窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

二度観て筋がわかった「ドラゴン・タトゥーの女」

はやぶさ」も「ヤング・アダルト」も観たかったけど、結局「ドラゴン・タトゥーの女」を見る。話がよくわかった。壮大だが実に良くできている。一度で理解するには少し複雑だが。

粗筋

ミカエルは経済ジャーナリストで「ミレニアム」誌の共同経営者兼記者。経済界の大立者、ハンス=エリック・ヴェンネルストレムの暴露記事を書くものの、逆にハンスから名誉棄損で訴えられ、裁判で負け、莫大な慰謝料を支払う羽目に陥る。

窮地に立ったミカエルに、フルーデから仕事の依頼がある。依頼主はヘンリック・ヴァンゲル、スエーデンを代表する企業の元会長で、老齢のためストックホルムまでは出ていかれないのでヘーデビー島まできてほしいという。

依頼内容は、40年前に兄弟の孫娘・ハリエットという当時10代の娘が失踪した事件の謎を解いてほしい、恐らく殺されたと思われるが、犯人を見つけてほしいというものだった。そんな昔の事件をつついても今さら何も出てこないとミカエルはいったん断わるが、ヘンリックは、調査期間中、現在の給与の2倍、犯人が見つかれば4倍の報酬と、さらにハンス=エリック・ヴェンネルストレムの首を約束する。かつてヴァンゲル・インダストリーズで働いていたことがあり、彼のことはよく知っている、と。

調査を開始し、一族の傲慢で世間知らずで変わり者であることにたびたび苦労させられるが、かつて世間を騒がせた娼婦の連続殺人事件が、聖書の記述を模したものであり、犯人が一族の中にいるのでは、というところまでたどりつく。これ以上は裏付けなしには先に進めず、協力者が必要だと思った時に、フルーデからリスベットを紹介される。

フルーデはミカエルに仕事を頼むに当たって人物をリスベットに調査させており、リスベットが相当に有能な調査員であることを知っていた。リスベットはフルーデの依頼終了後も、ミカエルが裁判で負けたのを知ると、相手のハンスの家に盗聴器を付けるなど、勝手に調査を継続。

一方、彼女の後見人であるホルゲル・パルムグレンは脳溢血で倒れ、業務を引き継いだニルス・ビュルマンは卑劣なサディストで、リスベットが金銭を必要とするたび、彼女に性交を(それも暴力的なものを)要求するのだった。しかしリスベットは3度目に隠し持ったスタンガンでニルスを気絶させると、胸に「I am rapist pig」とタトゥーを強引に彫ってしまう。

ミカエルの依頼を受けたリスベットは猛烈な勢いで調査を開始。で……マルティンが怪しいと目を付けたミカエルは、マルティンの屋敷に密かに侵入するが、逆に捉えられる。世間を騒がせた連続殺人犯は彼の父親だが、無様な死体を晒し証拠を残すやり方を強烈に批判。自分は証拠を残さないと、自分の「殺し」を得々と語る。彼は父親以上の凶悪な殺人犯だったのだ。だがハリエットのことは真相を知りたがる素振りを見せる。ハリエットに関しては彼が殺したのではない……?

ミカエルはマルティンに殺されかけるが、駆けつけたリスベットに救われる。自動車で逃げたマルティンをリスベットはバイクで追いかけるが、スピードの出し過ぎでマルティンは事故を起こして死亡。

ミカエルは、これまでハリエットが死んでいると思い込んで調査をしていたけど、根本的に考えを変える必要があるんじゃないか? 彼女が生きているとしたら? そうして、事件の真相にたどりつく。ヘンリックは生きて孫娘と再会を果たすことができた!

さて、ここまででも十分長い話だが、話はここでは終わらない。

成功報酬で約束した、ハンスを追いつめるネタというのは、今さら何の役にも立たないようなささいな汚職事件で、とてもハンスに対抗する武器にはならない。憤るミカエルだが、リスベットは、以前調査した時の資料を分析していないが、何か出てくるはずだという。実際調べたところ、ハンスがマフィアとつながりがあることがわかる。改めて「ミレニアム」誌ではハンス批判のキャンペーンを展開。ハンス側も弁解に努めるが、今回は分が悪い。

そんな矢先、リスベットはハンスの隠し口座から約20億ユーロという大金をスイス銀行に移してしまう。つまり、ハンスの金をくすねてしまったというわけだ。恐らく調査の段階で口座番号やパスワードなどを知り、それを活用したのだろう。金を奪われたハンスは、あっさりと殺されてしまう。恐らくマフィアにやられたのだ。

ホルゲル・パルムグレンを見舞ったリスベットは「友だちができた。尊敬できる人」「仕事が楽しい」と報告。ミカエルのために高価なジャケットを買い、クリスマスのプレゼントとして渡そうとするが、ミカエルが「ミレニアム」誌の共同経営者であるエリカと腕を組んで歩いているのを見てしまい、プレゼントをゴミ箱に投げ捨てる……

感想

やられたら何倍にしてやり返す。自分をレイプした卑劣漢のニルスに対してもそう。ニルスのしたことは許されることではないし、彼女がどれだけ心身ともに傷ついたかを考えるといたたまれないが、といって彼女の報復はやはり過剰であろう。同様に、ミカエルを窮地に立たせたハンスに対しても、財産没収はいくらなんでもやり過ぎだ。裏切られたと感じたマフィアから殺されることは、当然彼女は予期していただろうから。

爽快感もあるが、一方で背筋が寒くなる。それがリスベットの、そしてこの映画の魅力であろうか。

  • ミカエルは離婚歴があるものの、現在は独身だから誰と付き合っても問題はないが、エリカは既婚者だった。おいおい、それはまずいだろう。そんなスキャンダルが表に漏れたら、家庭も会社も一発で潰れてしまうだろうに。
  • ミカエルのパソコン操作を、「トロいなあ」みたいな表情で眺めているリスベットにぐっときた。身体じゅうにピアスを入れたり、大胆なベッドシーンを演じたりといった体当たりの役作りがとかく評判ではあるが、クールでありながら、こうした何気ない演技に結構感情が込められていた。オスカーを獲ってもよかったと思うなあ。
  • 倒産の危機にあった「ミレニアム」にヴァンゲルグループが業務提携を持ちかける。ミカエルは反対するが、そうしないと潰れるとエリカは承知する。……これは何かの伏線になっていたのか。
  • ドラゴン・タトゥーの女」というタイトルの割に、なぜリスベットが大胆なタトゥーを入れているのか、なぜ身体じゅうにピアスをつけているのか、なぜ彼女には後見人がついているのか、なぜ父親を殺そうとしたのか、……といったことはほとんど明かされない。これは今後明かされていくのだろう。

過去記事

加筆あり。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)