窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

鈴木保奈美の圧倒的な存在感/01「湖国の姫」

9日から「江〜姫たちの戦国」がスタートした。上野樹里の主演なので、今年も大河は見ようと思っていた。しかし、昨年の坂本龍馬は日本史上、一、二を争う有名人だが、今年の「お江」なんて初めて聞く名前。

その母親のお市の方は、戦国の世に信長の妹として生まれてきた哀しさと逞しさ……よく語られるので知っている。その娘が豊臣と徳川に分かれ、血で血を洗う争いを繰り広げた知識も。けれどお茶々(淀君)の名前は知っていても秀忠の奥方の名前なんて全然知らなかった。

ちなみに、秀忠の奥方は年上で気が強くて秀忠は頭が上がらず、側室も置かず貞淑に生きていたが、ついに我慢できずたった一度浮気した時にできた子が、初代会津松平家の家祖である保科正之、相手の女性の名は静……というのは、「風雲児たち」初期の思い出深いシーンだが、江(お江与)の名前は出てきていない。この漫画では、家光が保科正之を取り立てるのが随分とあとになってからになった理由はわからなかったとしているが、お江を憚って保科正之の存在を隠していたためらしい。お江の死後、はじめて保科正之は政治の表舞台に出てきたのである。

それはともかく、第一話「湖国の姫」を見た限りでは、昨年よりずっと面白くなりそうな予感。導入の第一話からして非常によくできたドラマになっていた。

出演

雑感

冒頭で宮沢りえ水川あさみ上野樹里の三姉妹が登場。世話焼きの長女、生真面目な次女、奔放な三女と各自の紹介もなされたあとで、話は市の独身時代に遡る。信長の妹として、浅井家を取りこむために嫁に行ったのに、長政の人柄に惚れて妻として心から従うようになる。信長が朝倉家を攻めると、朝倉家と同盟国である浅井家は反・信長の旗を翻すことに。信長から見れば裏切りである。結局、浅井・朝倉連合は織田・徳川連合に敗れ、長政は討ち死に。市もあとを追おうとしたが、子らのことを考え、信長の元に戻ることにした……というのが今回の話。

これだけでも大河の一本に仕上がりそうなお市の方の半生を一回にまとめたのだから、ものすごい物語の展開だったが、話がよくわかったのは鈴木保奈美の熱演によるところが大きい。婚姻が決まった日にも馬で遠乗りをするような男勝りの性格で、信長の妹として切り込み隊長役のつもりでの嫁入り、長政への一目ぼれ、長政が信長に対立することになった時の、長政に従う決意、夫一人を死なせ、子どもたちを抱えて夫の仇である兄の元への帰還……という激しい感情の起伏を見事に表現していた。今回のMVPは文句なしに彼女。「東京ラブストーリー」の時は25歳だった鈴木保奈美も、今年でおんとし45。約10年ぶりの女優復帰だが、こんなにうまい人だとは思わなかった。

それ以上にびっくりしたのは芦田愛菜。まだ6歳だというのにこの演技力はどうだ。短刀をつかんで、鈴木保奈美に「お腹の子を堕ろすなら初を刺します」と言った時の迫力。父が死んだ時の泣き顔。……6歳にして嘘泣きができるということか。恐るべし。

冒頭の三姉妹のシーンで、おまんじゅうを口に頬張ったまましゃべり、袂に隠し持ったおまんじゅうを姉(初)の口に無理やり押し込むあたりは、まだのだめの影が見え隠れする。次回からは新しい上野樹里が見たい。

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