窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

二階堂ふみに驚かされる。「私の男」

これが役者というものなのだろう。まだ若いのに、二階堂ふみがこれほどとは。以前から気になっていた作品だが、ようやく観られた。

題名私の男
原作桜庭一樹
監督熊切和嘉
出演二階堂ふみ(腐野ハナ)、山田望叶(10歳の腐野ハナ)、浅野忠信(腐野淳悟)、河井青葉(大塩小町、淳悟の恋人)、藤竜也(大塩、小町の父)、安藤玉恵(小町の先輩)、広岡由里子(タクシー会社の事務員)、モロ師岡(田岡、刑事)、松山愛里(ハナの同僚)、高良健吾(尾崎美郎、ハナの勤め先の親会社の重役の息子)、三浦誠己(美郎の先輩)、三浦貴大(大輔、ハナの婚約者)、他
公式サイト映画『私の男』公式サイト
制作日本(2014年6月14日公開)
時間129分
劇場丸の内TOEI(劇場1/509席)

内容

舞台は北海道紋別市。ハナは10歳の時に大地震(1993年の北海道南西沖地震らしい)による津波で孤児になる。腐野淳悟はそんな彼女を見て、自分の養女にする。大塩らは「あんたには無理だ」というが「家族がほしいんだ」と言い、押し切ってしまう。

6年後。小町は淳悟と付き合っているが、満たされないものを感じている。また自分を敵視するハナの態度にもイラつくものを感じる。実は淳悟はハナと男女関係になっていたのだ。ハナは心身ともに淳悟に依存して生きていくことになる。二人の関係に気付き、心配した大塩は、ハナの遠縁に話をつけ、引き取ってもらうことにするが……

雑感

正直、詰まらない映画だった。特に前半は、話が複雑でよくわからないし、その割に間延びしているし、いい加減帰ろうかとチラと思ったほど。通路側の席だったら本当に席を立っていたかも知れない。後半になってからはそれなりには興味を持てたが。

淳悟がハナを引き取った時に、はじめからそうするつもりだったわけではあるまい。小町という恋人もいて、やることもやっているのに、なんでハナにそんな気を起こしたのかわからない。こうした家族からの性的虐待に遭っている女性は決して少なくないというが、そうはいっても珍しいことには違いないのだから、この辺はもう少し掘り下げてもよかったのではないか。

二人の関係は、途中からハナが主導権を握るようになり、ラストでは淳悟が翻弄されているのがわかる。この変化は面白いが、もともと淳悟がハナのどこに魅力を感じていたのかが不明。手近な女に手を出した結果、ということなんだろうか。また、ハナは震災孤児のはずだが、途中ハナが「淳悟とは血が繋がっている。実は実父なんだ」と言う場面がある。これも意味不明。ハナの母親が登場しないし、事実なのかどうかも不明。

一番荒唐無稽に感じたのは、二人がそれぞれあれほどの事件を起こしながら、その後特に変わることなく生活を続けている点だ。そんなことはちょっとあり得ないと思うし、もしあり得たとするなら、どう切り抜けたのか、説明がほしいところだ。そこを描きたかったわけではないのかも知れないが、普通ならあそこで破局だ。

ただし、それらを凌駕する魅力があったのも事実。高校生、OL、そして婚約者を同席しての妖艶な姿。見かけだけでなく性格の変化も含めて、見事に演じている。まさに「演じる」という言葉がふさわしい。今までの役ではそれほどの存在感を感じなかったが、今後は注目だ。

リンク

この記事の

花は震災の時も、避難所で配給された水のボトルを決して手放さず、自分で飲むでもないのに誰にも分け与えようともしませんでした。家族も何もかもを津波で失ってしまった彼女は、もう何も失いたくないと、異常なほどの独占欲が芽生えたのでしょう。

を読んで目から鱗が落ちた思いである。なるほど、そういうことであれば、冒頭で震災の風景が執拗に描かれていた理由もわかるし、納得できる。作中でちゃんと表現されていたのを、自分が理解できなかったのだ。