こういう映画が面白い「おとなの恋には嘘がある」

タイトルがアレだし、知っている役者は誰も出ないし、直前に観た「ある過去の行方」がアレだったしで、観るのをやめようかとも思ったが、やはり観て良かった。こういう映画が好きなんだ。

主演男優のジェームズ・ギャンドルフィーニは、封切直前の2013年6月13日に亡くなられたそうだ。

題名おとなの恋には嘘がある(Enough Said)
監督ニコール・ホロフセナー
出演ジュリア・ルイス=ドレイファス(エヴァ、マッサージ師)、トビー・ハス(ピーター、エヴァの元夫)、トレイシー・フェアラウェイ(エレン、エヴァの娘)、タヴィ・ゲヴィンソン(クロエ、エレンの親友/エヴァの家に入り浸る)、エイミー・ランデッカー(デビー、クロエの母)、トニ・コレット(サラ、セラピスト/部屋の模様替えが好き)、ベン・ファルコーン(ウィル、サラの夫)、アンジェラ・ジョンソン=レイエス(キャシー、サラの家の家政婦)、ジェームズ・ギャンドルフィーニアルバート、テレビ番組のデータベース作成の仕事)、イヴ・ヒューソン(テス、アルバートの娘)、キャサリン・キーナー(マリアンヌ、詩人)、他
公式サイトEnough Said〔英語版公式サイト。日本語版のサイトはないようだ〕
制作USA(2014年4月4日日本公開)
時間93分
劇場新宿シネマカリテ

内容紹介

エヴァは離婚歴あり、娘と二人暮らし。仕事は固定客もいてそこそこ順調。娘とも仲良く過ごしている。娘にはクロエという親友がいて、しばしばエヴァの家に入り浸っている。ただし娘は高校を卒業したら家を出て遠くの大学へ進学することが決まっており、そのことに一抹の寂しさを感じている。

そんな矢先、友人のサラと一緒に出席したパーティーで、アルバートと知り合う。アルバートも離婚歴があり、一人娘がいる。パーティーのあとデートに誘われ、ユーモラスで話の面白いアルバートエヴァは次第に惹かれていく。

同じパーティーでマリアンヌとも知り合う。マッサージの常連客になってくれたが、エヴァに対して単なる顧客ではなく、友人として付き合ってほしいという。高名な詩人であり、住まいはセンスに満ち溢れ、エヴァはマリアンヌに憧れの念を抱く。彼女も離婚歴があり、エヴァの新しいボーイフレンドとの付き合いを応援してくれるが、元夫に対する悪感情は消えることがなく、エヴァに対して未だに愚痴を言い続ける。

ある時、マリアンヌの元・夫がアルバートであると知ってしまい……

雑感(若干ネタバレあり)

ストーリーはシンプルでわかりやすいが、大変に考えさせる問題である。新しく知り合った友人が、自分の恋人のことをよく知っていて、しかもその人が今は自分の恋人だと相手は知らず、その人に関する強烈な評価を並べ立てる、というのはありそうなことである。その時、聞いた方はどういう態度を取ればいいのか? その人は今は自分と付き合っているのだ、と伝え、辛辣な評価を控えてもらうのも一つの方法。また、恋人に、○○さんからこんな話を聞いたんだけど、本当? と打ち明ける方法もある。

アルバートは、エヴァが後者の態度を取ってくれなかったことに怒り、傷ついたという。しかし、このアルバートの気持ちには共感できない。教えてもらったらどうだというのか? マリアンヌとは付き合わないでくれとでも言うのか? エヴァの上客なのに? 仮にマリアンヌから自分の悪口を吹き込まれているとしても、それでもエヴァは自分と付き合ってくれている(ちゃんとセックスもしている)。そのことで、むしろエヴァの気持ちは明らかだと思う。アルバートこそ、エヴァを信じられないのだろうか。もしエヴァがマリアンヌの話を聞いて、それだけでアルバートと縁を切ったのだとしたら、アルバートが怒るのはわかるのだが。

むしろ僕は疑問なのだが、結婚を考えている相手に離婚歴がある、というのは世の中よくあることだが、そのような時、離婚の理由を、相手の元の配偶者に会って聞きたい、と普通の人は思わないのだろうか。

本作で興味深いのは、もうひとつ、娘との関係だ。クロエの存在がキーになる。クロエは、母親と今ひとつうまくいっていないためか、エヴァの家に入り浸っている。そんなクロエをエヴァは娘と同様可愛く思い、受け入れている。クロエはエヴァになつき、エレンがいない時でも訪ねてきて、入り浸るようになる。

最初はそのような関係を微笑ましく見ていたのだが、後半、エレンが怒るのだ。ママは、クロエを居候でもさせる気なの? と。「クロエは寂しいの。傷ついているのよ」と説明するエヴァにエレンが言う。「寂しいのはママでしょ。いい加減に子離れしてよ! 私だって親離れしなくちゃいけないと、家を出る決心をしたのに……」

そう、エレンが家から離れた大学へ進学するのは、親離れ(同時にエヴァの子離れも)するために決断したことだったのだ。そしてエヴァがクロエに優しくする理由も、エレンは見抜いていたのだ。言われてみれば冒頭からエヴァがクロエらに過剰に干渉することを嫌がるシーンが描かれている。

大人だって寂しい。これは、一人の人間が、心の隙間をどう埋めていくか苦悩する物語でもある。

今日の英語

  1. That's a deal.(問題ないわ)
  2. I think you are very healthy.
  3. Yeah, I'm starving.(ペコペコよ)

日本語タイトル

いくらなんでもちょっとアレでしょー。このタイトルで「どんな話? 観てみようかな」と思う人が果たしてどれだけいるか。

タイトル

Enough said.は「これ以上何も言わなくていい、もう分かったから」というような意味。辞書の例文を見る限りでは「うんざりだ」という否定的なニュアンスで用いられるのが専らの印象を受ける。

アルバートはマリアンヌの批判に「もううんざりだ」と思っていただろうし、言い訳を始めるエヴァに対しても「もう結構」と思っただろう。しかし、縒りを取り戻した時に、謝罪するエヴァに対して、そんなに言わなくても、君の気持ちは十分わかっているよ、という気持ちだったに違いない。そのダブルミーニングか? と思うのだがどうだろう・

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