フリーター坂本龍馬はなぜ信頼されたのか/龍馬伝-37「龍馬の妻」

雑感

NHK大河ドラマ龍馬伝」は、薩長同盟のあと、おりょうがノーブラで薩摩藩邸に駆けつける話に龍馬の結婚と続いて、真木よう子がなかなか好演しているせいもあり、まあまあ面白く見ている。お加尾(広末涼子)、お佐那(貫地谷しほり)、お元(蒼井優)、お登勢草刈民代)などとの絡みも克明に描かれていたが、要はこのドラマは龍馬の女性の交友関係を綴ったものなのだな。歴史ドラマじゃなくて。だからおりょうが頑なな態度をとりながらもどんどん龍馬に惹かれていく様子はよくわかったけど、西郷隆盛桂小五郎(木戸貫治)がなぜあんなに龍馬のことを信頼していたのかは全くわからない。

薩長同盟を成し遂げたのは坂本龍馬の手柄のように言われることがあるが、さすがにそれは言い過ぎとしても、それなりの役割を果たしたのは事実であろう。でも、よく考えてみると(考えなくても)非常に不思議なのだ。

たとえば、今のIT業界というのは、MicrosoftGoogleの名を出すまでもなく、アメリカ主導で進んでいて、広く使われてはいるけれど日本のサービスは空洞化している、これは産業的に植民地化されているようなものだ、これではいけない、日本も世界に通用するような独自技術を……みたいな話になったとする。で、まあ、通産省あたりが税金を使ってプロジェクトを起こす。しかし国のお偉いさんは何もワカットランから任せておいても何も進まない、ここはひとつ民間の力のある企業が手を結んで、というわけでソフトバンク楽天が合併を企画したとしよう。

いきなり孫さんと三木谷さんが会って交渉するというわけにもいかないだろうから、仲介役が必要だろうが、それは西和彦だとか山内博だとか、それなりの立場だったりそれなりの実績のある人間が務めるのだ。無職の人間や派遣社員がそんな大任を果たすなどとは考えられない。

たとえが適切かどうかわからないが、勝海舟大久保一翁などが通産省の次官クラスの人間だとすると、西郷隆盛とか桂小五郎ソフトバンク楽天の専務、常務クラスの人間だ。しかるに我らが坂本龍馬は無職のプータロー。かつての勤め先は土佐藩というまずまずの雄藩ではあったが下士だったのだから、NECの平社員を退職してフリーターをやっているようなもんだ。そんな人間をどうして重用するなどということがあるだろうか。

以下は僕の想像だが、勝海舟の一番弟子だったことから、まず幕府の内情に詳しかった。外様雄藩の薩摩・長州は、幕政に口をはさめる立場ではないため、内情に疎い。が、まかり間違えば一戦まじえることになるかも知れないと思えば、そうした情報はのどから手が出るほど欲しかっただろう。関ヶ原以来200年、何の進歩もせず古臭いままだった幕府の軍備がフランスの助力を得て最新鋭の装備に一新されたという情報も、龍馬からもたらされたのではないか。

さらに、アメリカ帰りのジョン万次郎(ドラマではチラとしか映らなかったが)と交流のあった龍馬は、アメリカの事情にもずば抜けて詳しかった。アメリカの科学技術のレベル、政治体制、日本をどうするつもりであるか、具体的に知っていた数少ない日本人だったはずだ。陸奥宗光などに言わせると、西郷や桂は単に徳川幕府はダメだというだけだが、坂本は身分制度を廃して民主主義国家にするためにはどうすればいいかという青写真を持っていたということになる。そうした稀有な人材だったからこそ、薩摩も長州も彼を信頼し、頼りにしたのだろう。「龍馬伝」ではそんなことはこれっぽっちも描かれていないけど。

さらに、桂が坂本に一目も二目も置くのは、若き日の剣術修業時代のことがあるのではないか。当時、江戸の三大道場と言われたのが「力の斎藤」こと斎藤弥九郎練兵館神道無念流)、「位の桃井」こと桃井春蔵士学館鏡新明智流)、「技の千葉」こと千葉定吉の千葉道場(北辰一刀流)だが、ほぼ同時期に桂小五郎武市半平太坂本龍馬がそれぞれの塾頭になっている。剣豪としてその名を江戸中にとどろかせた桂だが、同じ剣の達人として、武市や坂本のことを認めていたのではないかと思う。

昔は、御前試合で坂本に負けたから……と思っていたのだが、この御前試合はどうも後世の捏造らしいですな。