二本足の怪獣が多い
知的生命体である宇宙人は、人間と似た体格・外見で不思議はない。しかし、怪獣が皆二本足なのは、考えてみると不思議だ*1。他のシリーズ(ウルトラマン、ミラーマン、ゴジラ等)でもそうで、これはもちろん着ぐるみの中に人間が入る事情から必然的にそうなるわけだが、あれだけの体重を支えるには、二本足では難しいだろう。地球上の生命体は、二本足は熊やゴリラまで、四足でもきりんや象の大きさまでで、それより大きな生物は海の中にしかいない。
宇宙人の超能力の秘密
ウルトラセブンのシリーズは、宇宙人のみで怪獣が登場しないもの(第一話ほか)、怪獣のみで宇宙人の登場しないもの(第二話ほか)もあるにはあるが、一般に知力に勝る宇宙人と戦闘能力に勝る怪獣がセットになっている。これはなかなかよくできた設定だ。人間が狩猟の際に猟犬を連れて行くような感覚なのだろう。第三話では、ピット星人が地球防衛軍の基地に忍び込むなどの高度な作戦を実行し、エレキングはその巨体と腕力に物をいわせて暴れまわり、地球人をあわてさせた。
ところが、その宇宙人が、揃いも揃って変身能力を身につけていて、地球人にそっくりの容姿をして登場する。日本語もネイティブに話し、文化や生活習慣も完全に身につけているようである。こうした驚くべきコピー能力に加えて、テレポート(瞬間移動)を行なったり、巨大化したりと怪獣を上回る戦闘能力を披露することがある。巨大化してのウルトラセブンとの戦闘シーンという見せ場を作るためのドラマツルギーなんだろうが、せっかく設定がいいのだから、もう少し性格も描き分けてほしかった。
各話コメント
- #22「人間牧場」:私服のアンヌが魅力的。登場する人物、特に女性は服装や化粧がいかにも昭和40年代風で、あまり色気を感じないが、アンヌだけは別。今の基準で見てもセンスがいい。ブラコ星人のメディカルセンターへの侵入を簡単に許したのはあまりにもお粗末。また、怪獣を見てきゃあきゃあ騒ぐアンヌもいただけない。キリヤマのウルトラガンの一撃で簡単にやられる程度の相手なのだから、落ち着いて対処してほしい。ところで、ウルトラセブンが登場した時キリヤマ隊長が「セブンは土星へ行こうとしているんだ」と説明するが、なぜそれを知っている!? これは、キリヤマ隊長は実はダン=セブンであることを知っていたとするひとつの根拠である。
- #23「明日を捜せ」:占い師の安井が非常にいい味を出している。ともすればありきたりな話の展開を佳作にしたのは、彼の演技力に負うところが大。予言力を失い(商売のタネをなくして)普通の人間になったことを喜ぶラストはなかなか示唆的。しかし、助けを求めてきた安井の予言力を信じなかったのはいいとして、アパートに帰るように指示したあと、「君のはウルトラ警備隊がついている」と豪語しながら全く警備をしなかったのはあまりにも無責任である。実際、その日のうちに安井は誘拐されてしまったのだ。なにもウルトラ警備隊の隊員が直々でなくても、防衛軍の誰かが一緒にいてやることもできただろうに……
- #24「北へ還れ!」:とんでもない欠陥と、素晴らしいシーンが同居する問題作。ホーク3号が操縦不能になり、民間機と接触が避けられない事態になって、キリヤマ隊長は自爆を命じる。つまり、ホーク3号に乗るフルハシに死ねというわけだ。これは手に汗を握る話の展開である。爆発の時刻は刻一刻と迫ってくる。ところが、それなのにウルトラセブンは電子頭脳を狂わされたウインダムと遊んでいて、切迫感が全くない。それでも怪光線を発していた灯台を壊してホーク3号(および民間機)の操縦不能状態を解除するが、ホーク3号は目の前まできた民間機を寸前でかわしてすれ違い、しかるのちに自爆装置を止める。接触前に爆発しなかったら意味がないだろうが! どうしてこんなシナリオを誰もおかしいと思わず製作・放映してしまったんだろう。しかし、死が迫ったフルハシに母と話をさせ、フルハシの冗談に母子で笑い合うシーンは凄まじい。フルハシはあと数分後に自分は死ぬことを知っていて、しかしそれをおくびにも出さずに冗談を言う。母親はそうした事態を全く知らず、能天気に笑う。これほど恐ろしく素晴らしいシーンは、日本のテレビドラマの歴史に残る名場面なのではないか。「ディープ・インパクト」(1998年)という映画は、絶対にこの場面の流用だと僕は考えている。余談。フルハシの母が旅館で見ていたテレビ(相撲)では、柏戸が勝っていたようだ。
