窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「アバター」はIMAX 3Dで見るべし!

アバター」という映画の評価はさまざまであろう。他人に強制するつもりはないが、まだ見ていない、今のところ見るつもりのない方にお伝えしたいことがある。

予告編はなんともひどい出来で、この映画の面白さ、素晴らしさを何も伝えていない。気持ち悪い生物がいろいろ出てくる、ぐらいのことしかわからず、これで却って見る気をなくした人が少なくないのではないかと思う。僕自身もそのクチで、観客動員数を塗り替えた、というニュースがなければ見ていなかったはずだ。実際にはとても美しい絵が次々に出てくる映画なのに。あの予告編は忘れた方がいい。

そして、どうせ見るならIMAX 3Dで見ることをお薦めする。RealDでもXpanDでもDolby 3Dでもないのでお間違えなく。通常版より400円高*1が、その価値はある。これを見てしまったら、もう通常版を見る気は起きない。臨場感の桁が違う。

ただし、現状ではIMAX 3Dが見られる映画館は109シネマズの川崎(神奈川)、菖蒲(埼玉)、名古屋(愛知)、箕面(大阪)の4ヶ所のみ。これでは見られる人は本当に限られてしまう。「アバター」が大ヒット上映中の間にもっと増やしてもらえないものか。

109シネマズ川崎

IMAX 3Dがどんなものか体験してみたかったため、109シネマズ川崎まで出かけてきた。

JR川崎駅といえば東側にのみ発展し、西側には何もなかったはずだが、ラゾーナ川崎プラザという巨大な、かつスタイリッシュなショッピングモールがいつの間にか出来ていた(2006年9月開業)。なにしろ飲食店だけで50店もあるのだ。109シネマズ川崎はそこの5Fにある。

上映開始は21時で、映画館に着いたのはまだ17時を少し回った時間だった。しかし、チケットを買いに行ったら、最後列は既に売り切れ、後ろからひとつ前の列も、空席は一席のみ(かなり端)。慌ててその席を確保する。土曜日(6日)の昼間上映分は既に売り切れだという。

ここでは、「アバター」に関し、2D版、XpanD版、IMAX 3D版の3種類の上映を行なっている。それぞれ字幕・吹き替えとあるから、6館で並行上映を行なっていることになる。そして、もちろん先まで売り切れなのはIMAX 3D版のみ。この日は日曜日分はまだ買えないが、予約販売が開始されたらそれもあっという間に売り切れるのだろう。

IMAX 3Dの魅力

過日RealDを見た時は、スクリーンが3枚あるような感じだった。つまり、主に動きのある位置の奥の方に深い風景があり、手前にもあるといったもので、3層の紙芝居を見ているような印象。それでも通常の2Dとは違うといえば違うが、ちゃちな感じは否めなかった。IMAXはごく自然に奥行きを感じる。

それと、3Dメガネが大きく、軽くて、ふだん近視などでメガネ着用者も無理なく鑑賞できる。もっとも僕はRealDしか知らず、こちらも割と軽かったけど、XpanD、Dolby 3Dのメガネは重いという。

IMAX 3Dは、真っ直ぐ正面を向かないといけない(姿勢を崩せない)、という。なるほど、確かに首をかしげるとたちまち3Dでなくなる。しかし、首をかしげなから見ることってある? 少なくとも僕はない。だから、この点は問題なし。

実をいうと、ずっと「わぁー、すげー」と感じていたわけではない。ものの10〜20分もすると慣れてしまい、3Dであることを忘れてしまう(が、ふと気づいてちょっとメガネを外してみると、その違いに気付き、改めて驚嘆する)。つまり、これみよがしに3Dでございと、ばんばん物が目の前に迫ってきたりするわけではない。予告編のAlice in Wonderlandのチェシャ猫の方がよほど迫ってきた。が、それがいいのだと思う。キャメロン監督にとっても初めての3D撮影のはずだが、ものの見事に使いこなしている。初の本格的3D映画が「アバター」で、映画界にとっては本当に良かったのではないか。

