あらすじ
旅芸人が京にやってきた。見物に行った駒は準備中の一座の中に入り込み、ロープの上を歩いたり、宙返りをしたりする。座長の伊呂波太夫とは旧知の間柄のようだ。その太夫から、駒の命を救った侍は桔梗の紋の着物を着ていたと聞く。桔梗といえば明智家の紋ではないか。駒の命の恩人は明智の家の人だった……!
安城城が今川軍に攻められ、織田信広が捕らえられる。今川は織田家の人質・竹千代との交換を要求してくる。竹千代はのちの三河の城主。竹千代を手にするということは、三河を押さえたも同然ということ。信長は人質交換に反対するが、信秀は応じる構えを見せる。
この人質交換の行方は斎藤利政も強い関心を持っていた。断わるなら信秀には見込みがあるが、もし応じるようなら同盟破棄も考えなければならない。そこで尾張に行き様子を探るよう十兵衛に命じる。十兵衛は帰蝶のご機嫌伺いと称し、信長に拝謁。
信長は竹千代に人質交換の話をする。竹千代を渡したくないが、断われば兄は殺されるから、実は迷っているのだと。竹千代は答える。今川は敵だが、まだ顔も知らない。戦は敵を知るところから始まるという。自分は今川家に行っても構わないと……
今日の利政&十兵衛
(尾張に行くよう命じられたあと)「鬼め! 命がいくつあっても足らぬわ!!」
雑感
岩田琉聖の回。今日の竹千代は、この子はいずれ天下を取るのではないか? と思わせるような、大器の片鱗を見せた。
信長は十兵衛を覚えていた。そのことに十兵衛は驚くが、第八回の追記で書いた通り、あれは覚えていても不思議はない。
釣りが好きなのですかと尋ねた十兵衛に対し、信長は「さほど好きではない」と答える。そして語る……母は、弟の信勝ばかりかわいがっている。が、ある時大きな魚を釣ってきたら褒めてくれた。そこで、魚を釣れば母が褒めてくれると思い、漁に精を出した。が、褒めてくれたのはその時だけだった、と。しかし、領民は褒めてくれる、切り身を分けてやると喜んで市に持って行く。みなの喜ぶ顔を見るのは楽しいと……
前回は父に褒めてほしいばかりに松平広忠の首を差し出したが、褒められるどころか怒られた。この釣りのエピソードもそう。この信長は、褒められたい、喜ばれたいだけなのだ。こんな思いをさせた信秀や土田御前にも腹が立つが、親でなくても、誰か身近な人間で、信長の気持ちを理解し、構ってくれる人はいなかったのだろうか、と不憫にも思う。しかし、これまではいなかったけどこれからは帰蝶がいる、ということか。十兵衛が驚くほど、帰蝶と信長は意気投合しているようだ。
帰蝶は十兵衛に、信長はまだ子供のようなところがあると言うが、信長はまだ15歳だからな……。そういう帰蝶も14歳……。ま当時の15歳(数えだと17歳)は現代と比べればはるかに大人であろうが。
(2020/4/23 記)