窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(18):終戦

第四週「1943-1945」(水)

放送日

  • 2021年11月24日

概要

雉真の家屋は焼け残った。金太は雉真の家で寝ているが、心と身体をやられてしまい、起き上がることも、喋ることもできない。安子は千吉に、この家で寝泊まりさせてもらえることに感謝の意を示すと、千吉は、「礼なんぞいらん。それより安子さん、あんたも少し休みなさい」と言うが「動いとる方が気が紛れますから……」

1945年8月15日正午、ラジオが玉音放送を流す。美都里は「どういうことですか?」と千吉に問う。「戦争が終わった。日本は負けたんじゃ」「じゃあ稔も勇も帰ってくるんですか?」

たみ(家政婦)らの顔が見えない。空襲のあと、家に帰したのだろう。安子が父の看病と家族の分の買い出しを担当し、美都里はるいの世話を買って出る。ラジオから天気予報が流れてくる。千吉は、少しずつ戻ってくると喜ぶ。

闇市(恐らく)で安子は小豆を見つけ、買ってくる。金太に小豆を買ってきたことを話し、あんこの作り方を乞うが、金太は答えない。表情も変わらない。心を閉ざしたままだ。

安子は見様見真似で小豆を煮る。おいしうなれ、おいしうなれと唱えながら。そうして作ったおはぎを金太に見せ、試食を頼むが、金太はその皿を払いのける。「お父さん!」と安子は怒りを爆発させるが、その一瞬あとには「無理強いしてごめんなさい」と謝り、雑巾を取りに台所へ戻る。台所で安子はこらえきれず泣き出す。安子もいっぱいいっぱいなのだ。

ひとしきり泣いた後、気を取り直し、雑巾を持って金太の部屋へ行くと、金太がいない。外は台風が近づいてきており、大雨だ。安子は父を探しに家を出、朝丘町までいくと、金太がたちばなの店のあとの瓦礫を、傘もささずに掘り返している。そして地面の下から小さな缶を取り出す。「砂糖じゃ。配給を少しずつよけておいたんじゃ」と。安子が作ったおはぎは食えたもんじゃない、それは砂糖を使っていないからだ。あんなまずいおはぎを供えたのでは、小しずも安心して成仏できない、と……。その目の奥はかすかに光っていた。

雑感

おはぎに気持ちを込める

今日は金太の再生の物語。岡山大空襲から三ヵ月以上、安子が何を言っても反応しなかった金太だが、餡子を口にして何かが変わった。おはぎに手を出す時、手がぶるぶる震えていたから、確かに具合は悪かったのだろう。そしてただでさえ安子は餡作りは素人だし、砂糖もないのでは、おいしいものが作れないのも致し方ないが、安子が、祖父や父が毎日そうしてきたように「おいしうなあれ、おいしうなあれ」と心を込めて作った餡は、父の心を動かしたのだ。

甲本雅裕の、死んだように表情を変えないところから、目の奥に光を宿すところまでの演技が見事。上白石萌音も、生まれて初めて(少なくともドラマの中では)怒り、そのすぐ後に怒りを収めるなど、緊張の糸が今にも切れそうな演技が見事。

広島の事件を飛ばした

岡山大空襲をあれだけ尺を取って描いたので、隣県の原爆事件は当然描かれると思ったが、一気に終戦まで持って行った。確かに、戦争そのものを描くことが目的のドラマではないので、これで正解だ。本作は、取捨選択が非常にメリハリがあって、予想を裏切られることも一度ならずだが、結果的にはなるほどと思わされる。

美都里は安子をどう思っているか

美都里が子守を買って出るシーンについて、安子からるいを取り上げようとしているのではないか、と感じた人がいたらしい。確かに、ちょっと気になるシーンではある。それは、美都里がすっかりいい人になってしまったから。何か裏があるのでは? と気になってしまうのだ。

だが冷静に考えて、たみらに暇を与えたものの、美都里の家事遂行能力には「?」がつく中で、安子の存在は貴重なはず。まあ女子のたしなみで、料理や裁縫くらいはできるかも知れないが、闇市への買い出しなど、美都里には絶対に無理。むしろ安子に出て行かれるようなことがあったら、困るのは雉真夫妻なのだから、少しでも安子の負担を軽くしようとしただけではないか。

稔や勇を育てた時は美都里は(千吉も)若かったが、今新生児の世話をするのは体力的にはきついはず。それなのに、夜の寝かしつけまでやってくれていることを、素直に感謝すべきだろう。

玉音放送

映画やテレビドラマで、玉音放送は何度も聞いたが、放送直前にアナウンサーが聴取者に起立するよう促すのは初めてだ。実は玉音放送そのものは記録があるが、その前に何が話されたかはこれまでわかっておらず、起立の件はつい最近わかったことらしい。

雉真家と橘家はどのくらい離れているのか

  • 勇と安子は同じ小学校。今風に言えば学区が同じ。
  • ひさや金太は(恐らく杵太郎も)、以前から雉真千吉の顔を知っていた。地元の顔役だからということだろうが、心情的には「かなり近い」のはず
  • 自転車に乗れなかった頃の安子も、たびたび雉真家に配達に行っていた。女の足で歩いて往復できる距離

とはいえ、商店街と御屋敷街では近所というほどでもなかろう。実際にはどのくらい離れていたのだろうか。今日の話で、家を出た安子が次の瞬間にたちばなの焼け跡にいる金太を見つけるが、実際にはそれなりの時間が経っていたはずだ。



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