窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

初心に返ったのか

映画が公開された時に、「5年間の間で青島刑事は初心を忘れてしまったが、そこに立ち返るシーンがある」というのがひとつの見所であるかのように喧伝されていた。

発端は、封切り後の記者会見での、織田裕二さんのセリフらしい。あちこちでそういった話が繰り返し膾炙されていたが、あまりピンとこず、見る人が見ると、そういう風に見えるのかと訝しく思っていた。

例の暴行事件で、「それだけ?」と呟くシーンは、多くのファンが「ナンてことを言うのだ」と感じたと思うのだが、このあたりが、良くも悪くも初心を忘れてしまったということなのだろう。そしてコートの一件で、「俺たちの仕事に、やらなくていいことなんかない」と思い直すわけだが……これが「初心に立ち返った」ということなのだろうか?

まあ、そういうことならそういうことにしてもいいけれど、それほど印象的な場面ではなかった。それに、それが物語全体と関係があるのかどうかも疑問だ。

この話では、「本社おしきせの捜査方針に無理やり従わせる」のではなく、所轄には所轄らしさを発揮してもらい、それをうまく利用することで事件の解決をはかるという、かねてから室井−青島の理想としてきた方法が始めて実現されたわけである。しかもその方法が成功して早期に犯人を逮捕することができた。これは「踊る」史上画期的な出来事だ。

お台場は、ビジネス街として観光地として急激な発展を遂げ、「空き地署」と言われた頃の面影はない。室井さんも、青島くんも、他のメンバーも(いろいろ反省点はあるにしても)この5年間で成長した。警察組織自体も(それを受け入れられるだけ)変化してきた。というのが大きなテーマだと思うのである。決して「初心に返る」のがテーマではないと思う。

青島くんが「俺たちの仕事に、やらなくていいことなんかない」と思い直す場面、僕としては、コートをプレゼントしてくれた女性に、もう少しやさしくしてあげてほしかった。あれでは、暴行を受けた女性に「それだけ?」といったのとあまり変わらないのではないか。