窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

NEWS23「綾瀬はるか『戦争』を聞く」

知らなかったが、綾瀬はるかは2010年以来、毎年「NEWS23」の特別企画として60人以上の戦争体験者にインタビューを続けて来たそうだ。これも知らなかったが、綾瀬はるか広島市出身。

戦争体験者の声を拾い、記録していくのは大切なことだが、中には「思い出したくない」「語りたくない」という人も少なくないようだ。そんな人でも、綾瀬はるか(のような著名で好感度の高い女優)が直接訪ねて来ることで、心を開くということもあろう。ご本人はさぞ大変だろうと思うが、綾瀬はるかのキャラはこうした役割には適任と思った。

この番組の中で、ハロルド・アグニュー博士と被爆者二人との対談(の恐らくダイジェスト)が再放された。ハロルド・アグニューはアメリカの物理学者で、原爆の開発に関わり、広島に原爆を投下した飛行機に科学観測員として同乗し、投下後の広島の町の撮影を行なった人だそうだ。

対談で博士の言い分はこんな感じか。

  • 核爆弾は戦争で使うべきものではないしこれから先二度と使われないことを望む
  • 広島の原爆も東京大空襲も同じ、程度が違うだけ
  • そもそも真珠湾がなければヒロシマもなかった。真珠湾で私は知り合いを何人も亡くした
  • 謝罪する気はない。自分に謝罪せよと言うなら、まず日本人は真珠湾を謝罪しろ

言い方がいちいちカンに障る人で、こういう言い方をされたら被爆者ならずとも腹が立つな、とは思ったが、この対談後に、これだけのことをしておいて一切謝罪の言葉がなかったのは残念だ、と締めくくるのは納得が行かない。真珠湾、空襲、原爆。確かに規模も程度もまるで違う。が、しれで死んだ人がいた、という点は同じ。死んだ人はそれぞれ、家族も、友人も、いたであろうことも。

真珠湾だけではない。満州国建国、国際連盟脱退などもそうだが、こうした事実を日本は、日本人は、アメリカ人に対して、あるいは世界の他の国の人に対して、どう総括するのか。その部分をスルーして、ヒロシマだけを取り上げるのはフェアではないと思う。

対談は広島で行なわれたようだった。ハロルド博士は、とにかく広島まで来たのだ。そのことに対するポジティブな評価が番組内で言及されなかったも残念だ。

この対談が行なわれたのは2005年、ハロルド博士も、二人の日本人も、既に鬼籍に入られているそうだ。

(2020/8/14 記)