窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「ばけばけ」(031)

  • 第07週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」

放送日

  • 2025年11月10日(月)

概要

ヘブンの女中になる決意をした、トキ。錦織の立ち会いの元、トキはヘブンに女中になる挨拶をするのだが、まさかのヘブンに断わられてしまう。困惑するトキと錦織に、ヘブンは「アナタ、ブシムスメ、チガウ!」と怒りをあらわにする。なんとか誤解をとき女中となることが認められたトキだったが、家族には言えるわけもなく、花田旅館で働くことになったと告げる。(公式サイトより)

ヘブンはトキの手足が太いことから、彼女は単なるしじみ売りで士族の娘ではない、士族ならもっとほっそりしているはずだと主張する。が、錦織が天国町で会ったラストサムライの孫娘だと説明すると納得し、前金で20円支払う。

帰宅したトキは半分の10円を洋封筒から縦型の和封筒に入れ直し、皺をつけ、三之丞に会いに行く。そして「これでおタエ様のために部屋を借りてください」と差し出す。三之丞は、トキからお金をもらうわけにはいかないと断わるが、トキは、実はこれは傳様から預かっていたお金だと説明、三之丞はそれならと受け取って去る。

感想

早朝、錦織はトキをヘブンのところに連れて行く。ヘブンは浴衣姿で、身体に合わないから露出が多い。部屋に敷かれた布団は片付けられていない。ただの独身男の起き抜けの風景だが、トキの立場でこれらを眺めると、単に猥雑だというだけでなく、いったいこの部屋でこれから何をすることになるのかを想起させ、なかなか恐ろしい。

その上ヘブンは腕を見せろ、足を見せろという。当時は腕だって女性はみだりに他人の視線に晒すものではなかった。まるであっちの方の品定めをされているようで、おトキは恐怖と羞恥がないまぜであっただろうが、従う。錦織が視線をそらし、見ないようにしていたのが救いだ。もっともヘブンに猥褻な意図はなく、ブシムスメの手足ではない! と言い出すわけだが。

タエのような女性は、きっと手足はほっそりとしているのだろう。しかしヘブンさんよ、そういう女性は女中なんか決してやらず潔く物乞いになるのだよ。まかりまちがって女中になっても、料理も掃除もできないからな。落ちぶれ士族の娘はたくましく機を織り、しじみを売るのだ。そりゃ腕も太くなるさ。なお、16話で森山に「腕が太い」とからかわれるシーンがあったとの指摘がtwitterであった。残念ながら自分の記憶にはない。

トキはさっそく半分を雨清水に差し出す。どういう形で救うつもりなのかと思っていたが、そういうことか。三之丞の仕事に対する考え方を根本的に正さないことには、一時的にお金を出したところでその金が尽きたらそれで終わりだと思うが、間もなく冬が来るとなると、そんな悠長なことも言っていられないのかも。とにかく暖かく住めるところを確保しないと。仕事の話はそのあとだ。

ただお金を渡しても受け取るとは思えなかったが、「傳から預かっていた」ということにしたのか。そのために封筒を入れ替え、札に皺を作るなど手の込んだことをしたわけか。三之丞は「そういうことなら」と受け取るが、「礼も言わなかった」との声あり。この時の三之丞は、「なぜ父はそのようなお金を、母でも私でもなく、おトキに預けたのだろう、そこまで自分は父から信頼されていなかったのか」という思いで頭が一杯だったのではないか。そもそも父の金ならトキに礼を言う必要もない。

ちょっと考えればそんなことはあり得ないとわかるはず。しかし空腹で、仕事も断わられ続け、冷静の判断ができる状態ではなかった……ともいえるが、冷静になっても、トキがこのような大金を持っているわけがないから、預り金だとでも考えないと辻褄が合わなくなる、とは言える。まさか姉が身を売って得た金だとは想像できまい。

トキがそんな思いまでして作った金だが、三之丞はこれを有効活用するだろうか。帰宅したタエは「今日の夕餉はなしですね」と言う。一銭ももらえなかったのだろう。その時即座に報告すべきだったが三之丞は黙っていた。なんだかくだらないところにつぎ込んで溶かしてしまうのではないかという懸念が拭えない。

三之丞と別れたあと、トキは黙って道を歩く。セリフはなく、ナレーションもなく、劇伴と高石あかりの表情だけですべてを語る演出が素晴らしい。


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「ただ、瞬く」

一昨年、昨年の公演を見てなかなか面白かったので、今回も見に行った。

雑感

  • 劇団は創立40年なのだそうだ。その節目に上演したのは、「またたき」という架空の劇団の50年の歴史を振り返るというもので、なかなか興味深かった。が、いくつかの短いエピソードをナレーションでつないでいく形式で、ひとつひとつの話は深みがない。それぞれの話はもちろんつながっていて、今風に言うなら伏線が回収されていくのだが、これは連続ドラマなどで生きるやり方で、ひとつの公演ではどうだろう。
  • 登場人物は15人。覚えられないほどではなかった。出演者の顔を少しずつ覚えてきたせいか。
  • 公演時間は約1時間半。以前は2時間くらいだったような気がしたので、あれ、もう終わり? と思ったが、見る側の体力的にはこのくらいがいい。
  • 2,500円のチケット代が強気の設定だと以前書いたが、他のアマチュア劇団の公演をちょっと見てみたら、今どきは2,500円は普通みたいだ。

過去記事

「ばけばけ」(030)

