窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「八日目の蝉」その2

気になったところ。

野々宮希和子が薫を誘拐した後、書店に立ち寄るシーンがある。この時光文社文庫が映ったのがはっきり見えた。あのカラフルな背表紙は目立つのだ。が……、光文社文庫が装いを変えたのがいつか、正確な記憶は(記録も)ない。5年前か、7年前か……少なくとも10年以上前ということはない。しかし、これは20年ちょっと前の出来事という設定。上手の手から水が漏れるというやつか。

希和子が薫を無断で連れ出し、名前も勝手につけてしまったということは、薫の戸籍がないということ。母子手帳もなければ健康保険証もないわけだが、そのことで一度も不具合が起きていないのはおかしくないか。大人はそう簡単に体調を崩さないし、ちょっと具合が悪くなっても市販薬で済ます、と考えることもできる。けれども子どもは体調を崩しやすいし、すぐ医師にかかればなんてことなくても、ほっておけば命に関わることもある。それに定期健診や予防接種などの問題もあろう。もちろん、小学校へ通うことなど不可能だ。

小豆島で落ち着いて暮らすようになった時、周囲の大人たちはおかしいと思わなかったのか。それとも、うすうす事情を察していたのか。誰かの戸籍を(不法に)買うなど、偽造工作をしていたのか。そこを描くのが目的ではないのはわかるが、何も触れないのは不自然に感じた。僕などは結構医者通いが多いから、自分だって健康保険証がなくては不安でたまらない。
(2011/07/17 記)