全くの期待外れで欲求不満に陥った。これは作品が悪いのではなく宣伝が悪い。作品自体は悪くなかったと思うが……
題名 | かぐや姫の物語 |
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原作 | 竹取物語 |
監督 | 高畑勲 |
声の出演 | 朝倉あき(かぐや姫)、高良健吾(捨丸)、地井武男(翁)、宮本信子(媼)、他 |
公式サイト | かぐや姫の物語 公式サイト |
制作 | 日本(2013年11月23日公開) |
劇場 | TOHOシネマズ ららぽーと横浜 |
雑感
原作の竹取物語ではかぐや姫が罪を犯して地球に遣わされたとあるけれど、どんな罪を犯したのかは記述がない。物語の焦点はそこにはないということなんだろうが、気になるのも事実。アニメにもジブリにもあまり興味はないのだが、本作は「姫の犯した罪と罰」(キャッチコピー)に切り込んだ作品だというので、興味を持ったのだ。
映画が始まり、いつまで経っても「竹取物語」をなぞっているだけで、一向に罪に触れない。さんざん経って、ようやく姫の正体に触れたと思ったらあっという間に話が流れ、ジ・エンドに。さんざん(予告で)期待させておいて、これはいったいなんだったんだと、観終ったあとは腹立ちしかなかった。
その後あれこれサイトを回って情報を集めてみると、そもそも「姫の犯した罪と罰」というキャッチは高畑監督が大反対していたのが鈴木プロデューサーの意向で決まってしまったものらしい。そしてこちら側の期待をいったん外して作品を思い返してみると、竹取物語のアニメ化作品としてはそれなりに良質だったのではと思い至った。はじめからそのように宣伝してくれれば、こんなにイラつくことはなかっただろう。
とはいえ、生活描写がかなりリアルな分、ファンタジーとの相性はよくない。姫が空を飛んだりするのも唐突だが、小金を得た翁が都に豪邸を建てるのはまあいいとしても、高貴な身分の方々と交流を得るのは全くリアリティがない。商売が繁盛してお金が貯まっていったなら、その過程で名が売れるということもあろうが……
姫を「高貴な姫にする」と決意した翁は、二言目には「姫の幸せしか考えていない」と口にするが、昔は明るかった姫が不幸せな顔をしていても一向に気にする様子がないことにも反発を感じるし、幼馴染の捨丸と再会し、「二人で逃げよう」という捨丸が既に妻子持ちであることにも幻滅を感じた(お前はいくつになって俺の妹だ、おれはお前を兄として守る、とでも言わせればよかったのに)。
などなど、どのあたりに感情移入をすればよいのか、最後まで不明なままであった。
大作は宣伝も盛んで、予告編に代表される宣伝と本編は全くの別作品である、というのはこれまで何度も痛い目に遭ってはいるが(だから観ようと思った作品はできるだけ事前に情報を入れないようにしているのだが)、本作のように予告編を見て観たくなった作品もあるわけで、難しいところである。宣伝をする人は、かんじんの作品を正しく理解し、正しいマーケティングをしてくださるよう切にお願いするしかない。
過去記事
- ゲド戦記(2006/08/10)
リンク
- ジブリ映画かぐや姫の物語が怖いと不評?罪とは○○!結末までネタバレ(ニュース徒然要チェック、2013/11/13)
粗筋に細かい間違いが多い。「それからも何回か、同じように砂金を見つける」……砂金を見つけたのは一回だけ。「またある日、光る竹きったら、中からそりゃもう立派な貴族用の着物や装飾品が!」……出てきたのは布です。「次の日、引っ越す三人」……次の日ではなくその場で。以下略。公開前に書かれたものだから仕方ないか。
- 映画「かぐや姫の物語」で解く『竹取物語』の謎。その1「身分の低さと結婚のルール」(エキレビ、2013/11/28)
- 映画「かぐや姫の物語」で解く『竹取物語』の謎。その2「姫はなぜ結婚を拒むのか」(エキレビ、2013/11/29)