窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

TRICK-Troisieme partie-、エピソード3「絶対死なない老人ホーム」(第五話、第六話)

出演(ゲスト)

雑感

今回の話はなかなか面白かった。(以下、ネタばれあり)

死んだ者を生き返らせることも、壊れたものを元通りに修復することも可能だと称する男、赤地洋司との対決。

赤地は、どんなものでも元に戻すことが可能だといい、粉々に割った置物を箱に入れ、念じて取り出すと元通り、などいくつか実演してみせる。しかしなあ、タネはわからないけど、いったん箱に入れて、取り出したらほらこの通り、というのは、超能力ではなくて手品という。超能力なら箱に入れずに元に戻るところを見せてみろって。

で、この赤地の関与する老人ホームでは、誰も死なないという(死んでも赤地が生き返らせる)。それで入居希望者が殺到するが、入会金は最低10億。だからよほどの富豪でないと入れない。京貞子がここに入りたがるが、本当に入れて問題がないか、明日香が上田次郎のところに相談にきたのが始まり。

当初、僕は次のように考えた:

  • 手品で警察や上田、奈緒子らの目をごまかすことはできるかも知れないが、生活をしていれば、茶碗を欠いたりコップを割ったりすることは日常茶飯事だろう。ホームの入居者が赤地のところに「これ割っちゃったから、元に戻して」と頼みに来たら、どうするつもりなのだろう。
  • ホームの入居者は、いずれ死ぬだろう。ここに来れば死なないと思うからこそ法外な金額を支払っているのに、仲間が死んで行くのを見たら、怒るか訴えるかするのではないか。
  • ところがいくら金持ちでも元気な人は入居させず、瀕死の老人ばかり勧誘しているらしい。これはどうしたことか。

また、じゃあ実際に人を殺し、かつ、それを生き返らせましょうといって千田が猟銃で古川を撃ち、次に自分を撃つ。二人とも即死。そして赤地の能力でまず千田を生き返らせたところで矢部・菊池が登場。死んだ人間に触るな、救急車だといって赤地の蘇生術を中断させてしまう。病院へ運んだが千田は死亡。赤地は、邪魔が入らなければ自分が生き返らせたのに、もう間に合わないといって怒る。千田を殺したのは警察と上田・奈緒子らだと。

最初は設定の不備かと思ったが、そうではなさそうだ。結局、真相は次の通りであった:

  • この老人ホームは、長生きをしたい、永遠に生きたいと思う人のためにあるのではなかった。
  • 資産家が死ぬと莫大な相続税が発生し、時には家族が住んでいる家や土地を手放さないと払えないことがある。そこで、死んだ人を生きているように見せかけ、資産は家族が管理すれば、相続税は払わずに済む。いつまでも死ななくても不自然ではないように、「この老人ホームでは誰も死なない」という噂を意図的に流している。
  • 死にかけの老人、もしくは死んだ直後の老人を引きとり、替え玉を立てて、元気になったことをアピールする。
  • つまり、入居者の老人たちも、その家族も、みんなグルだったのだ。なるほど、これだけ共犯者がいれば、工作はたやすいだろう。
  • 今回は、理事長が副理事長を殺そうと企み、狂言自殺をするつもりのところを、猟銃にこっそり実弾を入れた。そのため副理事長は死亡。どういうサジェスチョンがあったにせよ、銃を自分に向けて撃ったのだから自殺で片がつくだろうと見込んだのだが、そこから足がつくことになった。

こうかと思うとそれを裏切る真相があり、わかってみれば当初矛盾だと思われたことがちゃんと説明できる。そういう点で、今回は話がよくできていたと思う。

ただし、ひとつ謎が残る。本物は死ぬが、死を隠して替え玉を立て、生きているように見せかけて相続税を払わない……ということは、死体を半永久的に隠さなければならない。その死体はどこにあるのだろう。いくら資産家で豪邸に住んでいるとはいえ、家の中に家族の死体を隠すのは、嫌がられるだろうから、ホームの中に死体の安置所があるのではないだろうか? 上田や奈緒子は、それを探すべきだった。それが見つかれば有無を言わせない証拠になるし、逆に、それが見つからなければ、何を言っても証拠としては弱いだろう。