上質の日本映画「春を背負って」

題名春を背負って
原作笹本稜平
監督木村大作
出演小林薫(長嶺勇夫、山小屋「菫小屋」経営)、檀ふみ(長嶺菫、勇夫の妻/民宿「ながみね」経営)、松山ケンイチ(長嶺亨、勇夫・菫の一人息子)、仲村トオル(朝倉隆史、亨の上司)、蒼井優(高澤愛、「菫小屋」スタッフ)、豊川悦司(多田悟郎、勇夫の後輩)、新井浩文中川聡史、亨の幼馴染)、安藤サクラ(中川ユリ、聡史の妻)、吉田栄作(工藤肇、山岳警備隊隊長)、石橋蓮司(野沢久雄、医師)、井川比佐志(文治、「ながみね」の番頭)、池松壮亮(須永幸一、「菫小屋」の客/就職活動中の学生)、市毛良枝(高野かね、「菫小屋」の客)、駿河太郎(西村太一、?)、KIKI(遭難客)、角替和枝(?)、加藤桃子(?)、他
公式サイト映画『春を背負って』公式サイト(スクリーン6/205席)
制作日本(2014年6月14日公開)
時間116分
劇場TOHOシネマズ ららぽーと横浜

内容

長嶺亨は東京でトレーダーとして忙しく働いていた。ある日、母から電話で父・勇夫の死を知らされる。山でケガをしかけた登山客を助けよとして命を落としてしまったのだ。

勇夫の死によって「菫小屋」も閉鎖を強いられるが、亨は「おれがやる」と言い出す。

雑感

ネットの感想をちょろっと見てみると、低評価の声が目に付くけど、基本的には良心的に撮られたいい作品だと思う。父親の遺志を継いで山小屋を経営する息子、経験には乏しいが経験豊富なゴロさんや愛、そして多くの仲間に助けられてなんとか一人前になっていくという、ある意味鉄板のストーリーであるが、そこに「山」をかけあわせて、登るのは大変だが登った場所からの景色の美しさは苦労して登った人間にしかわからない……という暗喩は説得力があった。

当初亨が「おれがやる」と言った時に母の菫は「あんたなんかにできるわけない」と反対する。山小屋の経営は、金銭的にも体力的にも厳しいもので、思い付きだけでできるものではないことを菫はよく知っていたのだろう。ところがその後、亨が「菫小屋」を経営していて、特に困難には直面していない。客が怪我を負ったりスタッフが病気で倒れたりといったことはあるが、亨個人の挫折とは無関係である。大きな壁にぶつかり、「やっぱりおれみたいな素人には無理だったんだ。やめる」と言い出すような場面が一度くらいあった方がよかった。

最後は、どうやら亨と愛が相思相愛の間柄になったことを暗示するシーンで終わるのだが、これは蛇足ではなかったか。亨が愛に恋する気持ちはわかる。自分が頼れるのは愛しかいないと思っているだろうし、亨の周囲に適齢期の女性は愛しかいない。山小屋では毎晩ひとつ屋根の下で暮らす愛に対して思いを募らせていたのだろうと想像するが、愛が亨を好きになる理由がわからない。勇夫と比べて能力も覚悟も段違いである。愛が惚れるような「カッコいい」場面を劇中、亨は一度も示していない。まだひよっこだから仕方ないが、ラストだからと話をまとめ過ぎた感がある。

配役

演技派、実力派の俳優で固めてあるが、こういう言い方は申し訳ないが華のある役者がいない。全体に極めて地味な印象を受ける。個人的には高澤愛の役は長澤まさみで観たかった。