窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「麒麟がくる」第七回「帰蝶の願い」

NHKオンデマンドによる視聴。これまでの七回の中で最も切ない(個人的には大好物)。織田信長(ようやく)登場。

あらすじ

斎藤利政が大垣城奪取に攻めて来た時、信秀が救援に向かえなかったのは、同族の織田彦五郎に居城を攻められていたから。美濃の斎藤、駿河の今川、そして尾張織田家中も統一されておらず、三方に敵がいては戦いようがない。そこで美濃と和睦を結ぶことにした。条件として、利政の娘である帰蝶を信長に嫁がせること。

その話を聞いた帰蝶は、嫁入りは前回で懲りた、尾張のうつけと評判の人間の許へなど嫁ぎたくない、と、城を出て明智荘へやって来る。ちょうど京から戻った十兵衛と会い、私を守ってほしいと頼み込む。尾張へ嫁になどやるべきではないと言ってほしいと。

利政は十兵衛を呼び出し、語る。5年前に京の御所が洪水で流されてしまった時、修繕費として、信秀は4000貫をポンと出した(NHKの公式サイトによれば約6億円)。今川義元は500貫(7500万円)、美濃の土岐氏は出せなかった。なぜ織田がそんなに裕福なのか、それは港があるからだ。港があれば交易が盛んになり物流が生まれ、大きな富が流れるのだと。これまで信秀と戦ってきたのは港を手に入れるためだが、同盟が成ればそれに近づく。だから帰蝶を説得してほしいと。

同時に、高政(や稲葉良通ほか豪族衆)からは逆のことを頼まれる。織田信秀は、尾張の守護でもなければ守護代でもない、そんな立場の人間と手を結んでもこちらの格が下がるだけ。そして強大な今川との戦いに巻き込まれてしまう。こちらにメリットはないからこの同盟はやめるべきである。帰蝶を嫁に出すべきではない。

明智荘に戻った十兵衛は再度帰蝶と対面。ただイヤだイヤだとは言っていられないと悟った帰蝶は、十兵衛に、尾張へ行って信長がどういう人物か見て来てほしいと頼む。誰も信長のことを知らないのでは話にならない、すべてはそれからだと。というわけで光秀は尾張に潜入する……

今日の利政

「わしの仕事は戦をすることではない。国を豊かにすることだ」

今日の十兵衛&帰蝶

鶴を見に来たついでに寄った、と明智荘へ来た帰蝶に対し、「鶴が来るのはもっとずっと向こうです。こんなところで寄り道していては日のあるうちに稲葉山へ戻れませぬぞ」

あとでその話を聞いた明智光安は、「十兵衛、あの帰蝶様が鶴を見たいと本気で思われる方かどうか、よく考えてみよ」と言う。あの光安ですら、その場にいなくてもわかるのに、なぜ十兵衛にはわからんのか!

感想

既に八回を見てしまっているので、七回で何が起きたのかはだいたいわかっていたのだが、ドラマとしては今回は非常に重要である。前回が駒ちゃんの回なら今回は帰蝶の回。ここのところ帰蝶が登場せず、少々物足りなかった。物足りなかったということを、今回の帰蝶を見て感じた。すごく存在感があるし、可愛いし、このドラマになくてはならないキャラになっている。なんなら本作の登場人物の中で一番の嵌まり役である。直前に交代したとは信じられない。

で、哀しいねえ~。帰蝶尾張へ嫁に行くのを厭がったのは、もちろん前回の嫁入りの結果がトラウマになっているのもあろうし、嫁ぎ先が前回は美濃だったが今回は尾張(文化・気候・風習の異なる他国)というのも厭だし、うつけと評判の人間の嫁になんかなりたくないということもあるだろうが、一番大きな理由は、本当は十兵衛の嫁になりたいのである。十兵衛の傍を離れたくないのである。しかし、そのことを口に出せない。もちろん視聴者はみんな知っているが、十兵衛は全くわかっていない。「なんでこんなところまで?」って、バカ、お前さんに会いに来たに決まっているだろうがよ!!

ところで、海(港)がそんなに重要だということを初めて知った。戦国時代に国盗り合戦で勝ち続けるためには、国が豊かでなければならない。豊かでなければ戦をやる余裕などないからだ。武田は甲斐のやせた土地で必死で作物を育てなければならず、上杉は越後で雪に閉じ込められる。だから強さを謳われながらなかなか他国へ侵略できなかった。一方、織田信長濃尾平野という肥沃な土地を抱えており米がよく取れた。信長・秀吉・家康の三英傑が皆愛知の出身なのは偶然ではない……と高校時代は理解していた。

しかしその後、いろいろ調べてみると、濃尾平野はいわゆる木曽三川の氾濫に悩まされており、必ずしも米を育てるのに向いている土地ではなかったのではないかと疑問を抱いた。当時と現在とでは事情が異なるかも知れないが、愛知の米なんてあまり聞かないし。事実は不明、米でなければそれに代わる財源が何かも不明。

そういう意味では、その疑問が今回解けたことになる。しかし、最近の教科書ではどうなっているのか知らないが、少なくとも自分が中高時代に手にし、目にした教材類で、熱田の港について書かれていたものは皆無だったと思う。信長が鷹狩りに行く姿は、多くのドラマや漫画などでお馴染みだが、漁に出る信長なんてイメージにない。これは新しい学説に因るものなのか?


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(2020/4/6 記)