  • 第06週「ドコ、モ、ジゴク。」

放送日

  • 2025年11月7日(金)

概要

ヘブンは錦織と一緒に借家へ引っ越しをしていた。新居に満足気なヘブンだったが、いまだ女中が決まらないことに、いらだちをおぼえる。一方、三之丞と再会したトキは、松江を離れたはずのタエと三之丞が再び戻ってきた経緯を聞くことになる。トキはその帰り道に再び、物乞いをするタエの姿を目にするのだった。(公式サイトより)

感想

花田旅館は喫茶店のような場所も併設しているらしい。そこでトキと三之丞は会う。トキはお茶と団子を頼もうとするが、三之丞は何もいらないと拒否、お茶を一杯だけ注文する。

その時三之丞が語ったこれまでの経緯は、ほぼ想像通りのものだった。母(タエ)は「働くくらいならいさぎよく物乞いをする」と言ったという。いさぎよく物乞い……なんというパワーワード……

冬になる前になんとかしなければ凍死するかも、その前に餓死かな、とつぶやく。

トキは錦織のところへ行き、女中になると告げる。

という流れで、twitterでは、松野家の借金のためだけだったら断固拒否だったトキが、実母の窮状を見かねてついに女中になるのか~的なコメントを散見したが、私はトキが女中になるとどうして雨清水家を救えるのかがさっぱりわからない。

稼いだお金の半分を実家に入れ、半分を雨清水家に入れるとでも言うのか。そのような施しをタエが受け入れるとは思えない。そもそもそれは雨清水家を救うことにはならない。今の雨清水家に必要なのは、時代が変わったことを受け入れ、今の自分たちにできる仕事を探し、日々の糧を自ら手にできるようにすることだ。特に三之丞は、これから長い人生を歩まなければならない。なまじ援助をしたら自立を妨げることになる。もちろんほっておいては長い人生も何も、この先の冬を越せないかも知れないわけだが。

くどくどとした説明がないのがいいところでもあるが、トキが雨清水家をどう救おうとしているのかは気になるところだ。



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「ばけばけ」(029)

  • 第06週「ドコ、モ、ジゴク。」

放送日

  • 2025年11月6日(木)

概要

物乞いとなったタエを見かけてしまったトキだったが、声をかけることができず逃げ帰る。その夜、ヘブンの女中が決まらず焦る錦織が、再びトキを訪ねるのだった。そんなある日、司之介が働く牛乳屋に、三之丞が仕事を求めて訪ねてくる。その様子を司之介から聞いて、タエと三之丞を心配する松野家だが、トキはタエのことを告げずにいた。(公式サイトより)

三之丞は牛乳屋の社長に、松江で雨清水といえば知らぬものはなく、自分は社長に相応しい格を備えていると言って社長をやらしてくれるよう申し入れるが社長は怒って店から追い出す。その後あちこちの店で同じことをし、どこでも相手にされない。あるところでは突き飛ばされた拍子に水たまりに尻もちをついて泥だらけになってしまう。そこで手を差し伸べてくれたのはヘブンだったが、三之丞はその手を拒否する。

廃寺へ行くとそこには縁側で位牌に向かって正座するタエがいた。ここで暮らしているのだろう。三之丞が戻るとゆっくり微笑んで「おかえりなさい」と声をかける。そしてそして、物乞いで使った物入れを差し出し、これで何か買ってきてくれと言う。そこには一銭入っているだけ。三之丞はその金で焼き芋を一本買う。

感想

昨日とは違った意味でまた恐ろしい回だった。

三之丞の主張は荒唐無稽に見えるが、少し前まではこの考えは間違ってはいなかった。大河の「べらぼう」で、松平定信が老中筆頭の座に就けたのはなぜか、吉宗の孫だからではないか。少し前に田沼意次という政治家がいたが、政治家としてどれほど優れているかは結局評価されず、何かにつけて足軽の出のくせにと言われたではないか。

牛乳屋の社長も、なにも怒らなくても、「頑張ればいずれ自分の店を持てるようになるよ、まずは配達からだな」ぐらい言ってやってもよかったと思うが、なまじ雨清水家なんぞの名前を出されたため、昔武家に搾取され、虐げられた記憶が蘇ってしまったのかも知れない。

三之丞、社長というのは何をする人なのか知っているか。以前、織物工場の社長を任されていた時期があったというが、その時キミは社長業の務めを果たしていたといえるか。まあ、わかっているんだろう、わかっていてもそれしかすがるものがないんだろう。

タエもなあ……。お金を恵んでもらった時に、ニコッと笑って頭を下げ、「だんなさま、ありがとうごぜえます」と言えれば、もう少しお金ももらえたろうが、それが言える人ならば物乞いになることもなかったんだろう。

勝海舟が幼少のみぎり、貧しくて正月なのに餅も買えず、哀れに思った親戚が餅を分けやるからおいでと言ってくれて、喜び勇んでもらいに行ったけれど、帰り道、オレはいったい何を浅ましく喜んでいるんだ、武士が施しを受けていいのか、と全部川へ投げ捨ててしまった逸話がある。それが武士の矜持であり、美談とされた時代があったのだ。そして、その勝海舟はまだ生きているのだ。タエが悪いわけではない。とはいえ、タエ以外の誰が悪いわけでもないのがつらい。

