第五週「1946-1947」(金)
放送日
- 2021年12月3日
概要
千吉は安子に、雉真に帰ってくるように言う。もう見合いをしろとは言わない。稔の嫁として、堂々としていればいい。美都里ももう何も言わないだろうと。安子は今の二人の暮らしを続けていきたいと食い下がるが、千吉の、るいはあんたの子でもあるが雉真の子でもある。それに相応しい教育を受けさせたい、という説明に安子は返す言葉がない。
このままじゃだめだ、もっと働いて、もっとお金を稼いで、るいにいい暮らしをさせてあげなければと、ひたすら仕事に精を出す。寝る間を惜しみ、「カムカム英語」を聴く時間も惜しんでおはぎを作り続け、るいをリヤカーに乗せて配達を――が、つい疲れてぼーっとなったところをオート三輪と接触してしまう。安子は左腕を骨折、るいは額に一生治らない傷を負った。
安子は勇に連れられ、るいを連れて雉真の家に帰る。そうしたら玄関に翠が正座して待ち構えており……
雑感
大阪編は一週間で終わりを告げた。実際には二年が経過しているが。
勇は、安子とるいは家を出た方がいいと考え、いくばくかの金を握らせ家出の手伝いをしたが、女手ひとつで頼る人もいない安子が、幼子を抱え、どのような生活を送ることになるのかまでは想像が働かなかったようだ。飢えや病気その他の理由であっさり死んだ可能性もあるし、売春婦やアメリカ兵の愛人になるなどの道もあり得たが、考え得る中では相当にいい暮らしを手に入れたと思う。運にも恵まれたが、安子の頑張りと、お菓子作りの能力がいい方向に作用した。が、それは雉真の目から見れば悲惨な生活で、それを実際に目の当たりにした勇は、千吉の「家へ呼び戻す」意見に賛成せざるを得なかった。
勇の口から、よくここまで頑張った、という誉め言葉か、わしが考えなしに家出をけしかけ、姉さんに苦労を押し付けてしまった、などの謝罪の言葉が聞きたかったが、それはなかった。家へ戻るにあたり、もう母さん(妻)には何も言わせない、などの約束もなかった。こんな状態で雉真の家に帰っても、安子の住み心地がよかろうはずはないが、ケガをして当分仕事ができないとあっては、安子にも選択肢はなかった。
交通事故を起こしたのに、事故後、相手のオート三輪が影も形もなかったのは、逃げたのか? 通りには人もいたはずだが、蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなってしまったのは解せない。普通は事故だ事故だと大勢集まってくるのではないか。ケガをしている安子を見つけたのが千吉だというのも、いくらなんでもご都合主義が過ぎないか。
配達の途中で事故に遭ったということは、配達できなかったということ。配達を待っていたお客のことは全く言及されなかったが、連絡はできたのだろうか。賠償などは千吉さんがうまくやってくれたのかも知れないが、お金や法律の話ではなく、「待ちぼうけを食らわされた」人のがっかりした「気持ち」にどのような償いをしたのか。こういう時にどういう対応をするかで、店の将来が決まると言うものだ。もう店は畳むからどうでもいいというものではあるまい。まさかバックレたということはないと信じたいが。