ストーリー

前回、「ストーリーは単純」と書いた。確かに子どもでも一発でわかる話ではあるが、よく見ると、なかなか凝った伏線が張られていることに気付いた。

もともとパンドラにはジェイクの兄(学者)が行く予定だった。が、直前に事故に遭い死亡。アバターのドライブはDNAを提供した者しかできないが、双子のジェイクには可能だった。恐らくアバター計画には一体あたり莫大な予算がかかっているのだろう。だからジェイクは研究などしたことのない無教養な退役軍人だったかも知れないが、半ば強引に役目を押し付けたわけだ。

グレイスなどが想定し、実行していたアバター計画の主旨は、恐らく、生身の人間ではパンドラの地では呼吸ができず、呼吸器をつけたとしても、猛獣をはじめとする自然の脅威があり、極めて危険だが、ナヴィの肉体であればその危険はずっと少なくなる、という点にあったのだろう。仮にアバターが死んでも人間の側が死ぬわけではない。

姿が似ていればナヴィたちと交流を持ちやすい、という考えもあり、実際、スクールを開いて彼らに英語を教えたりもした。パーカーによれば、その外交政策は何の成果ももたらさなかったというが、ネイティリをはじめ、主なナヴィは英語も流暢に話す。これだけでも相当な成果だろう。しかし、グレイスにとってはナヴィと交流を持つよりも、現地の植物を採集したり、各種の学術調査を行なう方に興味があったようにも見える。その点でもアバターを利用する方が有利だろう。

そこに軍人あがりがぽこっとやってきた。彼は学術調査に興味はないし、その能力もない。グレイスやノームが調査をしている時に退屈のあまり勝手な行動を取って猛獣に襲われ、はぐれてしまう。グレイスにしてみれば、「だから彼じゃダメだって言ったのよ! 勝手なことをやって貴重なアバターをたった一日で殺してしまって!」と思ったに違いない。

しかしジェイクは元軍人ならではの勇敢さで危機を乗り切り、現地人の懐に飛び込み、一気に彼らの仲間になってしまう。こんなことはグレイスらには全くできないことだった。だからマイルズは、「さすが元ネイビーだ! 学者先生が何年もかけてできなかったことを、たった数日で成し遂げてしまったぜ」といって喜ぶ。

マイルズがなぜ喜んだかというと、ナヴィが何を大切に思い、どういう生活をしているかを知ることによって、攻撃の際に効率的に彼らをやっつける方法がわかったからだ。あとから思えばジェイクもバカなことをしたということになるが、この時は、まさかマイルズがナヴィを滅ぼすとは思っていなかっただろうし、仮にそういうことになっても、ナヴィにたいして同情はしなかっただろうし、情報を提供すれば新しい足をプレゼントしてやる、という「報酬」に大きな魅力を感じたせいもあるだろう。

そう、ジェイクは下半身が麻痺しており、車椅子の生活だった。普通に考えれば、アバターをドライブしていても、体格も容姿もまるで人間とは違う身体にそうそう愛着を感じるとは思えない。しかし人間であるジェイクは車椅子。アバターをドライブしている時は走ることも自由自在。だから初めてアバターをドライブした時、医師の制止を振り切っていきなり駆け出すのだ。まずその問題があって、一気にアバターになりきってしまった。他の人よりナヴィに溶け込みやすかったのは、そのせいもある。

つきつめれば、ジェイクは「アバターをドライブしてナヴィと一緒に生活しているうちに彼らに愛着を感じ、人間のやり方を理不尽だと思うようになりました……」という、それだけの話かも知れないけど、それが不自然でなく観客も一緒に感情移入できるように、かなり細かいところまでよく考えられている。

アバター 公式完全ガイド

アバター 公式完全ガイド

リンク

過去記事

*1:IMAXはレイトショーでも値引きがなく2,200円。ちなみにXpanDは通常より200円高い。つまり昼間は2,000円でレイトショーは1,500円。