「アナと雪の女王」の魅力(3)予告編のミスリード

「アナと雪の女王」の魅力(1)ストーリーの意外性』(2014/05/08)で二つの意外性と一つの伏線について述べた。が、意外性という点では実はもうひとつ大きく意表を衝かれることがある。それは、予告編との違いだ。

エルサが「LET IT GO」を高らかに歌いながら雪山の上に氷の城を築く。なかなかに印象的なシーンである。僕はこの予告編を見て、こんな一番いいシーンを、しかもフルコーラスがっつり予告編で見せてどうするんだよ……と呆れていた。しかも何度も何度も見せられたから、すっかり映画を見た気になってしまい、それが理由のすべてではないが、当初、この映画には食指が動かなかった。

映画を観たら、始まったばかりでいきなりこの歌が歌われることに驚き、さらに、この歌が、当初思っていたのとは真逆の意味で使われていたことに気付き、心底驚いたのである。予告編を作った人がどこまで計算していたのかはわからないけれど、予告編を見てなにがしかのイメージを持って本作を見た時の「やられた」感は半端ではなく、それも魅力のひとつなんだろうと思う。

この「LET IT GO(れりごー)」という歌は、世間のしがらみや、周囲の雑音を気にすることなく、自分は自分らしく生きればいいんだ、という応援歌のように思われていて、昨今ではそのような文脈で引き合いに出されることが多い。いや、歌自体はそういう意味の内容だから間違ってはいないが、本作の中では、それは否定的に扱われた。たとえてみれば、こんな感じである。引き籠りのニート君に対して、親が、「あなたも少しは世間とつながりを持たないと……」みたいに言うのに対し、その子が逆切れして、

「うるせーなクソババァ、俺はそんな世間なんか気にしないでありのままに生きたいんだよ。部屋に籠って一人でゲームしたりネットしたりするのが俺らしいってことなんだよっ」

と怒鳴っているようなものである。

エルサは、ありのままに生きると言いながら、それは結局、世間で起きていることに頬かむりをし、他人の意見に耳を傾けず、一人、自分の殻に閉じ籠って暮らしているだけである。それが自分らしく生きることなのだと自分で自分に言い聞かせているだけで、結局のところ、結局、自分も含めて誰一人しあわせにしていない。それじゃだめなんだ、というのがこの映画の主張なのだ。

そんなエルサも、最後は自分の間違いに気づき、現実と向き合う覚悟を決めた。周囲の人もきちんと受け入れることにした。エルサが変わったところで物語は終わりを告げる。エンドロールでもう一度「LET IT GO」が流れるが、だからエルサはもうこの歌を歌わない。