと。誰も死なないようにと言いつつ、出撃した人は全員死ぬ可能性もあると秋津も野田も思っていた。若い水島は生きて復興させなければいけないのだと。まあ結局水島も作戦に参加してくるのだけれども。「どうする家康」になぞらえていうなら、敷島は戦争の亡霊を引きずっていて、ここで死ななければ戦争は終わらないと思ったのだろう。生還したことで、吹っ切れているといいが。

震電の整備は橘でなければダメだと敷島が言い張ったのは何故だろう。大戸島の清算をするためには橘でないと、ということもあろうが、本来は敷島の役割はゴジラを誘導すること。特攻するつもりなのは内緒だ。しかし爆弾を積むわけだから、整備兵には協力してもらわないといけない。橘なら秘密を守ってくれる(彼は、自分が死ぬことに賛成するはずだから)ということか。その橘は「生きろ」と言うが。

ゴジラの破壊力はすさまじいが、残酷なシーンがない(というか、映らない)。ゴジラは人間をくわえるけれど、かみ砕いたりしないし、腕や首のちぎれた死体が映ることもない。血が飛び散ったりもしない。そういう意味では不快感なく見られる。

まあ、しかし、エンドロールが終わる時に、ドシ、ドシ、という足音が大きくなり、凄まじい叫び声がとどろくのだが、その音の良さ! 自分にゴジラが近づいて来たかのような恐怖感がある。あの音を聞いただけで、劇場で見て正解だと思った。

上映直前に座席の予約状況を確認したところ、売れていたのは5席。映画終了後、明るくなった時に場内を見たら、自分のほかには二人しかいなかった。明るくなる前に出て行った人がいたのかも知れないが、まだ一ヵ月なのにちょっと寂しい。来月も上映してくれていたら、もう一度くらいは見たいが。

監督

山崎貴VFXに強いことで知られる。過去作は「ALWAYS 三丁目の夕日'64」「永遠の0」「寄生獣」「DESTINY 鎌倉ものがたり」「アルキメデスの大戦」など。「寄生獣」もそうだったのか!