窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「怨み屋本舗」TVスペシャル「家族の闇 モンスター・ファミリー」

出演(レギュラー)

出演(初登場)

  • 馬渕英俚可(坂下ミドリ、パチンコ中毒)
  • 相葉弘樹(大久保ユウヤ、ミドリの愛人)
  • 高木涼生(坂下拓実、ミドリの息子)
  • 吹越満(坂下守、ミドリの夫)
  • 竹山隆範(白川タカヒコ、引きこもり)
  • 山田一善(白川幸一郎、タカヒコの父、階段から落ちて死亡)
  • 島かおり(白川タエ)
  • 三浦理恵子(白川由紀、幸一郎・タエの長女)
  • 小林正寛(白川義雄、由紀の夫)
  • 小阪由佳(白川亜紀、幸一郎・タエの次女)
  • 美山加恋(白川美咲、由紀の娘)

感想

ふたつの話が組み合わさる。パチオンコ中毒の坂下ミドリは、足手まといとなった息子に保険金をかけ、事故に見せかけて殺害。いったん拘留されるが3ヵ月で釈放される(業務上過失致死か何かで逮捕されたが不起訴になったということか?)。拘留中に夫に離婚届けを送り、自由になったらすぐにユウヤと結婚するつもりでいる。

真相を怨み屋からほのめかされた夫の守はミドリの殺害を依頼。怨み屋はまずシュウを動かし、ミドリが拘留されている3ヵ月の間にユウヤを一流のホストに育てる。金で女をあしらう技を身に付けたユウヤは、保険金が自分の口座に振り込まれるようにミドリに手続きをさせ、それが済んだところで怨み屋はミドリを誘拐し工場に監禁。下着のみ身に付けた裸の彼女の頭上から熱く熱したパチンコ球を大量に浴びせるという残虐な方法で殺害する。

有名医院の院長である白川幸一郎が自宅で死亡。警察では事故として処理されたが、実は4年も引きこもりの長男タカヒコの「お宝」であるフィギアを壊したことで怨みを買い、階段の上から突き落とされたもの。そのことを本人の口から聞いた家族は、タエが警察に連絡しようとするが由紀が阻止。殺人犯の家族ということになれば自分たちの未来が閉ざされてしまうから。そして怨み屋にタカヒコの殺害を依頼。

由紀は「医師でなければ人にあらず」と考えており、医師の父は尊敬するが看護婦だった(エリートではなかった)母のことは軽蔑している。母が何かを言っても「バカがうつる」などと言い、家政婦呼ばわりすることもあった。夫の義雄は同意見なのか尻に敷かれているのか、由紀に同調。妹の亜紀は、自身エリートという雰囲気ではなかったが、お金が好きな点と他人の命を軽んじている点は由紀と同様。彼らはタカヒコの次は母タエを殺し、両親の財産を完全に自分たちのものにしようとする。

由紀の一人娘、美咲は、まだ小学生だがガリ勉を強いられており、少しでもサボると煙草の火を肌に押し付けられるなど、虐待を受ける。由紀によれば、由紀自身、父・幸一郎からこのようにしつけられてきたという。

あーさすがに90分のスペシャル版。粗筋を書こうとするとこんなに長い。ダレるかと思ったが基本的に話が二つあるため、テレビ版のスピーディーさは失われていなかった。一方、深みというものはあまりなかった。

怨み屋が人を死に至らしめる場合、事故(または自殺)に見せかけるのが鉄則(テレビ編第九話のように、他人にやらせるという手もあるけど)。事件だとなれば警察がしつこく調査をするし、そうなれば依頼者が口を割る可能性が高くなる。依頼者が口を割っても自分たちは逃げられる自信があるのかも知れないが、依頼者に警察の追求の手が伸びること自体、不親切である。熱したパチンコ球を浴びせるなんて、事故でも自殺でもあるはずがないのに、なんでそんな手を使ったんだろう。

テレビ編ではシュウの使い方が下手だと思っていたが、今回の3ヵ月会えない間に愛人を変えてしまうというのは面白い手だと思った。しかし、ここでユウヤがお前みたいな女と付き合っていられるか、と言ってミドリが自分の甘さを悔やむならわかるが、ユウヤがやったのは保険金の受取人の名義変更だけ。ミドリはユウヤの心変わり(?)も知らないままあっさり殺されてしまうので、なんのために3ヵ月も手間暇かけたのかわからない。ユウヤに仕掛けた盗聴マイクで、ミドリが本当に意図して息子を殺したことをはっきりと聞き、「ギルティ!」と判断するのが目的だったというなら、それでよいのだが……

二つ目の話の途中、怨み屋が「依頼が増えた」という。これは由紀たちがタカヒコに続いてタエの殺害を正式に依頼してきた、ということではなく、タエが彼らの始末を依頼したんだろう、と思ったら、依頼者は美咲だった。これは意外だったが、この意外性は良かった。美咲役の美山加恋が幼いのに実にうまく、頭がよさそうだが感情の起伏がなく、気が強そうなところとか……。最初、「白夜行」で雪穂役をやった人(福田麻由子)かと思ったが違った。

しかし、両親や叔母を殺害する理由が、「母親のいいなりになって勉強、勉強の人生をいくのも厭だし、落ちこぼれて引きこもりになるのも厭だが、この家にいたらそれ以外の選択肢はない」というものであって、自分の人生に都合の悪い人は殺してもよしとする考えは、ある意味では両親と変わらない。そうした点は、やはり血筋なのかも、と思わせる。そう思わせるのは、ひとえに美山加恋の演技力の賜物である。彼女は一見の価値ありだ。

最後、爆弾を仕掛けて白川家一同を皆殺しにする。タエ、美咲も代わりの(身元不明の)死体を用意し、別の人生を歩ませるのだが、これはナゼだ? たまたまこの二人は出かけていて爆発に巻き込まれず生き残ったとすればよかったのでは。そうすれば土地をはじめ遺産も引き継げて、今後の生活の不安はない。別の人生を歩むということは、これまでの親類や友人など誰とも、今後一切付き合えなくなるということで、幼い美咲はともかく、タエに耐えられるだろうか。

この爆発に巻き込まれて(意図的に巻き込んで)寄木刑事が死亡。テレビ編最終回の依頼をも果たしたことになる。が、これはDVD版のみのようで、テレビ版では寄木は大けがはするが命に別条はないことになっている。今後、寄木がどう絡んでくるのかわからないが、少し怨み屋のことを知り過ぎたし、DVD版の方が残酷で良かったと思う。

リンク

怨み屋本舗 ~ 家族の闇/モンスター・ファミリー~ [DVD]

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