タエたちは松江を引き払った後、親戚の家に身を寄せたというが、恐らくその家も裕福ではなく、家族全員で働いているのにタエと三之丞だけが居候のくせに何もせず、持て余した親戚から追い出された、というところなのではないか。もしかしたら一軒だけではなく、親戚をたらい回しにされ、いよいよ行くところがなくなって松江に来たのか。

タエたちが松江に戻って来たのは、三之丞の就職(?)活動のためには雨清水家の名前が通じる松江の方が良いと判断したからだろうか。しかしそのために、タエのあの姿を、昔の知り合いにも見られることになってしまった。トキ以外にも見た人はいるだろう。もうそれを恥ずかしがってもいられないか。

その他雑感

  • 牛乳屋の社長は司之介が朝遅れてヘブンに売り損ねていることを知って、ネチネチ文句を言っていた。ということは、ヘブンが高く買ってくれることを知っていることになる。ということは、司之介は差額をくすねず、ちゃんと高く売れたと報告したのか(もっとも、20銭で売れました、と報告して20銭懐に入れているかも知れない)。
  • 司之介は、社長の前では殊勝に缶(?)を磨いているが、社長がいなくなるとさっそくサボり始める。そういうところがなあ。でも、案外こうやってムキになり過ぎずのらりくらり躱していくのが、長く続けるコツなのかも知れない。
  • 三之丞、虫がたかったお供え物を食べようとした(なんとかこらえたが)。いったい何日食べていないんだ……
  • 母から1銭貰って焼き芋を一本買った三之丞は、その匂いにつられてつい一人で全部食べてしまうかと思ってハラハラした。さすがにそれはなく、ちゃんと母親の許へ帰ろうとした。
  • 松野の借金のためには女中になる気はなかったが、産みの親の窮状を知り、それを救うべく女中を引き受けるのでは、という声がチラホラ。しかしタエと三之丞に必要なのは資金援助ではなく、自力で金を稼げるようにすることだ。だから、そんな展開にはならないと思うが。



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「ばけばけ」(028)

  • 第06週「ドコ、モ、ジゴク。」

放送日

  • 2025年11月5日(水)

概要

平太とのケンカから、旅館を出て家を借りて暮らしたいヘブン。その世話をする女中探しを任された錦織は、武家の娘を女中にしたいというヘブンの注文に一致するトキに仕事を依頼する。高額報酬の女中、つまり洋妾(ラシャメン)になるのではと疑ったトキは、その誘いを断わるのだった。その数日後、トキは街中で思いもがけない人物の姿を目にする。(公式サイトより)

それは物乞いをするタエだった。みすぼらしい着物を着て、道端に正座しつつ、背筋をすっと伸ばし、金を恵んでもらっても頭も下げない、哀しくも気高い姿だった。

感想

長年朝ドラを見ていて、腹を抱えて笑ったこともあるし、泣けて涙が止まらなかったこともある、でも「怖い」と思ったのは初めてかも知れない。ぞーっとした。喩えようのない恐怖感に襲われ、心臓がバクバクした。番組を見終わっても、長い間そうした感覚が続いた。

しかしこの、どんなにみすぼらしい恰好をして、底辺の暮らしをしていても気高さを失わない、凛としたものを示せるのは、北川景子以外なかろう。この役が務まるのは北川景子しかいないし、北川景子の役者としての魅力を最大に引き出した役だといえる。

とはいえ、ここまでやるとは。

その他雑感

  • なみではダメだとヘブンが思ったのは、農家の娘だと知ったからだ。士族の娘がいいのだ。身分差別をしているつもりはないのだろうが、結果的に、最底辺の仕事と見做される外娼でさえ務まらないといわれてしまったなみの心境は察するに余りある。
  • ウメの給金が90銭、サワの給金は4円、トキに提示された給金は20円。ウメの給金は少な過ぎるようにも感じられるが、女中は住み込みだったと考えると、食住が保証されているわけで、悪くないのかも知れない。「カムカムエヴリバディ」の雪衣も住み込みだった。「ブギウギ」の大野さんはどうだっただろう。
  • 当時は水道光熱費がかからない(というか、電気もガスもない)。スマホWi-Fiもない。漫画雑誌も音楽CDもNetflixもないわけで、贅沢をしなければ案外生活費は低く抑えられたのかも知れない。
  • 松野の家はお金がほしい切実な理由があり、今また雨清水家の没落も目にしてしまった。しかし、洋妾は普通の遊女よりさらに立場が低い。遊女になることをこれまで拒み続けて来て、今お金に目が眩んで洋妾を引き受けるとは思えないが……



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「ばけばけ」(027)

  • 第06週「ドコ、モ、ジゴク。」

放送日

  • 2025年11月4日(火)

概要

トキはフミと花田旅館にしじみを売りに来たところ、ヘブンと平太がケンカ中だと知る。登校したヘブンから旅館を出ていきたいと家探しを依頼された錦織は、さらに知事からヘブンの世話をする女中も見つけるよう難題を突き付けられる。ヘブンの女中を探しているとうわさを聞きつけ、なみが候補として名乗り出る。(公式サイトより)

感想

ウメの右眼の痣が消えていないのを見たヘブンは医者に行ったか訊き、行っていないと言われたため激怒。あれほど約束したのにというわけだ。こんなところでは暮らせない、出ていくと言い放ち、あげくのはてには錦織にまで八つ当たりをする始末。「この旅館を薦めたのは誰か? 錦織、選ぶのヘタ!」

こちらが準備した旅館を袖にし、勝手に花田旅館にすると言い出したのは自分だろうと言い返してやればいいのに、錦織はそれをしない。言いたいことは口にした方がいいよ。江藤知事に対しても。

