窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

つかみはオッケー「真田丸」第1回「船出」

期待半分不安半分で見たが、これは面白かった。今年は期待できる……?(毎年のように裏切られているのでこわごわ)

出演

真田家
武田家

スタッフ

感想

平清盛」と似ているな、と思った。真田昌幸が魅力的なのだ。主人公の幼少期は何もできないから、話を引っ張っていく序盤の主役が必要だ。特に真田幸村(信繁)は戦国最強の武将とも言われる有名人ではあるが、活躍したのは大阪の陣のほんの数年。そこに到るまで話を盛り上げるためには、昌幸に頑張ってもらわなければいけない。

僕の知っている昌幸は、舌が二枚も三枚もある、要は「信用ならない人」で、弱小真田が戦国の世をわたっていくためにはこうした遣り方も必要だったのだろうが、魅力ある人物とは思っていなかった。しかし草刈正雄の昌幸は、確かに食えない人物ではあるが、とても魅力的である。この人物造形はとてもうまいと思った。

子役を出さずいきなり本役でいったのも潔くて好感が持てる。僕は、最初の数回は子役で行けばいいと思っている。山本八重も杉文も子役がとても魅力的だったし。でも幼いうちから本役の人に演じさせようとし、その結果20代、30代の役者に10代の、場合によっては6歳7歳8歳を演じさせるという無理をするくらいなら、幼少時代を描かず、いきなり青年時代から描けばよいと思っていた。今回はまさにその通りになった。

武田勝頼が魅力的に描かれているのが泣かせる。信玄公が天下統一を狙えるところまで来ながら、勝頼が後を継いだ途端にあっという間に武田家はなくなったしまったのだから、普通はあまりよくは描かれない。多くの人は(自分もだが)長篠の戦で織田・徳川連合軍にあっさり退けられたこと(のみ)を記憶しているだろう。しかし本作では、偉大すぎる父との葛藤や、本人もまた優れた武人であると描かれ、感銘を受けた。しかし戦国の倣いとはいえ、部下の離反が相次ぐのはつらいな。

大河を見ていていつも思うが、露骨は主人公ageは少々うざい。本作でも、愚鈍な長男に才気あふれる次男、という描き方がそこかしこに見られた。源三郎だってこれから長く活躍するのである。今後に挽回のシーンがあると期待したい。

高畑淳子はあんな役ばっかり(篤姫でもあんな役だった)。

松の喋り方が気になる。
(2016/2/7 記)

追記

勝頼に対し、「武田は決して滅びません、この真田のある限り」と言っておきながら、城に戻るやいなや、信幸・信繁に「武田は滅びるぞ」と漏らしたり、家族に対しては「岩櫃城は天下の名城、ここにいれば安全」と言っておきながら、信幸・信繁に「ここも危ない」と話し、「ここにいれば安全とおっしゃったではありませんか!」と詰め寄る信幸に「そんなこと誰が言った!」と言い返すくだりは、もちろん爆笑パートである。草刈正雄が真面目くさった顔でこれをやるから実にオカシイのだが、一方で、戦国きっての変節漢といわれた昌幸の「食えなさ振り」もよく表われている。うまいシーンである。(「お江」でもこういうシーンがほしかった。笑えない、詰まらないギャグが多過ぎた。)

うまいといえば、徳川家康北条氏政上杉景勝織田信長も一瞬だけ映ったが、それぞれに印象的であった。特に家康が爪を噛んでうろたえるなど、なんとなく小物っぷりを曝け出していて、興味深い。

木曽義昌(勝頼の弟)が裏切った、と動揺する家臣団を穴山梅雪がまとめ、真田昌幸に「他にも裏切る者が出てくるだろうが、われらだけはお館様をお守りしよう」と誓い合った直後にその穴山梅雪が離反。その真田は信用できないと勝頼に進言した小山田信茂が裏切り。落ち目の大名につきまとう話であろうが、切ない。勝頼が「いい人」に描かれているので切なさが際立っている。小山田信茂の一族の茂誠は、信茂が裏切ったため、自分も窮地に陥ったことに気づき、号泣。初っ端から妻の松と異様にラブラブだったのは、ここに落とすためだったか。

それにしても小山田信茂は、岩櫃城に行く勝頼を押しとどめて、自らの居城である岩殿城に連れてきたが、入城の直前に裏切って勝頼を放り出したのは、いったい何がしたかったのか。勝頼の首を手土産に寝返る、というならそれはそれでわかるが、そういうわけでもないし。どうせ裏切るなら岩櫃城に行かせてやればよかったのに。
(2016/2/14 記)