第九週「1962」(火)
放送日
- 2021年12月28日
概要
るいが本を読みつつ店番をしていると、片桐さんがやってくる。まだO・ヘンリー読んでるの? と訊かれたるいは、ゆっくり楽しもうと思っていると答え、O・ヘンリーの作品では「善女のパン」が好きだと答える。どんな話だっけ、と訊かれ、ストーリーを(寸劇付きで)説明。二人は笑い合う。その様子を眺め見ている竹村夫妻と西山。
預かった上着を確認していると、ポケットに物が入っている。取り出してみると、椿三十郎の映画のチケット、裏には、片桐からるいへの、一緒に見ようというメッセージ。デートの誘いだ!
日曜日、おめかしをして出かけたるいは、片桐と一緒に映画を鑑賞。もう少し時間ある? よかったら食事でも、という片桐に、ぜひ連れて行ってください、とはしゃいで答えるるいだが、そこへ一陣の風。あわててスカートを押さえるが、風が髪をかきあげ、額の傷がはっきりとさらされてしまった。片桐は驚いてまじまじと見る。まじまじと見ている片桐をるいは見る。一瞬ののち、食事に行こうという片桐に、やっぱり帰りますと言ってるいは駆け出すのだった。
とはいえ真直ぐ帰らず、行き当たりばったりで店に飛び込むと、そこはジャズの生演奏をしている店だった。舞台の中央でトランペットを吹く人は、かの「宇宙人」だった……
雑感
るいの恋と失恋
片桐にポーっとなってしまったところは、稔に恋に落ちた安子に似ていたが、その後の経過は変わった。
面接の時もそうだったが、るいは、深く傷つきたくないがために、そうなりそうな気配を感じると、そこで自ら引き返してしまうことが習い性になっているように思われる。片桐は、このような傷跡を間近に見るのが初めてだったのだろう、驚いたのは仕方がないが、そのあと必死で気にしないふりをしてくれたのだ。そのままついて行ってもよかったと思う。が、るいは誘いを断わり、みじめな気持ちになるのだ。
このるいの態度はtwitterでも賛否あったところだ。自分で断わっておいてみじめだ、傷ついたと言うのは自分勝手も過ぎるのではないかと。また、そうなることがわかっていたから千吉は手術を薦めたのに、それを拒否したのは自分ではないか、なにを今さらと。そんれはその通りだろうが、その時にはわからなかったのだよ。それが歳を取るということだ……
まあ、片桐さんもちょっと呆然とし過ぎたけどな。
善女のパン
この作品は、「最後の一葉」「賢者の贈り物」「赤い酋長の身代金」などと並んでO・ヘンリーの代表作のひとつに数えられるのではないかと思うが、ほかの作品はだいたいハートウォーミングなものが多いのに、この作品の主人公のマーサは、善人なのかも知れないがちょっと思慮に欠けるところがあり、物語としては後味が悪い。るいが、こうしたシニカルな作品が一番好きだと言う理由は一考に値するように思う。
ひとりよがりでみじめな点が、自分に共通すると感じたのだろうか?
片桐は筋を聞いても思い出した様子はなかった。O・ヘンリーを好きでこの話を知らないのは考えにくい。片桐は、本当は名前ぐらいは知っているけど好きというほどでもないが、るいに話を合わせるため好きだと言ったのかな?