さて、一人暮らしは無理だから女中が必要というのはわかる。そのことを知ったなみが立候補するが、葛藤もある。「らしゃめん」が世間からどういう扱いを受けるか、わかっているのだ。そのことをトキや梶谷記者に打ち明ける。それでも自分はここを出ていきたい、そのためならなんでもすると。せめてあんたたちは、石を投げないでね。

そしてヘブンに、手料理を食べさせ、ヘブンもおいしいと満足。また8人兄弟の長女で幼い頃から家の用事を手伝わされてきたから、掃除も洗濯も問題ないとアピール。これで決まったかに見えたが……

深夜、錦織がトキを訪ねて来る。女中をしてくれないかと。大吉「なみさんはオーディションに落ちたんですね?」(あさイチで)

なぜなみでは駄目なのか驚きだが、twitterでは二つの説が出ていた。

  1. ヘブンにはイライザという思い人がいる。期待しているのは純粋な女中仕事だけだが、なみは夜の相手もする気満々。それがダメだった
  2. なみは自分を身請けして、ここから出してくれることを期待しているが、ヘブンにその気はなく、それだけの金もない

「8人兄弟の長女で……」と言い出した時に顔をしかめた気がするが、それの何が気に入らなかったのかはわからない。

さておトキはどうか? 恐らく給与はいいだろうから、借金のことを考えると(急に取り立てが厳しくなったことも併せると)引き受けざるを得ないか。しかし仮に女中仕事だけだとしても、「唐人お吉」の例もあるように、世間はそうは見ない。遊女になるよりもっとつらいことかも知れない。錦織もよくこんな話を素人に持ってくるよなぁ……。

その他雑感

  • トキは取り立てのしじみではなく、剥き身を売ることに。「すぐにしじみご飯ができる」を売り文句に、その分高く売ろうとするのだ。早く起きてフミと二人で殻を剥いているという。森山の圧でこうした工夫をすることにしたのだろう。逆にいえばこれまで何年もこうした努力はしていなかったことになる。やはり取り立てが甘かった?
  • しかし世間は、「働いているのはトキとフミだけ」という認識なのね。司之介の配達が遅いため間に合わず、牛乳が飲めなくてヘブンがイライラしているとの言もあったが、これは主人の顔を見たくないヘブンが早起きしてさっさと出勤することにしたためで、司之介を責めるのはちょっとかわいそう。



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「ばけばけ」(026)

  • 第06週「ドコ、モ、ジゴク。」

放送日

  • 2025年11月3日(月)

登場人物

  • 前原瑞樹(森山銭太郎、森山善太郎の子)
  • 杉田雷麟(錦織丈、松江中学の生徒)

概要

トキや花田旅館の人々に見送られ、ヘブンは錦織と松江中学校へ初登校する。果たしてヘブンの授業は生徒たちに受け入れられるのか。一方、トキは小学校で授業を教えることになったサワを祝う準備中。そこへ、借金取り・森山の息子、森山銭太郎が松野家に乗り込む。さらに、家の外には松野家をのぞき見る怪しい影も。(公式サイトより)

感想

ようやく森山登場。善太郎は先月ぽっくり逝ったそうだ。遺言は「もっと厳しく取り立てればよかった」で、そのため銭太郎は大声をあげて部屋中金目の物を探し回る。文句を言う勘右衛門に「じじいも刀なんぞ磨いている暇があったら働け」と言い放つが、このセリフは視聴者の共感を得たのではないか。

しかし借金取りのすべきことは部屋中を漁ることではなく、きちんとした返済計画を立てさせることだと思う。いよいよにっちもさっちもいかなくなり、あとは少しでも金目の物を巻き上げてあとは追い出すだけ(「布団はぎ」)なら別だが、長期にわたって返済してもらうためには、彼らも健康で長生きをしてもらわなければならない。そこのところを森山家は松野家に対してどう考えていたのかが気になる。まあ銭太郎が出て来たということは、少しは話が進むだろう。

その他雑感

  • ラストで松野家を覗いている人影があった。だれだかわからなかったが、オープニングロールからすると、これが雨清水三之丞なのだろう。よかった、李光人クンはまだ登場するのだ。
  • サワは松江小学校の教師になり、ヘブンと同じ日が初登校だった。
  • イライザは死んだのかと思っていたが、まだ生きているのか? だとしたら、なぜ日本に同行しなかったのだろう?
  • ヘブンが中学生に向かって話した英語はわかりやすく、私は全部聞き取れたが、既にそれなりの英語力がありそうな中学生が全く聞き取れなかったという。現代と違ってラジオ講座もなければYouTubeもないから、ネイティブの話す英語を初めて聞いたのだろう。それでは戸惑うのも無理はない。
  • ヘブンは週20時間教えるという。ひとクラス5時間×4クラスという計算か?



