- 第07週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」
放送日
- 2025年11月10日(月)
概要
ヘブンの女中になる決意をした、トキ。錦織の立ち会いの元、トキはヘブンに女中になる挨拶をするのだが、まさかのヘブンに断わられてしまう。困惑するトキと錦織に、ヘブンは「アナタ、ブシムスメ、チガウ!」と怒りをあらわにする。なんとか誤解をとき女中となることが認められたトキだったが、家族には言えるわけもなく、花田旅館で働くことになったと告げる。(公式サイトより)
ヘブンはトキの手足が太いことから、彼女は単なるしじみ売りで士族の娘ではない、士族ならもっとほっそりしているはずだと主張する。が、錦織が天国町で会ったラストサムライの孫娘だと説明すると納得し、前金で20円支払う。
帰宅したトキは半分の10円を洋封筒から縦型の和封筒に入れ直し、皺をつけ、三之丞に会いに行く。そして「これでおタエ様のために部屋を借りてください」と差し出す。三之丞は、トキからお金をもらうわけにはいかないと断わるが、トキは、実はこれは傳様から預かっていたお金だと説明、三之丞はそれならと受け取って去る。
感想
早朝、錦織はトキをヘブンのところに連れて行く。ヘブンは浴衣姿で、身体に合わないから露出が多い。部屋に敷かれた布団は片付けられていない。ただの独身男の起き抜けの風景だが、トキの立場でこれらを眺めると、単に猥雑だというだけでなく、いったいこの部屋でこれから何をすることになるのかを想起させ、なかなか恐ろしい。
その上ヘブンは腕を見せろ、足を見せろという。当時は腕だって女性はみだりに他人の視線に晒すものではなかった。まるであっちの方の品定めをされているようで、おトキは恐怖と羞恥がないまぜであっただろうが、従う。錦織が視線をそらし、見ないようにしていたのが救いだ。もっともヘブンに猥褻な意図はなく、ブシムスメの手足ではない! と言い出すわけだが。
タエのような女性は、きっと手足はほっそりとしているのだろう。しかしヘブンさんよ、そういう女性は女中なんか決してやらず潔く物乞いになるのだよ。まかりまちがって女中になっても、料理も掃除もできないからな。落ちぶれ士族の娘はたくましく機を織り、しじみを売るのだ。そりゃ腕も太くなるさ。なお、16話で森山に「腕が太い」とからかわれるシーンがあったとの指摘がtwitterであった。残念ながら自分の記憶にはない。
トキはさっそく半分を雨清水に差し出す。どういう形で救うつもりなのかと思っていたが、そういうことか。三之丞の仕事に対する考え方を根本的に正さないことには、一時的にお金を出したところでその金が尽きたらそれで終わりだと思うが、間もなく冬が来るとなると、そんな悠長なことも言っていられないのかも。とにかく暖かく住めるところを確保しないと。仕事の話はそのあとだ。
ただお金を渡しても受け取るとは思えなかったが、「傳から預かっていた」ということにしたのか。そのために封筒を入れ替え、札に皺を作るなど手の込んだことをしたわけか。三之丞は「そういうことなら」と受け取るが、「礼も言わなかった」との声あり。この時の三之丞は、「なぜ父はそのようなお金を、母でも私でもなく、おトキに預けたのだろう、そこまで自分は父から信頼されていなかったのか」という思いで頭が一杯だったのではないか。そもそも父の金ならトキに礼を言う必要もない。
ちょっと考えればそんなことはあり得ないとわかるはず。しかし空腹で、仕事も断わられ続け、冷静の判断ができる状態ではなかった……ともいえるが、冷静になっても、トキがこのような大金を持っているわけがないから、預り金だとでも考えないと辻褄が合わなくなる、とは言える。まさか姉が身を売って得た金だとは想像できまい。
トキがそんな思いまでして作った金だが、三之丞はこれを有効活用するだろうか。帰宅したタエは「今日の夕餉はなしですね」と言う。一銭ももらえなかったのだろう。その時即座に報告すべきだったが三之丞は黙っていた。なんだかくだらないところにつぎ込んで溶かしてしまうのではないかという懸念が拭えない。
三之丞と別れたあと、トキは黙って道を歩く。セリフはなく、ナレーションもなく、劇伴と高石あかりの表情だけですべてを語る演出が素晴らしい。



