お涙ちょうだい物語にしなかったのは買える「抱きしめたい」

題名抱きしめたい
原作TBS系2011年7月3日放映「記憶障害の花嫁 最期のほほえみ」
監督塩田明彦
出演北川景子(山本つかさ、左半身麻痺)、錦戸亮(小柳雅己、タクシー運転手)、片桐隼哉(小柳和実、つかさと雅己の子)、風吹ジュン(つかさの母)、國村隼(雅己の父)、角替和枝(雅己の母)、平山あや(夏海、児童養護施設の職員)、上地雄輔屯田、小柳雅己の同僚)、寺門ジモン(つかさの知人らしいが思い出せない)、窪田正孝(淳平、遊園地従業員/つかさと同じ施設でリハビリをしていた)、大野百花(養護施設で暮らす少女)、斎藤工(雅己のパパ友)、佐藤江梨子佐藤めぐみ、他
公式サイト映画『抱きしめたい -真実の物語-』2014.2.1 ROADSHOW
制作日本(2014年2月1日公開)
時間123分
劇場イオンシネマ新百合ヶ丘

内容

高校時代に受けた事故の後遺症で左半身不随のつかさは、雅己の所属するバスケットチームと体育館がダブルブッキングされたことをきっかけに知り合う。雅己はハンディキャップに負けずに強く生きているつかさに惹かれ、結婚したいと思うようになる。つかさも、親切な雅己を「まーさん」と呼んで頼りにするようになる。

が、雅己の両親、つかさの母親の3人が反対(つかさに父親はいないようだ)。それもつかさが妊娠したことで親も折れ、ようやく結婚式を挙げる。しかし、一粒種の和実(なごみ)が生まれた時、第二の悲劇がつかさを襲う……

雑感(ネタバレあり)

予告編を何度も見せられ、その結果、次のような話かと思っていた。つかさは難病(脳性マヒなど)に犯されており、車椅子がないと生活できない身の上。しかも単に障害があるというだけでなく、病気のせいであまり長くも生きられない。そんなつかさも恋をして、結婚したいと思うようになる。が、当然男の両親は、間もなく死ぬとわかっている女と結婚するなんて、と猛反対……。

この予想はかなり裏切られた。つかさの障害は交通事故の後遺症であり、事故の直後は命の危険もあったが、現在は症状は安定しており、改善する見込みもないが、命の危険もない。要は左半身が利かないから、いろいろと制約はあるけれど(それは大変な苦労ではあろうが)、逆にいえば、ただそれだけだとも言える。雅己の両親が反対するのはまだわかるが、つかさの母が反対する理由がわからない。いつまでも自分が生きているわけではないのだし、良縁があれば結ばれた方がいいではないか。

映画の冒頭で子供が登場するので、出産したのだな、ということはわかったが、つかさが妊娠した時は少々驚いた。「そーゆーこと」も普通にできるなら、周囲が反対する理由は、あまりないように思うが……
【記憶障害に関しては、本作では触れられる程度で、深刻なものとしては描かれていない】

ところが、和実を出産した後、つかさは意識を失う。原因は急性妊婦脂肪肝で、これは障害とは関係なく、妊婦1万人に一人がかかるとされる病気。結局つかさはそのまま目を覚ますことなく、10日後に息を引き取った。

死因は障害とは関係なかったのか。しかしこれは辛い話だ。妊娠・出産が原因で死んだということは、つかさは雅己と出会っていなかったら、結婚していなかったら、妊娠しなかったら、病気にならず長生きができたということだ。その代り、子どもは生まれない。つかさ亡きあと、雅己もそのことで悩む。和実が生まれてきてくれて良かったと、折り合いをつけようとするのだが。

障害に関しては、つかさ本人の中では(雅巳にとっても)折り合いはついており、ある意味克服していると言える。だから、大変だなと思うことはあっても、悲惨な話ではない。一方、死因となった急性妊婦脂肪肝は、死の直前に突然示され、あっさり逝ってしまった。この処理はよかったと思う。死を間近にして、本人や家族が愁嘆場を演じるのは、そのような涙と感動の押し付けは、少々うんざりしているからだ。泣く間を与えずあっさりまとめたことで、観終わったあとの印象が格段によくなった。

つかさ亡きあとも少しだけ話があるが、家族が誰もめそめそしていない。雅己は今でもバスケットボールをしている。明るく生活しているのがいい。しかし、この「つかさ亡きあと」のほんの短いエピソードにちょっとだけ登場した斎藤工は存在感あったなあ。この時の雅己や和実の生活状況が、斎藤のセリフを通じて感じ取れたのもうまい仕掛けだ。

最後に2点。

  • 最初は文句を言い合うところから始まったつかさと雅己だが、だんだんお互いに惹かれ合い、最後は好きで好きでたまらなくなっている様子がうまい。お互いに好きなんだなあと感じられないとラブストーリーは成立しないのだが、考えてみれば簡単ではないだろう。たとえばつかさが雅己に身体を預ける時、最初はビクビクしていたのが、途中からすっかり安心して任せきっている。「バイロケーション」のよそよそしい夫婦を観たあとだから、なおさら好印象を受ける。
  • 事故の直後、身体は動かないし脳に刺激を受けたためが認識力も極端に低下し、まともにしゃべることもできない、その状態を北川景子が実にリアルに演じている。北川景子の演技力は想像以上だ。この映画は北川が観たくて観たようなものだが、その点では期待以上であった。(これだけできる人が、「謎解きはディナーのあとで」ではなんであんなことに……?)

配役

  • 錦戸亮の出演する映画、テレビドラマは見たことがないはずなのに、なぜか顔に覚えがあり、不思議だったが、「県庁おもてなし課」の主役だった。予告編を何度も見たため、覚えてしまったのだ。