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「ばけばけ」(五週目までを見て)

今週から始まったとしてもさほど違和感はない。なぜならば番組の最重要人物であり、主人公と結ばれるはずの人が登場したからだ。そして今週だけを見ると、なかなか一筋縄ではいかない展開であり、人情の機微もよく描かれていて、コメディとしても楽しい箇所があり、つまりよくできていた。

しかし本作は、わざわざ一ヵ月かけて「それ以前」を描いた。そこには幼い時代の描写もあるし、産みの親との関係、最初の夫の存在などもあるが、この一ヵ月を貫くものは「借金」である。

なにも司之介があの時金を借りたのが悪いというのではない。なみはもちろん、サワも、チヨも、せんも、親の借金を返すために働いている。士族はどういうルートを通っても、没落する運命のようだ。うまくやっていたかに見えた雨清水家も、内情は火の車であり、結局は家を畳むしかなくなっていた。

家に借金があるからこそ、サワもトキも学校を続けることができず、なみは遊郭へ売られた。せっかく婿に取った銀二郎が出て行ったのも、詰まるところそういうことだ。皆が人生を狂わされているのである。そして、一時東京へ逃れたトキが松江へ帰って来たら遊郭待ったなしのはずだった。

それなのに、今週は借金の話が全く出て来ない。トキが「借金があるから大変」と愚痴ったり、サワが「教師になったからここから出ていく日も近いね」と言われて「借金はかなりたくさんあるから、まだまだ出て行けない」と言ったりするシーンはわずかにはある。サワは教師になり、そこそこの給与が当面は保証されるからいいが、トキのしじみ売りと司之介の牛乳配達とフミの内職ではいくらにもならないのではないかと思う。この状況で森山をどう説得したのか。

トキはヘブンが船でやって来るのを眺めたり、花田旅館にシジミを売りに行っておしゃべりで時間をつぶしたり、かなりのんびり過ごしているように見える。主人公がただひたすら働いて、ストーリーに絡んでくれないと困る、という事情はあるだろうが、借金の悲壮感がまるで感じられない。

これほど緻密に作られてきたドラマが、肝心かなめの話をぼかすのはなぜか。

19話まではすべてが神回だと思い、朝ドラの最高傑作を更新したかとすら思ったが、一気になんとかいう沖縄ドラマと同格になってしまった。

まさか最後まで語られないということはないだろうが、よほどうまい言い訳を用意してくれないと、今そのことが描かれなかった不満は解消しない。
(2025-11-04 記)


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「ばけばけ」(025)

  • 第05週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」

放送日

  • 2025年10月31日(金)

概要

ヘブンの初登校前日。いまだヘブンとコミュニケーションがとれず焦る錦織は、知事からヘブンのとある秘密を知らされる。迎えた登校日。花田旅館にしじみを売りに来たトキは、平太らとヘブンの登校を応援しようとするが、そのヘブンが部屋から出てこない。錦織が迎えに駆けつける中、トキはヘブンとの出会った時の違和感を思い出す。(公式サイトより)

ヘブンは教師ではない、日本が好きで旅行記を書くためだけにやってきた記者だ、と知事は錦織に語った。

トキは錦織に、来日初日に握手した時、ヘブンさんの手が震えていた。ヘブンさんも怖いのではないか、と語る。

錦織はヘブンに、教師でなくていいんです、日本語がわからなくていいんです、今のあなたの話を生徒にしてやってくださいと呼びかけ、ようやくヘブンは部屋から出て来る。

感想

21話でヘブンと握手した時、トキが怪訝な顔をしていたのはこれだったのか。トキはこの時から、外人と言ったってわれわれとたいして変わらない、と言っており、その後も異人だ天狗だと、あがめたり蔑んだり距離を置いて接していた他の人とは違い、トキだけが人として接しようとしていた、だから彼が内心では怖がっていたということにも気づいたのだ。

しかし、この段階でヘブンにとってトキは全く視界に入っていないというのが面白い。



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「ばけばけ」(024)

  • 第05週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」

放送日

  • 2025年10月30日(木)

概要

しじみ売りに花田旅館を訪れたトキは、主人の平太やツル、ウメと共に、滞在するヘブンと徐々に交流を深めていた。しかし、ウメの目の腫れがきっかけでヘブンの態度が一変する。一方、世話役である錦織はなぜかヘブンに避けられ、中学校での授業内容を話せずにいた。ある日、困っている錦織を見かけたトキは、ヘブン探しを協力することになる。(公式サイトより)

感想

ウメの目の腫れを気にし、医者へ連れて行くよう迫るヘブンだが、平太は「このくらいのケガでうるさいなぁ」と呟き、それを新聞記者が「ガタガタ言うな」と訳してしまう。われわれもよく見ないとわからない程度のもので、自分も「この程度で……」と思うが、子どもの頃の些細な事件がきっかけで右眼の視力を失ったヘブンは、目の異常をほっておけなかったのだ。なるほどねえ。

その他

  • ヘブンはなみのところに頻繁に出入りしている。錦織は女遊びをしていると思い込んでいるが、日本の文化を教えてもらっているだけで、(身体の関係は)何もないと言う。遊女は大勢いるのに、なみの努力が実ったか?
  • そこへ乗り込んで来たのは勘右衛門。ペリーの恨みだと殴りつけようとするのはいただけない。



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「ばけばけ」(023)

  • 第05週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」

放送日

  • 2025年10月29日(水)

登場人物

  • 日高由起刀(正木清一、学生か?)
  • 下川恭平(小谷春夫、学生か?)

