窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

強い毒のある作品。「渇き。」

題名渇き。【TCX】
原作深町秋生果てしなき渇き
監督中島哲也
出演小松菜奈(加奈子)、役所広司藤島昭和、加奈子の父/元刑事)、黒沢あすか(桐子、加奈子の母)、星野仁(緒形、加奈子の元彼)、清水尋也(ボク、加奈子の中学の同級生)、橋本愛(森下、加奈子の高校の同級生)、二階堂ふみ(遠藤、加奈子の中学の同級生)、森川葵(長野)、中谷美紀(東里恵、加奈子の中学時代の担任)、妻夫木聡(浅井、刑事)、オダギリジョー(愛川、刑事)、高杉真宙(松永泰博、不良グループのリーダー/加奈子に片思い)、青木崇高(咲山、石丸組若頭)、國村隼(辻村、神経科医師)、康芳夫(チョウ、売春組織の元締め)、他
公式サイト映画『渇き。』公式サイト
制作日本(2014年6月27日公開)
時間118分
劇場TOHOシネマズ日本橋(スクリーン7/404席)

雑感

予告編から想像したのよりもはるかに強烈な作品だった。

映画としての出来は必ずしも悪くない。役者はみな熱演だったし、ものすごくパッションの高い作品だ。それだけに観ているこちら側も相当な影響を受ける。なまじTCXなんかで観てしまったから、なおさら。

なにしろ登場人物に誰一人として共感できない。キャッチコピーは「愛する娘は、バケモノでした」になっているけど、娘どころか、誰も彼も普通ではない。強いて言えば、最初に巻き込まれてしまった加奈子にだけは、共感はできないけど同情はできるかな……。

観終わった後はしばし呆然。続けてもう一本観るつもりだったが、その気はなくなった。

その後ネットで感想を見ていると毀誉褒貶かまびすしく、ついに公式サイトに中島監督が声明を出す始末である。確かにすごい作品であり、生理的に受け付けられない人もいるだろうし、ここまでとは思わず不用意に観てしまい、不快感を感じた人も少なからずいるだろう。

しかし、映画を(劇場で)観るというのはそういうこと(そういうこともあり得るということを受け入れること)だと思うので、それを以て「公開禁止にしろ」みたいなのはちょっと不当な批判という気がする。

また、ストーリーがわかりにくいことも指摘されていて、確かにわかりやすいとはいえず、原作はこうだったとか、原作の改変(改悪?)された箇所をいちいち指摘する人もいる。この点も、すべての映画がスッキリとわかりやすくあるべきだとは思っていなくて、本作などは、主人公の壊れっぷり、登場人物の感情と感情のぶつかり合いが表現されていることが重要であり、それは表現されているから(少々過剰なほどに)、それでいいんだと思う。

とはいえ、強い毒素があるのも事実であり、僕もかなり精神をやられてしまって、それから約一週間、次の映画を観に行く気が起きないでいる。だってこんな強烈な作品を観てしまったら、甘ったるいハートウォーミングなドラマとか恋愛ものとか観る気にはなれないし、なまじなサスペンスやアクションもインパクトが薄いのではないかという気がするし。こういう時は「女子ーズ」のような作品が毒消しには最適なのだが。

配役

  • 予告編ではニコニコした妻夫木君はいい人なのかと思った。主人公をはじめ、感情的になる人が多い中で彼は常に微笑みを絶やさない。が、その態度が途中から鼻につくようになり、最後は気味が悪くなる。あの笑い方とキャンディーでそういう人物を演じてしまうとは、今さらながら妻夫木の演技力に感心してしまった。
  • 中島哲也は「嫌われ松子の一生」「告白」の監督。そのせいか、中谷美紀黒沢あすか橋本愛など、過去の作品での印象的な役者が参加しているのが目につく。と思ったけど三人だけか。

(2014年7月8日 記)

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