母いわ、久々に登場。/「軍師官兵衛」第21話「松寿丸の命」

粗筋

織田軍が有岡城に総攻撃を仕掛けるが、ことごとく撥ね返される。織田軍の攻撃を読み切っている荒木軍に、信長は村重ではなく官兵衛がいると直感。秀吉に松寿丸を殺すよう指示を出す。

雑感

信長の命令と半兵衛の行動

前回、「人質の始末などあとで良い」と言い切った信長が、どういう経緯で「松寿丸を殺せ」と言い出すか興味を持っていたが、なるほど織田の軍勢を撥ね返した荒木勢に、官兵衛が助言していると感じたわけか。信頼し、頼りにしていた村重の評価が意外に低かったのは「あれ?」だが、それなりに納得のいく展開であり、これまでの中では一番面白かったかも。

しかし「手の内が読まれている」と重臣が騒いでいるが、元の仲間であれば、読まれる可能性を想定し、戦法を変えるなど工夫すべきところを、いつもと同じ攻め方をしたのだろうか? だとしたら味方の指揮官の脳みそを疑いたいところだ。秀吉は有岡城攻めには加担していないのか? といって三木城や御着城を攻めている風でもないし。何やっているんだ?

松寿を処刑するよう指示する信長に、必死で抵抗する秀吉だが、「播磨と天下とどちらが大事なのだ」と怒鳴られるともはや言い返せない。そこを竹中半兵衛が「私が処刑します」と名乗りをあげる。半兵衛が引き受けた時点で、何か企みがあると視聴者は思うわけだが(というか、松寿が半兵衛に助けられることはかなり有名な事実なので、この先の展開は想像がつくわけだが)、秀吉は気づいていたのか、どうなのか。

もし秀吉の知るところであれば、秀吉が信長に逆らったことになり、今度は秀吉が処刑される可能性が大だ。だから半兵衛は、松寿の処刑に秀吉を立ち会わせず、黙って実行した。自分はどのみち長いことはないから、それでよいと……。この時の半兵衛の行動は(谷原章介の男前な演技と相俟って)今週の白眉か。

身代わりの子を悼む

半兵衛の命懸けの行動で松寿丸は助かり、黒田側から見れば美談なのだけど、単に松寿を匿っただけで事が済むはずがない。周囲にも松寿を処刑したと思わせ、信長にも首を差し出す必要がある。というわけで、ドラマでは描かれなかったが、この時、代わりの者が処刑されているのである。

代わりに殺された子にも、将来があった。親も兄弟もいただろう。いくら理不尽な理由とはいえ、松寿もその両親も、人質に出す以上、いつかこういうことになるかも知れないとは覚悟していたはずである。が、代わりに殺された子はそんな覚悟もなく、それこそ全く理不尽な理由で殺されたのだ。そのことに思いを馳せると胸が痛む。

だしの不可思議な行動

土牢に入れられた官兵衛は、銃声から織田軍の攻め方を察知し、このやり方では有岡城は陥ちないと力を落とす。その上松寿が処刑されたという知らせに気力を失い、食欲もなくす。朦朧とした意識の中で夢に出てきたのは母のいわだったが、現実に官兵衛を必死で食べさせ、生きる気力を出させようとしていたのは村重の妻・だしだった。

このだしの行動が理解不能である。もともと村重を諌めるために文を書いて官兵衛を呼びつけたことがきっかけでこのような事態に陥ってしまったことから、罪悪感に捉われている、という説明なのだが、いくら文を書いたのがだしでも、それを受けて来たのは官兵衛の判断であり、あっさり捕まってしまったのは官兵衛の力量である。だしがそこまで罪悪感を持つ必要があるのだろうか。

また、前回脱出を助けたことで、村重はだしの行動に相当に注意を払っているはずなのに、牢内へ勝手に忍び込むことができてしまうなど、セキュリティ面でも疑問が残る。だしに監視はついていなかったのだろうか。

さらに、官兵衛を励ますのはよいとして、牢の鍵を開けて自ら中に入り、膝枕までするのは何の意図があってのことか。これら一連の行動を素直に解釈すれば、だしは官兵衛のことが好きだった、としか思えない(官兵衛にその気はなさそうだから、不倫の関係ではない)が、それでいいのだろうか。キリスト教的にも、そういう行為は無論、それを疑われるような行為も慎むべきだと思うが。

そう、だしはキリシタンなのに、その設定が全く生きていない。キリスト教的な博愛主義から、傷ついた官兵衛をほっておけなかった、とかであれば、それはそれで説得力はあるのに。

いずれにしても、村重からすれば裏切られたとの思いは強かろう。……というわけで、村重とだしの顛末は来週かな。

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