概要

ヘブンが松江にやってきて一夜が明けた。憧れの“神々の国の首都”・松江で迎える幻想的な朝景色にヘブンは感動を覚える。一方、トキは遊女のなみから、ヘブンへのお使いを頼まれ、宿泊する花田旅館に向かっていた。そこでトキは、ヘブンの生活の様子を垣間見る。その頃、錦織は江藤知事からヘブンの世話をしっかりするよう重圧をかけられていた。(公式サイトより)

感想

  • 花田旅館は通常よりも高い宿泊費を請求するつもりらしい。まあ手間がかかるのは事実だから、割り増しは当然だろう。どの程度の割り増しかによるが。堀尾旅館はキャンセル料をちゃんと徴収できたのか気になる。もっとも、歓迎会は堀尾旅館で行なわれたようだから、その宴会費だけでもそこそこの売上にはなっているか。
  • 司之介は「西洋人なら牛乳を飲むのでは?」と考え、売り込みに来た。そうしたら実際喜んで飲み、これから毎日来るように言いつかる。素晴らしい営業力だ。が、一杯20銭(現在の価格なら4~5000円くらい?)を請求したのはぼったくり過ぎでは?
  • ヘブンはイライザ・ベルズランドの写真を見ながら、本当は君と来るはずだったとひとりごちる。イライザ、死んじゃったの? というか、イライザは単なる同僚ではなく恋人(または妻)だった?
  • ヘブンは、日本滞在記を書いたらすぐにアメリカへ戻る、と言っている。もしかして教師になるつもりがない? そもそも知らされていない、とか?
  • 錦織は、江藤知事から、ヘブンのおかげで恥をかいたのなんのと責められる。錦織は神妙に「申し訳ありません……」という姿勢だが、なぜ錦織が謝る必要があるんだ。こういう時は一緒になって「まったくですね! 私も困っています!!」と言うといいぞ。と思ったら、江藤は「私が君を松江へ呼び寄せるために、ずいぶん危ない橋を渡ったのだ」「わかっております……」というやりとりが。なんか弱みを握られているけど、何があったんだろう。
  • 梶谷記者、記事は虚実取り混ぜだが、ちゃんと取材している。それに英語が理解できるようだ。

追記

松江歴史館のtweetによれば、明治20年の牛乳の価格は1合(180ml)3銭だったとのこと。高価な飲み物だったのは間違いないが、司之介は7倍の値をつけたことになる。会社には定価で売ったことにして、差額を懐に入れていたら犯罪だが……



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「ばけばけ」(022)

  • 第05週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」

放送日

  • 2025年10月28日(火)

登場人物

  • 野内まる(ウメ、花田旅館の女中)

概要

ついにアメリカから英語教師レフカダ・ヘブンが松江に上陸した。大興奮の観衆の中、知事の江藤や通訳で呼ばれた英語教師・錦織が出迎える。知事らに連れられて移動するヘブンだったが、初めて訪れた日本に興味津々。錦織の話も聞かず、勝手に興味がある方へと歩き出してしまうのだった。一方、帰宅中のトキとサワはひょんなことからヘブンと話すことに。(公式サイトより)

ヘブンさんは日本文化に強い関心を持っており、その上奔放な人だった。知事が(通訳の錦織が)この後堀尾旅館で歓迎会があります、関係者が集まって食事をしますので、その場でヘブンさんも挨拶を、と言っているのに、「琴の音がする、美しい調べだ」と、音のする方に一人で行ってしまう。

音の出どころは遊郭だったので、遊郭に入り、さらにそこで勘右衛門を見かけると、本物のサムライがいた! と興奮して近寄って行く。勘右衛門は恨み骨髄で木刀で叩き伏せようとするが……

必死で追いかけて来た錦織が「皆さん待っていますから。堀尾旅館は松江で一番の旅館で……」と言うも、、I don’t like fancy places. (豪華なのは好きじゃない)と言い放ち、花田旅館を見つけると、こういうところがいいんだとばかり、ここで泊まると言い張る。

知事のところに戻ってきた錦織に知事の雷が落ちる。どういうことだね! 説明したまえ! と。それに対して錦織が、「あの、ペアみたいになってますけど我々、私も皆さんと同じで、今日、今日、初対面ですから!」静かにキレた。

感想

昔、プロ野球でよくあったな。監督が外国人選手に不満があるのに、本人ではなく通訳を怒鳴りつけているシーンが。なんで通訳が怒られるんだろうと不思議に思っていた。通訳に勝手にマネジメントの責任を負わせるのはよくない。県知事センセイ、文句があるなら自分でヘブンさんを追いかけたら良くない!?

その他雑感

  • 今週からOPクレジットのフォントサイズが少し大きくなった(という指摘がtwitterであった。確かに)。
  • さっそくトキ(とサワ)はヘブンと邂逅を果たす。英語をまるで知らないのに、何とか通じさせようと身振り手振りで話しかけるのは立派。
  • 錦織は遊郭の中に入って来られない人だった。サワいわく、潔癖なんでしょ。失礼な話だよね、こっちはこの中で暮らしているというのに」。
  • ヘブンさんは月100円が支給されるという。先週、松江から帝国大学へ進学した人は篤志家から月10円の援助を受けられると話していた。ウメの給金は月90銭だという。銀二郎が婿に来て一ヵ月経ったときの稼ぎが家族併せて50円と少々だったのでは? と思ったが、11話を見返してみたら、小銭を数えて「50」と言っているだけで、50円とは言っていなかった。あれはいくらだったんだろう?