- #25「零下140度の対決」:ウルトラマンのカラータイマーのようなアキレス腱をセブンにも作りたかった(視聴率アップのため)……ということで製作されたらしいが、わざわざそんなことをしなくても、地球防衛軍にはセキュリティの概念がないし、モロボシ・ダンは生命線のウルトラアイをよく失くす。動力室をやられて基地は能力を失うが、予備電源のひとつやふたつの用意もないのか? ウルトラセブンは人間よりも寒さに弱いというが、零下100度では人間だって長くは生きられまい。それなのにキリヤマ隊長は、ポインターが動かなくなったと報告するダンに「歩いて帰って来い」などととんでもない指示を出すし、ダンも、さっさとセブンに変身して基地まで飛んでくればいいようなものを、本当に歩くし。しかし、無意識状態になった時に幻覚のように表れるポール星人はなかなかカッコ良かった。
- #26「超兵器R1号」:セブンをセブンたらしめる名作のひとつ。ダンの「血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」は名セリフだが、改めて見ると、その前のアンヌの「使わなくても超兵器があるだけで平和が守れるんだわ」が印象に残った。問題発言と言いたいが、こういう理屈で21世紀の今でも世界各国は核兵器を持つわけだ。それにしても、生物がいる・いないに関わらず、自分たちの都合で天体を一個吹っ飛ばしてしまう地球人の(あるいは、地球防衛軍の)傲慢さには背筋が凍る。
- #27「サイボーグ作戦」:冒頭でソガの後輩の野川隊員がフィアンセに「同じ防衛軍とはいっても、向こうはウルトラ警備隊のエリート、こっちはしがない通信担当……」とぼやく場面が印象的。防衛軍は必ずしも一枚岩ではなく、こうしたねたみやそねみもあることを匂わせているあたり、とても子供向けの番組とは思えない。
- #28「700キロを突っ走れ!」:冒頭でダンとアンヌがデートする場面が描かれる。仕事中にいちゃいちゃするのはいつものことだが、私服でデートするのはこれが初。しかし、そのためにわざわざ同じ時間にオフを取ったのか? #18で高所恐怖症であることを暴露したアマギが、今度は爆弾恐怖症であることを告白。よくそれでウルトラ警備隊が勤まるなぁ……。もっともこのエピソードでは、キリヤマ隊長の配慮でそれを克服するわけだが。スパイナーの実験を阻止しようとした連中の正体と動機が不明。恐竜戦車をやっつけただけでは、敵を壊滅させたことにはならないのではないかと思うが、そのあたりも不明。不明といえば、ラリーに紛れて運ぶのがなぜ名案なのかも不明。ラリーの出発点が防衛軍の基地で、ゴールが実験場ならわかるが、防衛軍主催のラリーじゃあるまいし……と、消化不良の回である。なお、ソガ隊員は射撃だけではなく、マンドリンの腕前も一流であることがわかる。
- #29「ひとりぼっちの地球人」:スーツ姿のソガ君に萌え。プロテ星人がいかに地球にやってきて、地球人として生活を始めたのかは謎だが、ニワ教授が宇宙人であることを知ってなお尊敬する一ノ宮、その一ノ宮は地球人を嫌い、プロテ星に行くことを計画していながら、プロテ星人の目的が地球侵略にあることを知った途端に命を賭けて地球を守る。セブンはプロテ星人に幻惑され、途中プロテ星人が抜け殻にならず最後まで実態として闘っていたらセブンは敵わなかったかも知れない、……等など、いかにもセブンらしいエピソード。
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*1:数少ない例外である四足の怪獣は、#20のギラドラス、#28の恐竜戦車、#32のリッガー、#23のガブラも四足か?