あらすじ
十兵衛らが越前へ移って二年、十兵衛は禄は食まず、近所の子に読み書きを教えて口に糊する生活を送っていた。
将軍・足利義輝は、近江に身を寄せていたが、三好長慶と和睦し、5年ぶりに京へ戻った。そして諸大名に上洛を命じたが、応じた大名は少なかった。朝倉義景も、火中の栗を拾いたくないといい、自分の代わりに十兵衛に上洛を命ずる。将軍にお目通りがかなうと張り切る十兵衛に、さらに嬉しい知らせが。煕子が子を宿したのだ。
さて、京では、義輝に会うのは9年ぶり、松永久秀に会うのは11年ぶりである。義輝が能を見に行くのに同道を命じられ、身に余る光栄と思い緊張の中にも嬉しさを隠せない十兵衛であったが、実は将軍はすっかり変わっていた。京へ戻ったといっても実権は三好が握っている。諦念にとらわれ、能を見るくらいしかやることがないのだ。
既に斎藤高政(義龍)は上洛しており、間もなく織田信長も上洛してくるとのことだが、高政が京で信長暗殺を画策しているとの噂が耳に入った。十兵衛は、将軍に伝えて高政を止めてもらおうと細川藤孝に言うが、将軍にそんな力はない。結局、松永久秀に頼んで事なきを得たが……
高政は十兵衛を呼びつけ、自分についていればいい暮らしができるのに今は浪人暮らしかといい、自分は尾張を飲み込んで美濃を大きく豊かな国にする、だから自分を扶けろと改めて口説く。が、十兵衛は冷たく断わる。
信長は義輝に、せっかく尾張を平定したのに今川が狙ってくる、これ以上戦はしたくないので何とかしてほしいと願い出る。義輝は、義元よりも上の官位を授ける、それでも駄目なら相伴衆になれ、そうすれば今川は手出しができないだろうという。そんな将軍に失望した信長は、松永に、尾張と摂津を交換しないかと持ち掛ける。
登場人物の満年齢(1558年)
氏名 | 誕生日後の満年齢 | 役者の年齢 |
---|---|---|
明智十兵衛 | 30 | 42 |
煕子 | 28 | 32 |
織田信長 | 24 | 27 |
織田信勝 | 18 | 31 |
朝倉義景 | 25 | 49 |
斎藤高政 | 31 | 44 |
細川藤孝 | 24 | 43 |
足利義輝 | 22 | 38 |
三好長慶 | 36 | 65 |
松永久秀 | 50 | 61 |
今日の十兵衛&藤孝
「(信長殿は)やすやすと死なせたくはないお方です」
雑感
信勝が死んだことを知った土田御前は嘆き悲しみ、信長を激しく非難する。が、もともと信長を殺そうとしたのは信勝で、返り討ちに合っただけだし、信勝が信長を殺そうとしたことを知らないはずがない、むしろ焚きつけた張本人ではないかと思う。だから逆恨みもいいところだ。しかし、それはそれとして、壇れいはいい声しているな。
朝倉義景が京に行きたくない、というが、そう考えたのは義景だけではなかったのでそこはわかるとして、名代として遣わすのが身内でも家臣でもないただの浪人という点で、さすがに将軍家を軽んじ過ぎではと思う。十兵衛は辞退すべきと思うが、あの義輝さまに会えるという気持ちが勝ったのだろう。最初の喜び、憧れ……的な気持ちから、だんだんと、あれ、この人は自分が思っているような人ではないのでは、を気付いて行く変化が今回の見どころ。「将軍」の名はどんどん形骸化しているのだ。
十兵衛は子供たちに読み書きを教え、それは一応評判はよいのだが、いったいこれでいくらになるのだろうか、いや、そもそも授業料を徴収しているのだろうか。(お金を持っている)良家の子女なら、こんな得体の知れない浪人に習おうとは思わないだろうし。なぜ士官しないのかな。
煕子が十兵衛に、ややこができました、と告げるシーン。時代劇ではよくあるシーンだが、今の時代のように検査薬があるわけでなし、子が出来たことをどうやって知るのだろう。しかも経産婦の牧に相談もせず……。
高政の十兵衛への未練がすごい。父を討ち弟を殺し、一国の長になってみたものの、信頼できる者がまわりに誰もいないのだろう。はっきりと自分に意見を言う十兵衛は貴重なのだ。しかし、これを別れた女に復縁を迫る男、だと思って見ると、滑稽というか、粘着で気持ち悪いというか。
その高政は、まさかのナレ死。この二年後に死ぬのだそうだ。
信長が義輝に願いことを申し出るが、その裁定を聞いて「ダメだこりゃ」という顔をしたのが面白かった。
(2020/6/3 記)