期待通りの面白さ。「WOOD JOB!」

題名WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常
原作三浦しをん
監督・脚本矢口史靖
出演染谷将太(平野勇気、緑の研修生)、光石研(中村清一、中村林業社長)、西田尚美(中村祐子、清一の妻)、伊藤英明(飯田ヨキ、中村林業の従業員/勇気の指導役)、優香(飯田ミキ、ヨキの妻/妊活中)、長澤まさみ(石井直紀、中村祐子の妹)、マキタスポーツ(田辺巌、中村林業の従業員)、有福正志(小山三郎、中村林業の従業員)、近藤芳正林業組合専務)、柄本明(山根利郎、組合会長)、古川雄輝(大学生)、谷澤恵里香(「ニューヨーク」の女)、他
公式サイト映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』公式サイト
制作日本(2014年5月10日公開)
時間116分
劇場TOHOシネマズ 川崎(スクリーン4/150席)

内容

大学受験に落ち、彼女にも振られてしまった平野勇気は、「緑の研修生」というパンフレットの表紙の美女に惹かれて一年間の林業体験を志望する。

当初は林業に対するモチベーションもなく、ちゃらんぽらんで集中力のない勇気は早々に挫折するかと思われ、実際、一度は脱走を企むが、結局一年やり通してしまった。が、そこに到る道は決して平坦ではなかった。

雑感(ちょっとネタバレあり)

ユーモラスに描かれてはいるが、林業や、そこに従事する人の生活についてはかなりきちんと書き込まれていた印象を受ける。染谷将太伊藤英明は、クランクインの前に実際に林業体験を積み、高い木の上の方(30m以上だそうだ)に登って枝を落としたりするシーンはスタント・CGなしで実際に登ったという。

今年観た映画では「銀の匙」と同根の作品。あちらは酪農でこちらは林業の違いはあるが、一般にはキツイ・汚いというイメージのある(というより、どういう仕事なのか普通の人はほとんど知らない)業種を紹介し、その仕事の魅力を語りかけてくれる。

ただし酪農と違い、林業は一代で完結しない。木が高値で売れることを知った勇気が「山にある木を全部売ったら億万長者ですね!」と言った時に、中村清一が怒鳴るのである。「全部いっぺんに売ってしまったら、わしらの子は、孫は、どうなるんだ」と。「今日売った木は、曾爺さんが植えた木だ。高く売れたのは、ご先祖様がきちんと世話をしてきてくれたからだ。わしらが植えた木を、ちゃんと世話できているかどうか、わしらが生きているうちにはわからない」。

こういう長期的な視点は、現代に決定的に欠けていると思うので、こういう作品がエンターテイメントとして作られることには大きな意義があると思う。

乱暴で、何かにつけて勇気につらく当たってきたヨキが、山根会長が勇気をよそ者呼ばわりした時に「こいつは山男だ!」と言い返したり、一年間の研修を終えて帰る時に号泣したりするシーンは、ベタだが泣ける。

しかし一年間の林業生活で大きく成長したかに見えた勇気だが、変わっていない部分もある。林業を自分の本職にする決意を固めたのはいいが、そういう時はまず親に報告し、事前に親から連絡を入れてもらうのだ。いきなり訪ねて行くのは、子供のすることだなあ。中村林業の面々は、歓迎してくれたと思うけど……

石井直紀と恋愛関係に陥るのかと思ったがそういうわけではなかった。これはこれで(ドラマとしては)良かったけど、長澤まさみの魅力が十全に発揮されていたとは言えなかったのが残念だった。どちらかというと長澤まさみが理由でこの映画を観ようと思ったので。どちらかというと優香の方が目立っていた。それはそれで良かったが、いやー優香が伊藤英明とあんなエロいキスをするとは……

配役

  • 主要な登場人物は全員知っている役者だった。珍しい。というか、ようやくこの域に達したか、とひとしきり感慨。

観客

11人。150人入れるシアターなのに……。

過去記事

リンク

確かに予告は面白そうなんだけど、ちょっと残念でもあった。予告で見せ過ぎだよ……。

いつもながらの見事な解説なのだが、今回はちょっと納得できない。確かに山根利郎は勇気をよそ者扱いするし、あの打ち合わせの席では多くの人は山根に同調する雰囲気があった。ヨキが「こいつはもう既に山男なんだよ!」と言ってもしらけた雰囲気が漂っていた。神隠しにあった子を一人で探し出してからようやく認めてもらえるようになったのだが、その祭りには勇気と同期の研修生が他にも参加していた。えっ、彼らは排除されなかったの?山根のじーさん、彼らが参加するのには文句を言わないのか? なんかそのあたりがなあなあだったなあ、と思う。中村夫妻や飯田ヨキミキ勇気を暖かく迎えるのは、後継者不在という切実な背景があるからかも知れないが、表面的には親切にしつつも、根っこのところではもっと排他的でもよかったように思う。普通はそうだろう。

それから、勇気が突然林業を目指すのは「緑の研修生」の直紀の写真に釣られたからである。それはいいとして、現実に林業生活を送り始めたら、辛くて厳しくて嫌なことが次々と起きる。それを撥ね退けるほどの動機としては弱い。写真と、つんけんした実物の直紀だけでは、下心に発展しないのだ。もし実際に会った直紀が、優しく親切で、勇気に心を寄せてくれたら。少なくとも勇気がそう勘違いするような事件があれば。あるいは、うっかり直紀が風呂に入っているシーンを見てしまったとか。そんなことがあってこそ、直紀に対する恋心が何倍にも膨れ上がるのである。下心が何十倍にも膨れ上がるのである。

もし排他的な社会とそれに対する下心という点に重きを置くなら、もう少し手直しの必要があるのでは、と思った。僕は、そういったこともスパイスとして入れてはいるけれど、そこが重要というわけではなかったんだろうなあ、と思っている。

リンクありがとうございます。

田舎の生活はノーサンキューだけど「もし長澤まさみさんが1つ屋根の下で暮らしてくれるのならばこの限りではない」部分は激しく同意(笑)。

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

神去なあなあ日常 (徳間文庫)