窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(17):岡山大空襲

第四週「1943-1945」(火)

放送日

  • 2021年11月23日

概要

安子が里帰り。ひさは張り切って用意したお汁粉をるいに食べさせる。しかし、心なしか元気がない、というより一段と歳を取ったようだ。それでも小しずは、あんな楽しそうなばあちゃんを見るのは久しぶりだという。おじいちゃんが亡くなってからずっとふさぎこんでいたと。そして、安子が生まれた日のことを語る。おじいちゃんが紅白餅を作り、ばあちゃんが羽織を着て近所に配り、挨拶に来た近所の人を次々と家にあげて大宴会で……しあわせな一日だったと。

帰り道、きぬと会う。きぬは挺身隊に入って忙しくしていたようだが、このたび上の姉の嫁ぎ先の農家に、両親とともに疎開することになった。

3月10日、ラジオが東京大空襲を告げる。ナレが、その後大阪も爆撃され、さらに地方都市にも被害が広がっていく。

吉兵衛が、疎開する人の家財道具を二束三文で買い叩いたと上機嫌。戦争が終わったら高く売るのだと。清子が諫めても聞く耳を持たない。ついに吉右衛門から「お前は阿漕なケチべえだ」とまで言われる始末。

その夜――(6月29日)、爆発の音で目を覚ます安子。岡山の街も空襲の標的にされたのだ。るいを抱き、稔の写真を持って逃げる安子。ふと見上げると岡山城が燃えている。金太は小しずとひさを防空壕に避難させると、消化のために街に戻る。吉右衛門は母親とはぐれてしまう。燃え崩れる家の下敷きになる吉右衛門だったが、寸でのところで吉兵衛に助け出される。吉兵衛は死亡。

安子、るい、千吉、美登里はからくも難を逃れる。翌朝、るいを美登里に託して家族の安否を確認に商店街に戻った安子は、放心状態の父親を発見。ひさと小しずが避難した防空壕焼夷弾で焼かれてしまったのだと。自分がここで待っていろと言ったから。自分が二人を殺した――

最後のひさ、小しず、安子、るい(女四代)

小しず「きをつけて」
ひさ「るいちゃん、また来られえ」
小しず「ほんなら、またね」
ひさ「またね」
安子「またね」

最後の吉兵衛、清子、吉右衛門

吉兵衛「大漁じゃ大漁じゃ、煙草屋のばあさんとこも疎開じゃ、家財道具を二束三文で買い叩いたった。戦争が終わったら高う売れるで」
清子「あんた、もうやめておくれやす。こないな、うちだけよかったらええみたいなこと」
吉兵衛「きれいごとを言うな。気に入らんのじゃったら里へ帰れ」
吉右衛門「そねんしよ、お母ちゃん。僕と二人で京都のお母ちゃんの里へ帰ろうえ」
吉兵衛「なにを言うなら吉右衛門。お父ちゃんはおめえのために」
吉右衛門「あんたはお父ちゃんなんかじゃねえ、阿漕なケチべえじゃ」

最後の金太、ひさ、小しず

金太「その防空壕へ入れ」
小しず「金太さんは?」
金太「火消しじゃ」
小しず「気いつけてね」
金太「大丈夫じゃ、待っとけ。お母ちゃん、待っとれよ」

雑感

ついに岡山大空襲

一話を見た時は舞台がどこだかわからなかった(気にしていなかった)が、岡山だと知った時に嫌な予感がした。岡山も大空襲があったはずで、この登場人物が大きな被害に遭ったりするのかしらと訝しんだからだ。その予感が当たってしまった格好である。

安子の実家は近所なのだから、頻繁に行き来をしてもよさそうだが、嫁の家族は気軽に雉真の門はくぐれないし、安子も立場上、そうそう気軽には家に帰れなかったのだろう。久しぶりの帰省だったと思われる(まさか嫁入り後初めて? さすがにそれはないか?)。アバンの前に帰省の様子が描かれ、アバン後は別のエピソードになるかと思ったら、お別れのシーンだたので、ちょっと長いな、とはチラとは思ったが、まさかこれが安子・るいと小しず・ひさとの最後になるとは。

小しずが回想したのは、橘家でもっとも幸せだった日。その直後に悲惨な状況を描くとは、脚本家は鬼畜だ(褒めてます)。

それにしても知っている人が大勢死んだ。吉右衛門は清子と再会できただろうか。きぬは空襲の前に疎開できたのだろうか。疎開先は被害に遭わなかったか。

天才子役(0歳児)出現

小しずが抱いているうちにるいが泣き出し、「お母さんがいいの?」と言って安子に渡したら、すぐに泣き止んでけろっとした顔をしていたので、天才子役が出現したと驚いた。西田尚美さんのtweetによると、これは偶然ではなかったようだ。

萌音ちゃん撮影じゃない時も、るいを抱っこしていたり、おんぶしたりしていたから、昨日のあのシーンでるいが泣いた時、アドリブで安子に預けたらピタリ泣き止んだ。本当にお母さんみたいだった。その後も金太さん来た時にまたるいが泣いて、皆アドリブ交えながら繋げた。とてもとても幸せなシーン。

吉兵衛は阿漕か

商売なのだから、阿漕というわけではない、という意見を散見した。疎開する人の家財道具を買い取るのはいいと思う。売る側にとっては運べるものは限られる上、少しでもお金がほしいから。ただし買う側にすれば、場所も取るし必ず売れるとは限らないわけで、高くは引き取れない。ただし吉兵衛があんなに喜んでいたということは、彼が考える「相場」よりかなり安く仕入れられたということだろう。そしてそれを「買い叩いてやった」と嬉しそうに話していた。そういうところだ。恐らく「うちが買わなきゃどうせ捨てるだけ、一銭も入らないんですよ」とかなんとか言ったのではないか。たくさんは払えません、これが精いっぱいなんです、という価格を提示していたら、感謝されこそすれ、恨まれることはなかっただろう。

そして吉兵衛の態度に対する反発は、恐らく奥さんや子供に向けられていたに違いない。陰口程度ならまだしも、陰湿ないじめなどもあったのではないか。衣料品が配給になる前に吉兵衛が買い占めて高く売ろうとしたことを近所から非難された時、吉右衛門はもう何も言わず、冷ややかな目で見ているだけだった。おや、今日は父を諫めないな、と思っていたが、この時既に、何を言っても無駄だと諦めていたのだろうか。

最後の言葉

金太も吉右衛門も、最後に妻や母に、父に投げかけた言葉を、生涯悔い続けることになるのだろう。

その他

  • きぬが「上の姉の……」と言っていたということは、三人姉妹だったのかな。四人以上いたら「一番上の……」と言っただろうから。そして上の二人は嫁いでいて、きぬだけが独身だったのだな。お年頃だけど、若い男はどこにもいないからねえ。
  • 安子が燃える岡山城を見上げる演出はよかった。被害の大きさを一目で実感させられる。
  • 「あかにし」の看板に「朝丘町」と記されていた。これはどこなのか探したが、架空の町のようだ。


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