観終ったあと、今年一番の映画を観ちゃったな〜としみじみ思った。余韻から覚めてみれば、別に「キャプテン・フィリップス」よりも「清須会議」よりも面白かったというわけではないのだけど、観ていて楽しかったし観終わったあとは心地よい満足感が得られた。これ以上何を望むことがあろうか? いい映画を観られて良かった。
題名 | 武士の献立 |
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監督 | 朝原雄三 |
出演 | 夏川結衣(お貞の方/真如院、加賀藩5代藩主・前田吉徳の側室)、ふせえり(お貞の方の侍女)、西田敏行(舟木伝内、加賀藩御台所御用役)、余貴美子(舟木満、伝内の妻)、高良健吾(舟木安信、伝内の次男)、上戸彩(舟木春、安信の妻)、柄本佑(今井定之進、安信の親友)、成海璃子(今井佐代、定之進の妻・安信の幼馴染)、緒形直人(大槻伝蔵、吉徳の側近にして藩政改革派)、鹿賀丈史(前田土佐守直躬、伝蔵と対立する保守派の重臣)、宮川一朗太(安信の上司)、笹野高史(商人)、他 |
公式サイト | 映画『武士の献立』12月14日(土)全国ロードショー |
制作 | 日本(2013年12月14日公開) |
劇場 | イオンシネマ港北NT |
内容紹介
舟木伝内は料理を以て藩に仕える御台所御用役で、料理の腕は藩で一、二を争う。跡継ぎの長男も仕事熱心で腕は確か。舟木家は安泰と思われたが、長男が流行病にかかってコロッと亡くなってしまう。
次男坊の安信は、剣の道に精進し、頭角を現わしつつある。安信の通う剣道場の娘・佐代とは幼馴染であり、恋仲であった。佐代には男の兄弟がなく、彼女が婿を取って跡を継がねばならない。剣の腕が認められれば佐代の婿になるも夢ではないと、安信はさらに必死に腕を磨く。そんな矢先に兄が死に、自分が舟木家を継がねばならない立場になってしまう。当然、婿入りは不可能。佐代は定之進を婿に迎える。
安信は、父の命に従い料理の修業を始めるが、もともと武士は剣を以て仕えるもの、料理などは女の仕事と卑下する気持ちが抜けないから、修行に身が入らない。従って腕が上がらない。その上、父・伝内は江戸に単身赴任することになってしまった。
お貞の方付の女中・春は、料理の腕はぴか一。もともとは江戸の著名な料理店の娘だが、江戸屋敷に奉公に出た矢先に店が火事に見舞われ、家族を失い天涯孤独の身の上となってしまう。そんな春を案じた貞は親代わりとなって春の面倒を看る。料理の腕は並ぶ者がないが、貞に甘やかされ過ぎたせいか? 勝気な性格で、一度は嫁に行くが一年経たず離縁されてしまう。もう嫁に行かず一生貞に仕えるつもりでいたが、春の料理の腕を認めた伝内が、ぜひ安信の嫁にと強引に頼み込む……
雑感
「武士の家計簿」と同系統の話かと思ったが、同系統ではあるのだろうが、ずっと面白く(コミカルで笑える場面が何箇所もあり)、ずっと深い(時代の変節点にいることを感じさせられる)、そして加賀料理を目で楽しむことができる。よくできた映画である。
前田吉徳は元禄3年(1690年)生まれ、家督を継いだのは1723年の時で、徳川将軍でいうと吉宗の時代。武士として剣の腕前を認められたいという気持ちもわかるし、もう剣の腕がどうこういう時代ではないんだろうということもわかる。それは観客から見ればわかるが、この時代の人にとってはどうであろう。しかし結局、安信の料理は空腹を満たすだけでなく、前田土佐守直躬の心を動かすこともできたのだ。それを、最後に登場人物が悟るところがいい。
安信と春では春の方がずっと料理の腕は上なのに、春がお役目につけないことに見ているこちらの方がイライラするが、当の春はどこ吹く風、少しでも旦那様の腕をあげようと奮闘する姿が健気だ。安信も、興味がないだけで資質がないわけではないのだろう。春の作る料理のおいしさは素直に認めるところは立派。佐代に未練を残しつつも、だんだん春の言うことを聞くようになっていくところがいい。
加賀料理がなぜ大名料理と呼ばれているのか、その理由がわかった。加賀は御三家につく家柄だが、だからこそ徳川は警戒し、何かが起きたらすぐにでも取り潰そうと狙っている。そのため定期的に幕府のおえらいサンを招待して饗応料理を振る舞うことは加賀藩にとって非常に重要であった、ということらしい。
過去記事
- こういう映画もあるんだな「武士の家計簿」(2010/12/26)