監督も主演の役者も音楽の造詣は深いはずなのに、なぜこんなに音楽を冒涜した作品を作るのか。
題名 | グランド・ピアノ 狙われた黒鍵(Grand Piano) |
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監督 | エウヘニオ・ミラ |
出演 | イライジャ・ウッド(トム・セルズニック、ピアニスト)、ケリー・ビシェ(エマ・セルズニック、トムの妻/人気女優)、ジョン・キューザック(スナイパー)、タムシン・エガートン(アシュリー、エマの知人)、アレン・リーチ(ウェイン、アシュリーの夫)、他 |
公式サイト | 映画『グランドピアノ〜狙われた黒鍵〜』オフィシャルサイト |
制作 | スペイン、USA(2014年3月8日日本公開) |
時間 | 91分 |
劇場 | 新宿シネマカリテ |
内容紹介
トム・セルズニックは、かつて天才ピアニストとして脚光を浴びていたが、演奏中に大きなミスをし、ステージ恐怖症に陥ったため、以後公演を控えていた。が、人気女優の妻の励ましもあり、恩師の追悼公演で5年ぶりの復帰を決意。妻ともども、再び世間の注目を集めることになる。
演奏会当日、演奏する予定のない楽譜が用意されていた。それは5年前に致命的なミスをした曲「ラ・シンケッテ」だった。誰かの嫌がらせか? トムはその楽譜をゴミ箱に投げ捨てる。が、演奏予定の曲の楽譜を開くと、「一音でも間違えたら殺す」との脅迫の言葉が記されていた。
「ラ・シンケッテ」はトムの恩師パトリックが作曲した難曲で、弾きこなせる人は世界に二人しかいないと言われていた。一人は作曲者であるパトリック、もう一人はパトリックの愛弟子であるトム・セルズニック。パトリックが死んだ今、「ラ・シンケッテ」が弾ける人はトムしかいないのだが……というのがひとつのポイント。
追悼公演でトムが弾いたピアノは、ベーゼンドルファー社製の至高の名器インペリアル。これは通常のピアノにさらに低音部に1オクターブ追加したもので、97鍵ある。パトリックの遺品で非常に高価なもの。この楽器がもう一つのポイント。
雑感
脅迫者はトムにインカムをつけさせ、演奏中も耳元であれこれ指示を飛ばしてくる。これが猛烈に腹が立った。演奏が始まったら「音楽の時間」に没頭しなければいい演奏ができるわけがない。ましてステージ恐怖症に陥るような大きなミスをした「ラ・シンケッテ」であれば、なおさら集中しなければいけないはずなのに、うるさく指示をしてくるだけでなく、なんとくだらないおしゃべりにも付き合わさせるのである。それでいて、「集中しろ」「普段通り振る舞え」「何かあったと絶対に周囲に気づかれるな」ってアンタ……
不安に駆られたトムは、オーケストラの演奏パートはピアノの演奏がないのを幸い、勝手に舞台を降りてしまい、妻の無事を確認しようとしたり、誰かに助けを求められないか四苦八苦する。そして、ピアノのパートが始まる直前にまた舞台に駆けつけるという早業を見せるのだが、そんなことをやれば(それだけで)誰が見たっておかしいつーの。
「ラ・シンケッテ」は監督のエウヘニオ・ミラが作曲したものらしい。またトム役のイライジャ・ウッドは演奏のシーンで、エキストラを使わずに自分で弾き通したところもあったらしい。つまり音楽の素人ではないのだが、「いやぁ、演奏中に話しかけられたら、まともなピアノは弾けませんよ」とは思わなかったのだろうか。それが不思議である。
音楽ミステリーというなら、もっと音楽そのものを大事にしてほしい。観るまでは結構期待していただけに、ガッカリ感も大きかった。
今日の英語
- The hole is packed.(満員ですよ)
- 「どこに連れて行けばいいというんだ。倉庫か!」というセリフでwarehouseと言っていた。うーん、warehouseなんてそうそう使う言葉ではないと思っていたが、この単語を知ってから、やけに耳にする気がする。「知っている単語は聞き取れる」ということか。