ネタバレあり。
題名 | イエスタデイ(Yesterday)【TCX】 |
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監督 | ダニー・ボイル |
出演 | ヒメーシュ・パテル(ジャック・マリック、売れないミュージシャン)、リリー・ジェームズ(エリー・アップルトン、ジャックの幼馴染・教師)、ジョエル・フライ(ロッキー、ジャックのローディ)、ケイト・マッキノン(デブラ・ハマー、やり手マネージャー)、エド・シーラン(本人役)、ロバート・カーライル(ジョン・レノン)、他 |
公式サイト | 映画『イエスタデイ』公式サイト |
制作 | イギリス(2019年10月11日日本公開) |
時間 | 116分 |
劇場 | TOHOシネマズ日比谷(スクリーン5) |
概要
- ジャックはミュージシャンを目指しクラブで歌ったり自主コンサートを開いたりしているが、スーパーのバイトでやっと食つないでいるのが実情。幼馴染のエリーはジャックの才能を信じ、運転手兼マネージャーとして献身的に応援するが、見通しは暗い。暗いといえば、エリーはジャックのことが好きで結婚したいと思っているが、ジャックはエリーを異性としては見ていない。あるいは、口に出せないだけなのか?
- ある事故をきっかけに世の中が変わる。世界中の誰もビートルズのことを知らないのだ。ビートルズの曲を歌って聞かせると、「名曲ね!」「いつ作ったの!?」などと言われるだけ。ネットで検索しても何も出て来ない。そこでビートルズの曲をコンサートで歌ったり自主制作CDを作成して配ったりしてみたが、やはりパッとしない。こんなに名曲なのに、名曲だとわかってくれない、と悩み、曲が良くても所詮自分はダメなのか、と落ち込む。
- そんな矢先に彼のことを知ったエド・シーランがロシアへのツアーの前座としてジャックを使うことに。そのツアーでは Back in the USSR を歌って大ウケ。エドが(ふざけて)どちらの曲がいいか勝負しようと持ち掛けるとジャックは The Long and Winding Roadを歌って周囲を打ちのめす。エドは「いつか誰かに抜かれると思ったけど」と絶賛。以後ジャックはスーパースターの道を歩いていく……
ハイライト
世界で唯一ジャックの事情を知る老夫婦から教えられた住所に従って、リバプールの片田舎の家をジャックが訪ねると、顔を出したのはジョン・レノンだった! この世界のジョンは、歌手にならず、だから暗殺されることもなく、78歳まで元気で生きていたのだ。ジャックは感極まって「よくぞ78まで……」と呟くが、これは自分も(そして恐らく観客も)同じだ。
まさかこの歳になって生きているジョンに会えるとは思わなかった。たとえそれが現実世界でなく、スクリーンの向こうでもいい、ジョンが生きていてくれれば。このシーンは、何度思い返しても泣けてきてしまう(今もこの文章を泣きながら書いている)。
雑感
- 映画そのものは面白かったが、ジャックはビートルズをただ有名だから知っているだけで、ビートルズのことを何もワカッテイナイし、リスペクトもしていないようだ。それが残念だったが、これはビートルズファンが、「そうじゃない!」と突っ込みを入れられるように、わざとそう作ったのかも知れない。
- ビートルズの曲はデビューから解散までの8年間で大きな変貌を遂げているが、この変化には意味がある。むろん、彼ら自身の演奏技術の上達や、演奏機材・録音技術の向上といった世の中の発展に応じた変化もある。だが、それだけではない。
- 最初は単純な歌詞、ポップな曲調でストレートにファンの心をつかむべきなのだ。つまり、ひたすら Please Please Me や She Loves You や I Wanna Hold Your Hand を歌うべきだった。Hey Jude のような曲を観客が聴いてくれるのは「ビートルズ」の曲だからだ。無名の新人があんな長いだけの退屈な曲を歌ったところで清聴してくれるわけがないのだ。
- ましてジャックはソロ(One man band)だ。一人で演奏するにしろ、バックの協力を仰ぐにしろ、ビートルズと同じことはできない。だから単に自分の好きな曲ではなく、どんな曲なら今の自分が歌ってウケるか、慎重の上にも慎重に検討を重ねる必要があった。
- しかし、それでも、ビートルズのほとんどの曲を、ジャックはギターかピアノで演奏してしまう。売れない歌手(いや、ただのアマチュアか?)でも、現代では、この程度の演奏技術は持っているのだ。それはすごいことだ。
今日の英語
- You made 78.(よく78まで)
- アーティスト:ヒメーシュ・パテル
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2019/10/02
- メディア: CD
(2019年11月29日 記)