恋愛映画というよりは戦争映画なんだろうな……「一枚のめぐり逢い」

題名一枚のめぐり逢い(原題:The Lucky One)
原作ニコラス・スパークス
監督スコット・ヒックス
出演ザック・エフロン(ローガン・ティーボウ、元海兵隊員)、テイラー・シリング(べス・グリーン、シングルマザー)、ブライス・ダナー(エリー・グリーン、ベスの祖母)、ライリー・トーマス・スチュワート(ベン、ベスの息子)、ジェイ・R・ファーガソン(キース・クレイトン)、他
公式サイト映画『一枚のめぐり逢い』オフィシャルサイト
制作USA(2012年6月16日公開)
劇場新百合ヶ丘:ワーナー・マイカル・シネマズ

粗筋

ローガンはイラク戦争の帰還兵。親戚(姉?)の家に一時的にやっかいになるが、ファイティングゲームに怯えたり、朝起こしに来た子を投げ飛ばそうとしてしまったり、戦争のトラウマは心に深く突き刺さっている。

そして彼は、戦争で自分の命を救ってくれた女性を探す旅に出る。戦場に写真が落ちていて、それを拾おうとした途端に、今座っていた場所に爆弾が撃ちこまれ、間一髪で助かったため、写真に命を救われたことになる。

見つけた女性はべス・グリーン、シングルマザーで犬舎を経営していた。訪ねてきた理由をうまく説明できないでいると、就職希望と勘違いされ、結局、そこで働くことに。誠実な働きぶりに、ベスもベンも心を開いていくのだけど、別れた元オットのキースは気に入らない。どうも、ベスの方が愛想を尽かして別れたものの、キースの方は未練たっぷりということらしい。相手にされないのでローガンにも嫌がらせをする。

実はベスも結構なハラスメントをされているのだが、キースは警官、キースの父親は市会議員だかなんだかの、要は町の実力者で、逆らうのが難しいのだ。キースはことあるごとに、親権を取り上げるぞ、裁判になったら、この町の判事はみんなオレの味方だ、と息巻く。実際そういう側面もあるらしいので、黙り込むしかないという次第。

ローガンが、もともとベスを探していたという情報をつかんだキースは、そのことをベスに吹き込む。ベスの兄も海兵隊だがイラクで亡くなった。味方に撃たれたとも言われ、死の真相ははっきりしていない。ローガンの持つ写真は兄のものだった。その写真をローガンが持っているということは、案外、あいつがお兄さんを殺したんじゃないのか? というわけだ。

せっかくいい関係になりかけたが、これで疑心暗鬼になったベスはローガンを拒絶する。やっとベスを訪ねてきた理由を話し、信用してもらえたが、その写真が命を守るもの(The Lucky One)なら、それは兄の命を守るはずだった、と思うと、割り切れない。

最後、川に落ちたベンを助けるべくキースとローガンが向かい、ベンは助かるがキースは死んでしまう。

ベンに見せてもらった叔父さん(ベスの兄)の写真を見て、ローガンはそれが誰かを思い出す。自分はその死の真相を知っている、味方を庇って死んだので、決して無駄時にではなかった、と伝えて大団円。

感想

シンプルなラブ・ストーリーかと思ったが(そういう側面ももちろんあるが)、戦争映画だった。

まず冒頭の戦闘シーンで何人もの人間が(しかも極めてあっさりと)死んでいく。ローガンは助かるが、平和な祖国に戻ってきても、その時のトラウマから解放されない。当初は理解を示してくれた家族も、だんだん持て余すようになる。

ベスはベスで、戦地で死んだ兄のことを受け入れられずにいる。死体もなく、死んだ時の状況もはっきりしない。こういう人たちが、今のアメリカには大勢いるのだろう。日本人にとって戦争といえば太平洋戦争であり、イランもアフガンもベトナムもどこか人ごとだが、アメリカ人にとっては現在進行形なのだ。

予告編を見た時、亡くなった海兵隊員はベスの夫なのかと思った。だからシングルマザーになってしまったのかと。海兵隊員のローガンに惹かれたのは、同じ匂いを感じたからだろうと。それが兄という設定で驚いた。それは兄だろうが弟だろうが、死んだら悲しいだろうよ。でもいいトシして、どれだけブラコンやねん。

ローガンはキースの嫌がらせに屈するような人間ではなく、正論で撥ね返すが、キースのような性格の人は、正論で分がなければ搦め手でくるのは当然。そうした点に何の警戒心ももたなかったのは、恋愛に夢中になっていたからか、若さゆえか。僕は、誰かの貴重品をこっそりローガンの家に持ち込み、ローガンが盗んだとして逮捕するとか、そうしたことでもやるのかと思っていた。もともとベスを探していた点に関しては、事実だから嫌がらせの範疇には入らない。むしろその(大事な)ことを、いつまでも打ち明けなかったローガンが悪い。慌てて説明してわかってもらえたとしても、じゃあなぜ今まで黙っていたのか、訝しがられて当然だ。ちょっとこのあたりは解せない。

二言目にはベスに向かって「文句があるなら親権を取り上げるぞ」と脅しをかけるキースだが、物語後半で、ベスは「本気でベンを育てる気なんかないくせに!」と(初めて)言い返す。が、いざベンが危機に陥ると、自分の危険も顧みず助けに向かったのだから、ベンに対する愛情は本物だったのだろう。そして、最後にものすごくいい人になってしまったため、これまでのキースの理不尽に対して怒りの持って行き場がなく、もやもやが最後まで残ってしまった。

キースの父親も、ローガンに向かって「お前がキースを殺したんだ!!」ぐらい言っても良かったのだが、「孫を助けてくれてありがとう」と言う人格者。そういう設定もありなんだろうけど、キースは最後のぎゃふんと言われて終わらないと、視聴者としてはカタルシスが得られない。

まあ、それ以外は引き込まれて楽しく観ることができた。

ところで、戦地で命懸けで闘ってきた帰還兵に対し、周囲の人はもっとリスペクトしないものなんだろうか。最初にキースがローガンに絡んだ時、「あいつは海兵隊だぞ、相手が悪い。やめておけ」というような。ましてベスの兄は名誉の戦死をしているわけだから、チンピラ警官のキースごときががたがた言えるような相手ではないように思うのだが、ローガンが「元海兵隊だ」と言っても周囲の態度は何も変わらなかったことに拍子抜けした。まあ、その方が本当はいいのかも知れないけど。

今日の英語

  • ベスとローガンが結ばれたあとで。
    • Why did you come here?
    • To find you.

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