窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「太陽の子」(NHK)

題名

  • 太陽の子(GIFT OF FIRE)

放映日

  • 2020年8月15日

出演

スタッフ

  • 作・演出:黒崎博

概要

舞台は京都。朝倉世津とその祖父は建物疎開で家を失い、近所の石村家の離れに居候することになる。

石村家の長男・修は京都大学の研究生で、専門は「アインシュタインと同じ」。実は修の研究室の教官は原子物理学の権威であり、陸軍に命じられて原子力を利用した新型爆弾の開発を進めていた。陶器屋でウランを調達してもらい、手作りの遠心分離機で核分裂を起こすウランを抽出しようとするが、最低10万回転が必要なのに3万回転までしか上がらない。その陶器屋の娘さんも、ウランを手に入れようと大阪まで出かけて空襲に遭い、帰らぬ人となる。

裕之は軍人だが肺病を患い、療養のために自宅に帰ってくる。しばらくはのんびり過ごそうと、ある日修、裕之、世津の三人で遊びに出かけるが、裕之は海に飛び込んで発作的に自殺を図る。気づいて止めた修に、裕之は「本当は怖いんだ……」と漏らす。

またある日、石村兄弟は幼い頃から世津のことが気になっていた様子で、お前、世津が好きなんだろう、と言い合っていると、声を聞いた世津がやってきて、自分は結婚などしないと言う。結婚しないでどうするんだと驚く二人に、教師になるのだと答える。

「日本はこの戦争でお金も物も使い果たした。残るは人だけ。人を育てないといけない。でも今は学校の先生もみな戦争に行ってしまって誰もいない。だから自分が教師になって、子どもたちを育てる。結婚は、そのあとじゃ」「世津は戦争が終わったあとのことを考えているのか、偉いのう」「男の人はそんなことも考えないで戦争をしているのか!」それを聞いた裕之は、そうだ、未来の話をしよう、戦争が終わったあとの世界のことを、と言って笑う。

しかし裕之は、仲間が次々と死んでいくのを知って、自分だけのうのうとしていることはできないと、矢憶測の期限を待たずして部隊に復帰。必ず生きて帰ってくるようにと約束させられるが、復帰した裕之には特攻の指令がくだった。

京都大学原子物理学研究室では、新型爆弾の開発に疑問を持つ者も出て来た。通常爆弾とは威力の桁が違うのだ。教授が言う。戦争はエネルギーの奪い合いから始まった。この方法で原子核からエネルギーを取り出すことができれば、そのエネルギーは無限大だ。もう戦争をする必要がなくなる。戦争がなくなったあとの世界で覇権を握るのは、この方法を最も早く実用化した国だ。そのためにやるのだと。

が、広島に新型爆弾が落とされてしまう。現地へ行った教授や修らは、そのあまりの威力、悲惨な結果に言葉を失う。……

雑感

なんといっても「三浦春馬の遺作」のイメージが強過ぎて、最初に帰宅した時に笑顔で「ただいま」と言った春馬にやられ、自殺をしようとした姿にやられ、「笑顔で特攻します、必ず戦果をあげてみせます」という手紙を読んでやられ……。こんな役をやったのがいけなかったんじゃないかとさえ思ってしまう。

日本は原爆には強いアレルギーがあって、日本も開発をしていたというと驚く人が多いけど、今回ドラマで描かれた程度のことは、当然していただろうと思う。そこまで学問のレベルは低くはないはずだ。しかし、劇中でも「開発を急がせるくらいなら電力くらいなんとかしろよ」と研究生がぶつぶつ言うシーンがあるが、狭い研究室、手作りの遠心分離機、すぐ停電になってしまう電力供給、ウランの入手に陶器屋に頼んでいる時点で「アチャー」という感じである。マンハッタンではどのような設備だったか詳細はわからないが、京大にアインシュタインがいたとしても、ここで開発するのは無理だっただろう。

世津が、戦争が終わったあと、お金も物もない世の中で最も大事なのは人材育成だとするのは誠に慧眼である。頭がいいはずの修らが、どうしたら戦局を有利にできるか、しか考えていなくて、その後の話をされて虚を突かれたのが興味深い。

配役

有村架純にこのような役が務まるか、少々不安だったが、見事にやり切っていて驚いた。黒崎博は「ひよっこ」の時の監督だそうで、有村架純の能力を見抜いての起用だったのだろうが、こんな役もできるのだ。柳楽優弥は期待通りの名演技。三浦春馬は正視できなかったけど。

ただ、不満がなくもない。修、裕之、世津の年齢がどういう設定だったのかはわからないが、柳楽優弥三浦春馬は誕生日が10日ほどしか違わない同い年(30歳)で、兄弟役と聞いた時にどちらが兄なのか戸惑った。修は大学院を出た後も研究室に残っている研究生ということなら、30歳という年齢もおかしくはないが、裕之は、特攻を命じられるにしては年がいっていないか。また、有村架純は27歳。「結婚はそのあと」というセリフは20代前半の女性なら問題ないが、20代後半の女性だと違和感が残る。

大河ドラマでも、役の上の年齢を無視したキャスティングが日常茶飯に行なわれているが、僕は役者は大勢いるのだから、年齢も近い人を充ててほしいと思っている。


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