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「ばけばけ」(021)

  • 第05週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」

放送日

  • 2025年10月27日(月)

登場人物

  • 生瀬勝久(花田平太、花田旅館)
  • 池谷のぶえ(花田ツル、花田旅館)
  • 岩崎う大(梶谷吾郎、松江新報の記者)
  • 松木賢三(古田、知事の付き人)
  • 要冷蔵(堀尾旅館の従業員)

概要

銀二郎との別れから4年。トキはいまだ貧乏借金暮らしから抜け出せずにいた。シジミ売りで生計をたてるトキは、お得意様である花田旅館の花田平太、ツル夫妻から松江に外国人英語教師がやってくることを知らされる。それから数日、ついにその日がやってくる。松江初の外国人を一目見ようとサワと船着き場を訪れたトキは、そこで錦織と再会する。(公式サイトより)

感想

ついに借金については何も語られなかった。遊郭行き待ったなしだったからこそ銀二郎の客引きがあったわけで、その銀二郎もいなくなったのに、なぜ遊郭に行かずに済んでいるのか? 蜆売りに内職では家族が暮らすのがやっとだろう、借金返済に回せる分がたいしてあるとは思えないが、森山はなぜ何も言わないのか?

実はおじじ様が売った刀はかなりの名刀で高く売れ、東京への旅費はその一部であとは借金返済に当て、それで残りはちまちま返すことを認めてもらったとか。

実は雨清水家が松江を離れる際に、タエが勘右衛門に「借金の足しに」とまとまった金額を渡し、それを返済に当てて……以下同文、とか。

司之介が駄々をこねまくって音を上げた森山が不承不承認めたとか。

何らかの説明は絶対に必要だったと思われる。

昔、なんとかいう朝ドラで、貧しくて子供が育てられないから里子に出すことにしたのに、出発の日に当人が嫌がり、他の兄弟も一緒じゃなきゃ厭だと言い出し、母親が「お母ちゃんが間違っていた、家族みんなで一緒に暮らそう」と言って幕、そして時が流れ、四人兄弟全員が高校へ進学し、長女などは大学まで行っていた。高校の制服も別に継ぎ当てだらけというわけでもなくそこそこいいものを着ていた。貧しくて子供が育てられないという話はどうなったんだ、と呆れたことがあった。さすがに指摘があったのか、のちになって「サトウキビ畑を売った」と説明があったが、あれを思い出した。本作は19話までは神回の連続だっただけに、肝心なところをごまかしたのは残念だ。

今日、トキのセリフに「返しても返しても借金が減らない」があった。少しずつ減ってはいるものの、あまりにわずかなために減っている実感がない、という意味だと解釈するが、もしかしたら本当に、ただ金利を払い続けているだけで、元金は減っていないのかも知れない。あまり厳しく取り立ててうっかり逃げられたり、死なれたりするよりも、この平衡状態をひたすら続けていた方が面倒がなくていい、と思っているのかも知れない。

その他雑感

  • 第二部開始か。いつにもまして情報量が多い。
  • おサワは教師になることが決まったようだ。あの環境でどうやってそこまでたどりついたのか? 並大抵の苦労ではなかっただろう。
  • 探偵おトキの誕生。口の軽いのが玉に瑕。
  • 錦織は松江に帰っていた。英語が喋れることを生かして、ヘブンさんの対応をすることになるらしい。
  • なみはラシャメンを目指している。しかし、外に出ることができないため、ヘブンさんの観察をトキに依頼。そうか外に出ることができないのか……

配役

  • 松木賢三は「カムカムエヴリバディ」では「たちばな」の住み込み職人だった黒鉄正治。「ブギウギ」では愛助の主治医で登場していたとのこと。
  • 要冷蔵は「カムカムエヴリバディ」では野球部監督だった。



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「ばけばけ」(020)

  • 第04週「フタリ、クラス、シマスカ?」

放送日

  • 2025年10月24日(金)

概要

下宿では教員試験を終えた錦織の慰労会が行われ、トキはお祝いの出し物を披露することになり、大好きな怪談を提案する。一方、松江に残った松野家では、司之介、フミ、勘右衛門が、トキが松江には帰らないであろうと覚悟していた。その翌朝、トキは銀二郎とはじめての西洋風の朝食を味わう。(公式サイトより)

感想

情緒を揺さぶられた人が大勢いたようだが……大事なことを忘れてはいまいか。ここまでこれほど緻密な話を作ってきた制作陣が忘れているとは思えないけれども。

それは、借金だ。

20話はこういう話だ。トキは慰労会で怪談を披露しようとしたが、怪談なんてバカバカしい、そういう古臭いものは今後は一掃していかなければならないと皆に言われてしまう。根岸は、おトキさんに西洋風とはどういうものかわかってもらうため、明日の朝食はトーストにしようと言い出す。そしてトーストと牛乳をいただくことになるが、牛乳を飲んで皆が白い口髭を生やしたのを見て……第10話を思い出したトキは、松江へ帰ります、と告げる。

銀二郎と二人、東京で幸せに生活してほしかったが、トキが松江へ帰ると言い出すことはわかっていた。だが、帰るということは借金に主体的に関わるという意味である。どうするつもりなのか。当然今日は、そこが描かれるものと思っていたのだが、全く触れられなかった。

トキが失職し、返済額が減ると、森山は納得せず、事態が改善しなければトキを連れて行く(遊郭へ売る)と言った。それはもう待ったなしだと感じた銀二郎は、呼び込みの仕事も始め、なんとか返済額を増やそうとするも、おじじ様に「格が下がる」と言われて心が折れ、家を出ていったのだ。森山にしてみたら、稼ぎ頭の銀二郎がいなくなって戸惑っているところへ、頼みのトキまでもいなくなり、怒り心頭に発しているはずである。そこへ何の金策もなくトキが戻ってきたら、さっそく連れて行かれるだろう。それに対して松野家は、理屈の上でも武力の上でも対抗するすべはないはずだ。

