窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

ボディガード牙(DVD)

ツタやに在庫があったので、一応借りてきた。

題名ボディガード牙 修羅の黙示録
原作梶原一騎ボディガード牙」
脚本佐々木哲也、真樹日佐夫
監督三池崇史
出演大和武士(牙直人)、長倉大介(石嶺順平?)、田中忍(洋子?)、咲田めぐみ、松田勝(刑事)、真樹日佐夫(大東徹源)
制作日本、1995年

ストーリーは前作よりはまともだった。

沖縄の暴力団・蒼龍会のチンピラ順平が、組織の金5億円を盗み、わざと暴力事件を起こしてつかまり5年間服役する。出所後、沖縄へ行って隠した金を入手し東京に戻ってくるまでのボディガードを牙に依頼。もちろん蒼龍会も5億円を追って出所直後から順平をつけ狙う。

蒼龍会の裏をかいたつもりで沖縄へは船で移動するが、蒼龍会はその船に沖縄空手の達人を刺客に送り込んだ。牙にあっさり返り討ちにされるが、この事件は、牙が「沖縄空手は大東空手の敵ではない」と言ったかのように地元で報道され、沖縄空手の諸流派が大東空手に果たし状を叩きつける空手戦争の様相を呈する。

とまあ、導入部は割におおっと思わされたが、突然やってきた大東徹源が「牙は仕事がある、空手の対決は私が」と言って試合をする。しかし沖縄空手側は大勢で一斉にかかるのではなく、一人ずつとは妙に紳士的だが、ヌンチャク、トンファー、鎌など危険極まりない武器を丸腰の相手に使用するなど、現実味に乏しい。しかもそんな不利な状況を徹源がどうさばくかといえば、既に老境にある真木の技はさほどスピードもなく、相手と呼吸を合わせてやっているのがミエミエ。この場面は全く不要。つまらないシーンだった。

さて、沖縄では、順平が服役前に「必ず迎えに行く、本土へ逃げていろ」と伝えておいた恋人・洋子と再会。しかしその洋子が蒼龍会に拉致され、5億円と交換だといわれる…………が、誰が考えたって洋子が蒼龍会とつながっていることは明らか。再会の喜びに震える順平はともかく、牙はそんなこともわからないのか。

蒼龍会の目を逃れて本土あるいは海外を逃げ回っていたというならわかるが、洋子にはそんなお金もなければ才覚もなかろう。第一、それなら順平だって容易には探せない。蒼龍会とつながっていなければ、沖縄でのほほんと5年も暮らしていかれるわけがないではないか。

蒼龍会を追っている刑事が、隠れ家の場所を牙と順平に教えに来る。順平・牙・刑事が洋子奪還に殴り込みをかける。刃物や拳銃で襲ってくる蒼龍会のメンバーをなぎ倒し、会長および会長の女である洋子と相対。すべての事情を知った順平に対し、洋子は「もう昔には戻れない……」と言って、拳銃を自らに向けて発射。洋子の後ろにいた会長も巻き添えを食って死亡。

結局順平は、恋人は失ったものの、蒼龍会が壊滅したことで命を狙われる心配がなくなり、事件は終了……と思いきや、もう一幕。実は彼らに味方した刑事は沖縄空手の達人(恐らく現役トップクラス)だった。こうして二人とも生き残ったからには、決着をつけよう……というわけで、最後の対決となる。

お約束といえばお約束だが、後半の筋の運びはきらいじゃない。大東空手と沖縄空手の対決も、最後の1シーンのみで十分だったと思う。沖縄は昔も今も空手がとても盛んで、那覇手首里手とも言われる独自の発達を遂げていると聞く。見ている限りでは普通の空手と変わらなかったが、そこまで期待してはいけないか。

大和武士は空手(特に足技)は素人のはずだが結構サマになっていた。十分黒帯クラスの力はあると思う。このレベルには簡単には行き着かないと思うが、この役のために相当な特訓をしたのか? それとも今後アクション俳優としてやっていくつもりなのか?

しかし、全体的には結局格闘シーンも素人ばかりで迫力不足。約束組手になってしまっている。もともとの設定(大東空手は地上最強、牙は不世出の空手の達人)が生かされておらず、単なるアクションものになってしまっている。単なるアクションものとすると……役者が下手。意外と大和武士はまともだが、順平役の人、もう少し味のある俳優を配役できなかったのか。

牙の「日本中探しても、約束を守るヤクザと政治家はいねえよ」という台詞はよかった。