題名
- 恐怖新聞(フジテレビ)
原作
放映日
- 2020年8月29日
出演
概要
1970年代に一世を風靡した漫画の実写ドラマ化。公式サイトを見ると、登場人物に鬼形礼クンがいない。主役は小野田詩弦という女性らしい。原作のドラマ化ではなく、原作の設定を借りて新たなドラマを作ったということか。どんな作品か興味がわいたので、ちょっと見てみることに。
小野田詩弦は将来を考え、父親の反対を押し切って一人暮らしを始める。ある日、深夜0時に突然ドアを叩く音が響く。悪戯かと思ったが、郵便受けに「恐怖新聞」なる紙が入れられていた。そこには不気味なイラストと文字で女子高生が飛び降り自殺すると書かれていた。
翌日、配達アルバイトの出先で、女子高生の飛び降りに遭遇。詩弦は落ちる瞬間を目の前で見てしまう。トラウマになることを気遣って部屋を訪ねてきた松田勇介が寝ている横で、またも恐怖新聞が配達される。そこには父・蔵之介が死ぬと書いてある。驚いてそれを勇介に見せるが、勇介には白紙にしか見えない。
女子高生の自殺事件で恐怖新聞の記事を無視できない詩弦は、実家に帰り、父親に翌日は家から一歩も出ないように頼む。いったんは了解した蔵之介だが、近所の神社へのお祈りに出てしまう。それに気付いた詩弦は大急ぎであとを追うが、蔵之介は事故に巻き込まれ、命を落とす。絶命の瞬間、「お前なんか生まれなければよかった」と詩弦に言い放つ――
蜷川冬夜は詩弦の前の「恐怖新聞」の読者だったらしい。してみるとこの世界では、「恐怖新聞は」読者が死ぬまで読ませるのではなく、ある程度のところで若くて元気な読者を見つけて移っていくということか。なかなか良心的(?)だ。しかし篠崎刑事がなぜ蜷川に目をつけ、追いかけていたのかは謎。
蔵之介は妻が詩弦を身ごもった時、生まれて来ないようにと必死で祈っていたらしい。理由は謎。
雑感
以前も漫画の感想として書いたけど、これは設定が本当にうまくできているので、何度でもリメイクができる。
今回の恐怖新聞は、真ん中にイラストがバーンとあって、その周囲に見出し的な言葉が散逸するというレイアウト。ビジュアルに訴えるのは21世紀ぽいが、文章が書かれていないため、状況がわからない。何月何日何時何町で何の誰それ何歳が飛び降りて……と書かれていないと、予告された内容と実際に起きた事件が同じかどうかの判断がつかない。飛び降りる時に笑ったことと髪飾りがイラストに合致したというだけでは、どうとでも解釈できてしまう。YouTube世代には細かい文字がびっしり書かれた新聞は敬遠されるという判断だろうか。
不気味な演出はあったが、怖いと思える箇所はなかった。死体を見せられたり、隣人のしゃべり方が不気味なのは、気味が悪いだけで、怖くはない。
「恐怖新聞」の怖さは、記事に書かれていることがひとつひとつ着実に成就されていくこと、自分が読んでいる恐怖新聞が他の人には見えないこと、だから自分の抱えている切羽詰まった恐ろしさを誰にも理解してもらえないこと、これが一番の恐怖だと思う。が、勇介や父には恐怖新聞が白紙にしか見えないことを、詩弦は妙に納得していて、そのことを騒ぎ立てないのは不思議だ。
原作では、恐怖新聞を一回読むと寿命が100日縮まるため、鬼形礼は配達されないように、配達されても読まないように、あの手この手で逃げようとするが、恐怖新聞はそうした壁を軽々と超えて、結局読まされてしまう。それもまた恐怖だが、本作では恐怖新聞を継続して読んだ場合のデメリットを詩弦はまだ知らず、そのため読まないようにという防御をしていない。そのため、その恐怖もない。
ファッジさんはブログ(下記リンク参照)で、黒木瞳さんが可憐でお肌が綺麗なのにファッジさんより年上なのが一番音ホラーだと書いていた。それならば自分もひとつ。一人暮らしの若い女性が、内鍵(チェーン)をしない、人が訪ねて来ると相手が誰かを確認もせずにすぐにドアを開ける、というのが、今どきあまりにも防犯意識がなさ過ぎで、これが一番のホラーだった。