窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

どうすればよかったのか「黒いスーツを着た男」

アラン・ドロンの再来といわれるラファエル・ペルソナ主演作品。本日2本目。

題名黒いスーツを着た男(原題:Trois mondes)
監督スティーブン・ソダーバーグ
出演ラファエル・ペルソナ(アラン)、クロチルド・エム(ジュリエット、事件の目撃者)、アルタ・ドブロシ(ヴェラ、被害者の妻。不法滞在のモルドバ人)、アデル・エネル(マリオン・テスタール、アランの婚約者)、他
公式サイト映画「黒いスーツを着た男」オフィシャルサイト
制作フランス、モルドバ(2013年8月31日日本公開)
劇場ヒューマントラストシネマ渋谷

内容紹介

アランは結婚を控え、友人たちと夜中に騒いで帰る途中、(酔ったまま運転して)人を轢いてしまう。仲間に促されるまま被害者の男を放置して逃げ出すが、気になってこっそり病院を探して訪れ、被害者が重傷を負っていることを知る。何とか償いたいという気持ちと同時に、玉の輿の結婚を控え、ようやく底辺生活から抜け出せる(自分だけではなく、母親も)という矢先であり、事件が明るみに出たらすべてを失うという恐怖から、自首することもできない。

そこへ、事件を目撃していたジュリエットがアランを探し出して事務所にやってくる……。

雑感

「さよなら渓谷」を彷彿させる。若気の至りで取り返しのつかない罪を犯してしまい、「取り返しがつかない」ことを本人も自覚している時、どうやって償うべきか。被害者に対する責任と同時に、本人にも家族がおり、彼ら彼女らを巻き込みたくないと考えるのもまた自然な感情である。

「さよなら渓谷」では被害者はとにかく生きている。本作では被害者はほどなく死んでしまう。しかも不法滞在のモルドバ人であるという問題が話を複雑にする。

夫を奪われたヴェラにとっては、誰に何をされても納得がいくはずはないが、自分たちが社会的弱者であることをあらためて突きつけられ、心底怒っていただろうし、アランはお金で解決しようとしたものの、肝心のお金を持っておらず、アランとの仲介をしようとしたジュリエットはヴェラから裏切り者呼ばわりされて辛い立場になる。

ジュリエットの婚約者は、最終的にジュリエットを受け入れたのか、ジュリエットは無事出産したのかが気になった。

日本語タイトル

Trois mondesは「三つの世界」という意味なのだそうである。加害者、被害者の妻、目撃者、この三者をめぐる絡み合いや葛藤を描いたものだということであろうが、彼らはそれぞれ下層階級、裕福な家庭、最下層の移民というグループの代表ともいえる。いいタイトルだが、邦題に全く生かされていないのが残念。
(2013/09/22 記)