窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

南くんの恋人(2)「涙の電話」

これは「高校生のちよみが小人化してしまい、親にも言えず、恋人を頼る」というシチュエーションのみを原作から借りた、別の物語なんだな。特殊な状況下でのハートフル・ラブストーリーというか。ちょっと滑稽でちょっと切ない物語。

原作では、ちよみと南くんは既に性的な関係もあった。だから小さくなったちよみを風呂に入れたり、世話をしたりすることにお互いに違和感はなかった。が、本作の二人はちょっと手を握ったことがあるだけで、キスもしたことがない。そういう相手の生活一切の世話をするのはしんどいなあ。中高生にとってはギャグかも知れないが、オトナにとってはギャグでは済まないところだ。だって生活するって大変なんだから。

原作ではちよみの家族が登場しない。ちよみのことを心配しているだろうに、なぜ家に帰らないのか、という当然の疑問は、そういうことを考えてはいけない話なんだな、と納得できる。本作ではちよみの家族が克明に描かれる。彼女が行方不明になったことで心配し、狼狽し、リアルにやつれていく。それなのに家に帰らないのは不自然だ。

それで、とりあえず今回は電話で祖父に無事を知らせることになった。この電話での会話は、特に北村総一朗は、なかなか迫力があった。店の外に貼ってあった張り紙も、なかなかよかった。

とはいえ、南くんは両親が心配性で世話焼きで、しょっちゅう部屋に覗きに来るような親子関係であり、また下に妹が二人もいる。こうした環境で、家族に秘密でちよみを生活させるのはほとんど不可能だろう。たとえば、小鳥でもハムスターでもいいが、家族に内緒で飼えるものか、考えてみればいい。原作の南くんはおタクっぽい子で、一人っ子。部屋にこもって何かを熱心にしているのは以前からで、そのことに両親は干渉しない。そのくらいのシチュエーションがあってはじめて、秘密が守れる、かも? と思えるのだ。それでも、長期にわたったら無理だろう。その点、原作では長期にわたる前に……

原作との比較はともかく、これはこれで面白くなくはなかった。

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