だからトキが帰るということは、私は遊女になります、というのと同義なのだが、それをトキはわかっているのか。銀二郎はわかっているはずだが、なぜ黙っているのか。トキが戻って来て、「連れ戻せませんでした」と言うと、三人は「あなたが戻ってくれば、それでいい」と皆で喜び合うが、ここで喜ぶということは、「金を返せと詰め寄られてもどうしようもなく、困り果てていました、あなたが帰って来て遊女になれば、解決します、ありがとう」という以外の意味はないではないか。娘を遊女にしたくなければ逃がすほかはない。だから勘右衛門は東京へ行かせたのではないのか。

月曜日には何か説明があるかも知れないから、今の段階であまり文句を言っても仕方がないが、そもそも借金から始まった一連のストーリーが、借金に触れずに着地をしているようで、違和感が拭えない。

その他雑感

  • 1~2週では松野の一家も雨清水夫妻もいい人だと思っていたら、3週に入って暗転。欠損している部分を描き出し、視聴者の評価が大きく変わることとなった。錦織や帝大生ズは、格などにこだわらず、親切で、優しい人たちだ。おまけに帝大生ズは中学中退の錦織に敬意を払う等、傲慢な差別意識もエリート意識もない。素晴らしいが、これが暗転する時があるかも知れないなと思ったら、さっそく、怪談を披露しようとするトキに怪談をバカにし出す。怪談が好きでなくても、トキが話すと言っているのだから、黙って話させてやればいいではないか。宴会芸とはそういうものだろう? ちょっと評価が変わった。こういう見せ方はうまい。
  • 今日の朝食は庄田を交えて6人で一緒に食べた。してみると18話でトキに給仕をやらせ、食事を「おあずけ」させたのは何だったのか。
  • 17話で、帝大生ズは銀二郎のことを「先週」帝大の門の前で行き倒れていた、と説明した。先週のわけがない。銀二郎が彼らの部屋でしばらく暮らすことになって、恐らく実家に手紙を書いたのだろう、そこから住所が松野に伝わり、そしてトキが9日かけて状況してきた。最短でも二週間以上かかっているし、もしかしたら一ヵ月くらい経過しているのかも知れない。この「ずれ」には何か意味があるのかと思ったが、これまでのところ何も説明されなかったし、これで終わりそうだ。



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「ばけばけ」(019)

  • 第04週「フタリ、クラス、シマスカ?」

放送日

  • 2025年10月23日(木)

登場人物

概要

東京で再会したトキと銀二郎。松江で一緒に暮らしたいトキと、東京で夫婦をやり直したい銀二郎。答えがでないまま迎えた翌朝、仕事にでかける銀二郎を、トキは夫婦に戻ったかのように見送る。一方、松江では勘右衛門が親戚のタエの元を訪ね、トキが松江に帰らない可能性を伝えていた。(公式サイトより)

感想

試験に出かける錦織にトキは弁当を渡す。根岸・若宮も学校へ出かけたあと、仕事に向かう銀二郎にトキが弁当を渡すと、大喜びする。「錦織さんだけに、かと思った……」。

散歩にでて道に迷ったトキにナンパ師が。トキの手を握って離さず、困ったところへ銀二郎参上。トキを人力車に乗せてその場を去る。ずっとトキの後をつけていたとは考えにくいから、偶然なのだろう。その後はしばし二人で「ランデブー」をする。なんと、こうしたランデブーはお見合いの日に清光院に行って以来だという。二人はしばし、甘い時間を過ごす。ようやく訪れた新婚生活だ。チューはしてないけど(してないよな)。トキは「私、銀二郎さんと二人で……」と言いかけるが、ヤボな男が二人の邪魔をする。「給金が入ったら、二人で怪談噺を聞きに行きましょう」と言って銀二郎は仕事に戻って行く。

松江では、勘右衛門がタエに婿に出奔されたこと、トキを東京にやったことを話す。タエは、トキが戻って来ないかも知れないことを承知の上で、武士の魂を売って旅費を作ってやったのでしょう? と声をかけ、勘右衛門は無言でうなずく。やはり、おじじ様は覚悟の上でトキを東京に出したのだ。これは死ぬ直前に「お前はわしの子ではない、松野の娘だ」と伝えた傳とも共通する、トキを突き放す(解放してやる)愛情だ。それがタエにはわかったのだろう。(自分の推測も当たっていた。)

タエは松江を出るという。ここが実家ではなかったのか? 長屋には行かずに済んだようだが、今の雨清水の家は維持できないということだろう。ということはここで退場か? 板垣李光人がここで終わりなのはいかにももったいないが、短い出番にも強い印象を残してくれた。まだ出番はあるかも知れない。

その他雑感

錦織は帝大生ではなく、中学中退だった。無資格で中学の教員をしていたが、このたび正式の資格を取るために上京して来たという。帝大生でないことに驚いたが、それよりも正真正銘の帝大生である根岸・若宮が錦織を秀才だと言って敬い、立てて来たことに驚く。立派だ。ちょうど槙野万太郎も帝大に出入りしてる頃? かと思うが、彼が「らんまん」でどういう扱いを受けたかを思い出す。

配役

濱正悟は「舞いあがれ!」で妻から離婚届が送られる中澤学生役だった人。「鎌倉殿の13人」では平維盛役。どの役だかわからない。



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