窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

(08)「招かれざる者」

題名

  • 「光る君へ」第08話「招かれざる者」

放送日

  • 2024年2月25日

登場人物

概要

倫子たちの間では、打毬の話題で持ち切り。斉信らの心ないことばを聞いたまひろは心中穏やかでない。そんな中、宮中で兼家が倒れる。安倍晴明のお祓いが行なわれるが効果はなく、道長ら兄弟が看病にあたる。一方、為時を訪ねて道兼がまひろの家に突然現れる。母の仇と対峙することになったまひろだったが……。(公式サイトより)

6話の終わりで盗賊騒ぎが起き、警備に当たっていた道長が追いかけ、矢を射ると命中した(が、致命傷ではなく、逃げられた)という事件があった。

7話では、打毬の当日になって藤原行成が体調不良で参加できなくなった。道長は直秀を「最近見つかった弟」と説明して、行成の代わりにメンバーに加えた。運動神経もよく所作も身についている直秀の活躍もあってチームは勝利する。その後、着替えの際に、道長は直秀に矢傷があるのに気付く。

道長は直秀に、家中を案内しながら、その傷はどうしたのかと訊く。彼が盗賊の一人であることを薄々察し、牽制したつもりだったのだろう。が、その夜東三条を襲った盗賊を捕らえてみたら、うち一人は直秀だった……。

***

兼家は閣僚会議の場で義懐と対立。激高した兼家は倒れ、意識を失ってしまう。安倍晴明はよし子の霊が取り憑いているとし、その旨花山天皇に報告。

道兼が為時の仕事を手伝う。そして、父は眠っているがふと正気づくと私を殴ると愚痴を漏らす。驚く道兼に、父は兄と弟は可愛がるが自分は可愛がられたことがないと。ある日、道兼が為時の家を訪ねて来る。たまには呑み交わそうと。まひろはもてなしのしるしに琵琶を弾いて聞かせる。

花山天皇は当初、右大臣が大嫌いゆえ道兼のことも遠ざけていたが、道兼がDVの被害に遭っていることを為時から聞いて知り、それは面白いと言い出す……。

今日の直秀とまひろ

「都の外はどんなところ?」
「海がある」
「海? 見たことないわ」

今日の直秀とまひろ(続き)

「俺は鳥籠を出て、あの山を越えていく」
「山の向こうの、海があるところ……」
「一緒に行くか?」
「行っちゃおうかな」
「行かねえよな」

今日の道兼とまひろ

「琵琶は誰に倣ったのだ」
「母に習いました」
「母御はいかがされた」
「母は……七年前に身罷りました」
「それは、気の毒であったな。ご病気か」
「はい」

雑感

「招かれざる者」は、為時の家にやってきた道兼と、東三条に押し入った直秀の二人を指す。

兼家は意識を失うほどの重病なのに、道兼を痣が付くほど殴る元気があるのかと、当初は自分もすっかり騙された。また、安倍晴明がインチキ霊能者を使って兼家によし子の霊が取り憑いている演出をし、かつ、それを花山天皇に報告するのを見て、兼家を裏切ったのかと思った。が、兼家は恐らく仮病であり(少なくとも意識を失うほどではなく)、安倍晴明と結託して事態を演出。また、道兼には事情を話して協力するよう指示を出していたのだろう。

そう、為時がスパイを断わって来たから、代わりに道兼を天皇の許に送り込みたい、それで、兼家自身はさらに天皇から嫌われるように仕向けると同時に、道兼が兼家に疎まれていると思い込ませれば、側に置くだろうと考えたわけだ。そのために何も知らない為時を利用したのだ。人のいい為時の耳に入れれば、天皇まで届くだろうと。(そしてそれは、まんまとその通りになった。)

その一環で道兼が為時の家を訪問し、まひろと対峙することになってしまう。為時がハラハラしているのは、まひろが道兼を責めたてたり、琵琶で殴りかかったりしないかと心配していたのだろうと思ったが、あとから考えると、道兼がまひろを気に入ってしまい、夜伽の相手を所望したら、断われないから、それを心配していたのだろう。

道兼が兄や弟に比べて冷遇されてきたのは事実だし、まひろの琴の音を聞いて感激したのも事実のようだ。まひろにかけた優しい言葉は、彼の真実でもあるのだろう。道兼は本当は繊細で傷つきやすく、優しい人間なのだ。ただ、自分がかつて殺した女の身元を全く気にかけていなかったのも事実のようで、「母御はいかがされた」は演技ではなく、心から気遣っていたと思う。それはとどのつまり、虫けらのような身分の者のことなど、どうでもいいと思っているからにほかならないわけだが……

しかし、その事件の後始末をした兼家は、ちはやの身元を知っていただろうから、道兼に、為時に近づけとは、なんとも残酷な指令を出したものだ。

道長は、公任や斉信に対しては、出世第一、また女のことを遊び相手としか考えていないようなところが心底共鳴する気になれず、直秀に対しては、藤原家をからかう散楽を演じる不届き者ではあるが、案外楽しく付き合っているようだ。行成の代わりと言われて直秀を思いつくところもそうだし、「兄上」「兄上」と呼ばれてまんざらでもなさそうだった。

だから、直秀が盗賊の一味であることを半ば確信しつつも、自分の前に盗賊として現れない限りは事を荒立てるつもりはなかったのだろう。が、残念ながら、直秀はよりによって道長の屋敷に奪いに来たのだった。

まひろは直秀とも仲良くなっている。道長とこれ以上付き合ってはいけないことはわかっているから、直秀の「都を出て、外の世界へ行く」という言葉は、さぞ魅力的に感じられただろう。本当に行かれるわけがないけれど。

今日のtwitter